晴天の霹靂
50才を幾つか過ぎて、正確には53にもなって、こんな驚きに見舞われるとは思っても居なかった。夫の家業の米屋を手伝いながら銀行の事務処理のパート収入で店の赤字を補填してきた。店の経理も家事もせわしなくこなし、息をつく間もない一週間がひと月、一年、と束になって飛んでいき、長男が結婚し、長女が独立して、子育ての消滅と共に今では何となく気落ちした生活を送っている。短大時代の友人たちが「主人が定年退職する日に退職金と年金を半分もらって離婚したいたと言って盛り上がった時も、自分だけは米屋には定年も退職金もないから無理やなと黙って笑って聞き役に回った。それをいきなり向こうから離婚?確かに夫には愛が無かった。結婚直後から夫は節子を従業員のように扱い始めた。傷ついていない振りをする事でプライドを守っていたが、そのうちに慣れてしまったのか振りをする必要もなくなった、恋人のような夫婦なんて言葉はフィクションだと思うことにした。ちょっと夫婦でいたわり合う人生も諦めれば思い詰める事もなかった。只、40代半ばには、このまま女として朽ちるのかと茫漠とした気持ちに襲われた。パートの同僚の中にはいかにも夫から女性として扱われている雰囲気を漂わせている主婦が居て羨ましさに落ち込んだ時期がある。しかし、結局は自分には色気がないから仕方ないと達観してきた。




