反撃
都市銀行で勤めた経験が外での信用に繋がるなら少しは銀行の名前に感謝すべきだろうか。「3日以内に採否の連絡をする」と面接の終わりを告げられた。立ち上がって一礼した目の先に面接官の人懐こい若者らしい笑顔があった。
「竹下さん、前田美波里に似てると言われませんか?」と笑顔のままで話しかけてくる。「さあ〜っ?」と首を傾げる素振りをしながら、「良くそんな古い女優を知ってますね」と返すと、「僕の母がファンで冷蔵庫に写真を貼ってるんです。その写真に竹下さん、似てますよ」
一つ一つのパーツが大きい顔立ちを品がないとけなされてきたが、こんな風に言われて悪い気はしなかった。彼が少しの悪気もなく母親の好きな女優に似ていると教えてくれているのだ。「ありがとうございます。有名な人に似てると言われたの初めてで嬉しいです」と応えてビルの外に出た。嫌いだった容姿を褒められた気がして明るい口調になったのが自分でもわかる。就職が決まれば保険にも入れ年金もかけられる。不安も少しは軽減する。単純に心が前に前に向いているようだった。
昭夫が一方的に離婚の条件をメモ書きにして寄越した日、実家から店に通うと言って出て行って以来、彼は一度も店に姿を見せていない。
店はほとんど休業状態だが自分の物でも無し、構うものか。
友人の春菜の母の助けを借りながら、住みやすそうな部屋を物色するうちにデパートから採用の電話を受けた。




