反撃
商店街には昔ながらの喫茶店が点在している。
市内の古い商店街で人の往来も多くシャッター通りとは程遠い。今時三百円やそこらで落としたてのコーヒーのモーニングセットが其処此処にある。
入口にアンティークのサイフォンを飾っている喫茶店に入り厚切りトーストとゆで卵のセットを頼む。
店内はほぼ満席で節子の隣のテーブルでは軽く80才は超えているだろうと思える女性二人が紫煙をくゆらせながらコーヒーを飲んでいる。
節子は目の端で二人を捉えて…コーヒー&シガレッツの世界やな…と心でつぶやいた。この女性たちのように、おそらく自分の人生も長いのだ。
携帯を取り出すと銀行のホームを検索する。
姑の口座にログインした。横着な昭夫はやはり、死亡届けも出さず、口座はそのままにされている。
姑の生前に生活費の振り込みを便利にするためにインターネットで手続き出きるように登録したことを昭夫は知らない。ネット専用の暗証番号も設定させてもらっていたが勿論、その番号も知らない。
私のお金を取り返す。
振り込みにクリックし、節子の口座に上限金額一杯の一千万円を振り込んだ。
一分足らずの操作で簡単に目的は完了した。
昭夫が自分から通帳記入に行かない限り見つからないだろう。いや、ついでに通帳記入も出来ないようにしといてやろう。
Web通帳に切り替えをクリックする。
これで通帳記入は出来なくなった。
携帯を閉じながら節子はにっと笑った。
後は別の自分の口座に分散しておく。
そして取りあえず家に帰ろう。今はあの家しか帰る所はないのだ。
駅で求人誌をいくつか持って帰ると、店に昭夫の姿は無かった。店は閉めたまま部屋に上がり、寝そべって早速求人情報を物色し始める。




