青天の霹靂
電話を持つ指先がピンクとホワイトラメの二色のグラデーションと数粒の小さなスワロフスキーが桜を模して飾られている。
春奈は自宅でネイル教室を経営する流行りのサロネーゼでもある。自宅開業したいと夫に相談した時の彼の条件は「お金儲けをしようとさえ思わなければいいよ」だったと言う。
春菜からそれを聞いたとき、家業の赤字に苦しみ、いかに儲けを出すかに四苦八苦していた節子にはそれが「金に縛られると心の余裕も無くなるし、無理な売り込みは友人関係にもひびが入る。儲けは度外視して生活の張り合い程度に楽しみとして始めるなら応援する」即ち「お遊びでやるなら結構」という意味だと分かるまで時間がかかった。
大手経済新聞社の経済研究室に勤める春奈の夫は妻の働きに助けられなくても十分な収入を得ているのだ。注文建築の自宅一戸建ての遊ばせていた一部屋を使って教室はオープンした。
最初の生徒はママ友ばかりだったが暇の無い節子だけは一度も教室に加わらず協力もしなかったが一貫して春奈の友好的態度は変わらなかった。
朗らかに電話を終えた春奈が「事務所に来て具体的な希望を言ってくれたら、母がいつでも相談にのるから何でも遠慮なく聞いてみて」と親身な言葉で力づけてくれる。
自分から呼び出しておきながら、夫や母との関係に恵まれた春奈の生活との違いを前にして会った事を後悔していた。
「ありがとう。いざとなったらお願いするわ」と惨めさに降参するようにペコンと頭をさげた。




