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1.5

暫く顔見せないで、という言葉通り翌日春樹は私の教室に来なかった。


何か怒っていたようなのだが、未だにその理由が分からない。そこまで気に障らせることを口にした覚えがない。移動教室の時に、一回廊下で春樹とすれ違ったが無視された。目も合わせない。意味が分からない。彼女になれと言ってきたのはそっちなのにこれは一体どういう了見なのだろう。


だが春樹が来ないと、正直ほっとする。余計な心労や緊張がかからなくて済む。

相変わらず私はクラスで孤立しているが、とりあえず今は何もされてない。いじめ的なものは。だから春樹といるより数倍マシ。



「惨めよね~」


昼休み、お弁当を食べて自分の席でぼんやりしているとわらわらと女子が集まってくる。

私の目の前にいるのは例の須藤。

長いストレートの黒髪をさらりとかきあげてどや顔で私を見下ろしている。

え…な、なに?なにごと?


「たった三日で飽きられるとかホント惨めすぎて笑える」


「まぁ、予想通りだったけど」


きゃらきゃら笑った彼女達に、ああなるほど、と思う。

春樹が今日来なかったから私が春樹に捨てられたと思い、それを笑いにきたらしい。もしかしたら廊下で無視された所も見られたのかもしれない。

直接私の所に来たのを見ると、よっぽど愉快だったらしい。


「残念よねぇ、せっかくあんたみたいなイモ女がイケメンゲットできたのに。舞い上がってあんなに余裕ぶっこいたのにね~、島崎」


いつ、誰が舞い上がったっていうんだ…。1000文字以内で説明してください、須藤さん。


「でもこれが現実なのよ。正直全然あんたは春樹君に似合ってないし、春樹君がくすんで見えるのよ。正直目障り。春樹君にたかる害虫みたいで」


害虫…。周りにはそう見えているのか…。分かっていたとはいえ、一女子としては虫扱いをされるとさすがに落ち込む。


「なにか言いなさいよ、ブス」


須藤が声を荒げた。その顔ムカつくのよ、と目を吊り上げている。

え、今変な顔してました?ただ害虫呼ばわりされて少し悲しかっただけなのに。私の顔は人を苛つかせるような顔なのか。昨日も春樹が怒った原因は、この顔…?


「…似合ってないとは私も思ってる」


何か言えとのことなので口を開いた。殆ど話すの初めてなのにぶっきらぼうな言い方をしてしまった。

しかも須藤がさっき言っていた事に関してこんな軽い台詞でしかコメントできない。


「はっ、知ってて春樹君に迫ったの?図々しい」


「いや…迫ってきたのは新垣君の方だから」


それは一昨日春樹が言っていたはずだけど。実際は愛の告白とは程遠い脅しだ、とできることなら自白してしまいたかった。けれどそれをすると春樹の仕打ちが怖い。


「呆れた。この後に及んで嘘?」


だが信じてくれる訳ないですよねー。ちょっと予想はしてました。

須藤達、いや春樹に想いを寄せている女子達にとって私は絶対的な悪、イコール敵なのだ。

一昨日の春樹の言葉も私が言わせたという事にしたいらしい。そして私の悪行伝説に尾ひれがついてすごいことになっているのだろう。

うわぁ、私の残りの学校生活終わったなコレ。


「信じないなら信じなくてもいいよ」


もう自棄だ。どうせ結果が破滅なら、もうどうにでもなれ。


「大体、こんなところ油売っていいんですか。彼女に愛想尽かした新垣君にアタックするなら今がチャンスじゃないの。こんな所で私に構ってること自体時間の無駄でしょ」


「島崎っ!」


神経逆撫でする言い方をしたという自覚はある。だけど私にだって意地くらいはあった。ここまで言われて少しは腹が立ったてはいた。

私の真横の女子が手を振り上げた気配がした。叩かれるのを覚悟して、目を瞑った。しかしその手が振り下ろされることはなかった。



「あんた、島崎よね。春樹君の彼女の」



見かけない女子が一人、須藤達をかき分けて入ってきた。

ウチのクラスの生徒じゃない。でも何か見覚えがある。

少し面長の、明らかにファンデ塗ってるだろという顔の垢ぬけた感じの女子。

…一昨日春樹と一緒にいた女子のうちの一人だ。名前は知らない。


「はい…」


美人ではある。ただ、メイクのせいか眼力に威圧感がある。話し方もヤンキーみたいで怖い。

これならば須藤達なんか可愛いものだ。


「大事な話があるから来てよ、私の友達があんたと話したいらしくて」


丁重にお断りします。そう言えれば良かったのだが。嫌な予感しかしないし。

手を掴まれて無理やり立たされる。私に拒否権はやっぱり無かった。

友達って一昨日春樹にくっ付いていた人達だろ。胃が痛い。あの人達私を殺さんばかりの視線で見ていたし。どう見たって温和には済まないだろう。



どうして誰も彼も、私に攻撃をしたがる。

春樹が悪いとは思わないのか。春樹を責める人がいてもいいじゃないか。私を押しのけて春樹を奪おうと活動したっていい。

でも、どうせ奴は今頃涼しい顔をしているんだ。私がどんな目にあっているかなんて気にもせずに。

顔面格差か。美形は正義か。泣くぞ、このやろう。

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