Episode:008 使い魔召喚
ヒョウガ様、感想ありがとうございます。
第8話、更新しました。では本編をどうぞ。
北校舎(生徒棟)の東に建てられた魔法科学研究棟。その最上階(50階)奥に、魔力保有魔法使用不可能者のための使い魔召喚の間があった。そしてそこでは、今まさに使い魔の召喚が行われようとしていた。
「はい。ちゅうも~く」
ニーナは、赤紫一色に塗られた部屋の中央に描かれた青紫の魔法陣を見ている夕季たちを自分に注目させる。そして一呼吸おいた後、使い魔召喚について説明しだした。
「これから一人ずつ、使い魔を召喚してもらうわ。方法は簡単よ。皆の後ろにある魔法陣の中央に立って、サモンズ・ファミリアと言えばいいの。そうすれば、皆に相応しい使い魔が召喚されるわ」
「先生、質問よろしいでしょうか?」
その時、黒髪を七三分けにし黒縁眼鏡をかけた、日帝国人の男子生徒が手を上げ口を開いた。
「なにかしら? えっと・・・・・・」
「1組の白鷺実です。使い魔召喚は我々、魔力保有魔法使用不可能者のために行われるというのは聞きましたが、そもそも使い魔召喚は魔法が使えないと出来ないものであると僕は認識しております。しかし、先生は使い魔召喚が可能であることを前提で話をしておられる。どういう仕組みで、使い魔召喚を行っておるのでしょうか? それが疑問でなりません。お教えいただけないでしょうか?」
その少年(以下、実)は一気に話すと、眼鏡をかけ直しながらニーナを見つめる。ニーナは口元を吊り上げ妖艶な笑みを浮かべると、実を見つめ返す。
「使い魔召喚の仕組みを説明するのは簡単よ。でも、あなたは“魔法科学研究コース”の子よね? だったら、自分で理論を考えないといけないわ。そうじゃないかしら?」
「は、はい//////」
実はニーナに見つめられて、顔を赤くし直立不動になって、返事をした。ニーナは『いい子ね』と言うと、視線を残りの16人に向けた。
「じゃ早速、一人ずつ使い魔を召喚してもらいましょう。まずは・・・・・・、1組のルース・M・ラッキーさん」
「あ、はい」
ニーナに呼ばれて、白髪を三つ編みにした長い犬歯が特徴的な狼人族の少女(以下、ルース)が返事をする。
「じゃ、魔法陣の中央に立ってちょうだい」
「はい」
「あ、皆は少し離れて」
ニーナは笑顔になると、ルースに魔法陣の中央に立つように促して、夕季たちを少し離れさせた。
そして夕季たちが魔法陣から離れると、ルースに使い魔を召喚するように言った。
「ルースさん。何があっても、そこから動かないでね」
「あ、はい」
「じゃ、サモンズ・ファミリアと唱えて」
「はい。(すぅ)サモンズ・ファミリア・・・・・・」
魔法陣の中央に立ったルースが呪文を唱えると、青紫の魔法陣が光り輝いた。それに呼応するように夕季たちから見て、上壁から赤紫の魔法陣が浮かび上がる。
「!!」
「ユースさん、動かないで。大丈夫よ。召喚魔法が発動しただけだから」
「は、はい!」
それに驚いて逃げ出そうとしたルースをニーナが止めた。その言葉で少し冷静になり、ユースは元の位置に戻る。
すると赤紫の魔法陣がユースの身体をスキャンするように下り始めた。そしてユースの足元まで来ると、今度は上がり始める。
「今、ユースさんの魔力量を読み取ってるの。ユースさんに相応しい使い魔を召喚するための準備ね」
ニーナは、ユースにも聞こえるように説明した。
その間も赤紫の魔法陣は上下を繰り返していく。そして10回繰り返した後、魔法陣は青紫の魔法陣に吸い込まれた。
「使い魔が召喚されるわ。ユースさん、そのまま動かないでね」
「は、はい」
青紫の魔法陣がより一層光り輝くのを見て、ニーナはそう言い夕季たちを更に魔法陣から離れさせた。すると毛並みが剣山のようになっている銀白色のオオカミが、魔法陣から浮かび上がってきた。
「うわぁ♪ ニードルウルフだぁ♪」
そのオオカミを見たユースは、嬉々とした表情で叫んだ。
なぜならニードルウルフは狼人族にとって仲間とも言うべきオオカミであり、ユースが子どもの頃から飼ってみたいと思っていたからだった。
「召喚は成功ね♪ ユースさん、そのオオカミは既にあなたを主人と認識してるから触っても大丈夫よ」
「やった♪」
ニーナが笑顔で言うや否や、ユースはニードルウルフを抱き上げて、頬ずりし始めた。抱きあげられたニードルウルフは、気持ちよさそうに目を細めて、『くぅ~ん』と泣いた。
「ユースさん、廊下で待っててね。次は白鷺実くん」
「あ、はい」
ユースはニードルウルフを抱き上げたまま、廊下に出た。それと入れ替わりに、実が魔法陣の中央に立って、ユースと同じように使い魔召喚を行っていく。
*****
それから30分。
大方の生徒が使い魔を召喚して、後は夕季と刃冶だけになった。
「次は、刃冶さん」
「へ~い」
刃冶は眠そうな顔で魔法陣の中央に立って、サモンズ・ファミリアと呟く。
これまでと同じように刃冶の魔力量をスキャンしていく赤紫の魔法陣。そしてスキャンが終了し青紫の魔法陣に吸い込まれて、より一層光り輝きだした。
「くけ~っ!!」
そこから召喚されたのは、炎に宿った生命である、フェニックスだった。フェニックスは大きな声で鳴くと、翼を折りたたみ刃冶を見つめた。
刃冶は顎をさすりながら、大鳥を見つめ口を開いた。
「先生。これってフェニックスっすか?」
「う~ん。文献でしか見たことがないから・・・・・・。本物かどうか分からないけど、特徴はそっくりね。あとで生物学の白川先生に聞いてみてちょうだい」
「へ~い」
刃冶は返事をすると、フェニックスに手を伸ばした。
フェニックスはその手に頬ずりをして一鳴きすると、身体をセキセイインコぐらいの大きさに変化させた。
〈大きさも変えられるみたいですね、兄様〉
〈ああ。俺の思考を読み取ったらしい。じゃ、俺は廊下で待ってるからな〉
〈はい〉
フェニックスを肩に乗らせた刃冶は夕季とテレパシー(精神感応)で会話をし、部屋を出ていった。
**********
「じゃ、最後は夕季さんね」
「はい♪」
部屋を出ていく兄様を見送った私は、返事すると魔法陣の中央に立ち、サモンズ・ファミリアと唱えました。
ふふふ。どんな使い魔になるのか楽しみです♪
ワクワクしながら見ていると、皆と同じように魔法陣が私の魔力量をスキャンしていきます。そして地面に描かれた魔法陣が一際輝き始めると、そこから何かが浮かび上がってきました。
「・・・・・・・・・・・・?」
浮かび上がってきたは、九尾の白狐でした。
白狐が私を見つめ首を傾げる仕草が、あまりにも可愛かったので、私は意識を失いかけてしまいました。しかし、なんとか堪えると白狐に近づいて、抱きかかえます。
すると白狐は私の顔をペロペロと舐めはじめました。
「もう~、くすぐったいですよ~」
「ふふふ。じゃ、夕季さん、廊下に行きましょうか。皆が待ってるわ」
「はい」
ニーナ先生の言葉に頷いた私は白狐を抱きかかえたまま、ニーナ先生とともに部屋を出ました。
〈お前は妖狐の白狐か?〉
〈ええ♪ 可愛いんですよ、ほら♪〉」
〈ははは。そうだな〉
兄様の隣に並び精神感応で会話をしながらニーナ先生の話を聞きます。
その話によれば、使い魔の登録を事務室で行わなければならないから、今すぐ事務室に行ってほしいということでした。
「じゃ、後はお願いね愛紗美さん。私は片付けがあるから」
「は~い。じゃ、皆ついてきてね」
『『『『『はい(うっす)(へ~い)』』』』』
*****
事務室についた私たちに応対したのは、事務室長の長岡ファーブルさん。長岡さんは日帝国人と狼人族のハーフで、魔剣学園の事務仕事を長年務めてきたベテランです。
その長岡さんは私たちを一列に並べさせると、使い魔の登録方法を説明していきます。
「方法は簡単。君たち一人一人の前にある魔法陣に使い魔を触れさせて、その使い魔の名前を言うだけだよ」
「使い魔の名前ってなんでしょうか?」
「君たちが自分の使い魔に名付けたいと思っている名前だよ。さぁ、名前を考えたら登録をしてね」
ユースさんの質問に長岡さんはそう説明し話を終えました。するとすでに自分の使い魔に名付けたい名前が決まっていたのか、皆さんはそれぞれの使い魔を魔法陣に触れさせて、その使い魔の名前を言っていきます。
私と兄様も既に決まっていたので、肩に乗っているフェニックスと抱きかかえていた白狐を魔法陣に触れさせて、それぞれ名前を呟きました。
「紅焔」
「葛葉」
やはり、白狐ですから葛葉で決まりです♪ これからよろしくお願いしますね、葛葉♪
「・・・・・・・・・・・・はい。皆、登録完了だね。これで今日の日程は終わりだから、寮に帰ってもいいよ」
『『『『『ありがとうございました』』』』』
登録が完了した私たちは、長岡さんに挨拶をすると、廊下で待っていたお従姉様と一緒に寮への帰路につきました。
第8話をお読みくださいましてありがとうございます。また、誤字・脱字報告や感想・質問などのコメントをお待ちしております。
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