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魔剣学園 ~ブラコン娘の奮闘記~  作者: 光闇雪
Chapter.1 ~入学~
5/23

Episode:004 トーナメント 第一回戦

ヒョウガ様、珈琲中毒様、感想ありがとうございます。

第4話、更新しました。では本編をどうぞ。

 能力測定トーナメントが行われるのは400m×240mの魔法戦闘用グラウンドである。

 ここには常に魔力と霊力が充満するようにマジックネット(魔力と霊力と瘴気を逃がさない透明な網)がグラウンドの周囲を囲っている。これは対スカルミューテーション用に作られたもので、最大威力の攻撃魔法でも破れることはない。

 ここに能力測定トーナメント用にマジックネットが張り巡らされ、臨時の魔法戦闘場が4つ作られた。そして、そこで各二人ずつ、計八人の生徒が魔法戦闘を行い、残りの92人の生徒がグラウンドと校舎の間に設けられた待機場所で、この試合を観覧することになっている。


「お前ら、ちゃんと試合を見ろよ。自分が戦うかもしれない相手なんだからな」


 グランは戦闘を注視しながら、べちゃくちゃと喋っている生徒たちに注意する。喋っていた生徒たちは慌てて、巨大な魔法陣に目を向けた。そこには各ブロックの第1試合の戦闘の模様が映し出されていた。

 各ブロックの第1試合の対戦カードは下記の通りである。



Aブロック:[11組]ウィルネ・アースvsサントラ・ダース[14組]

Bブロック:[12組]鎧塚孔佑(よろいづかこうすけ)vsバン・ユース[13組]

Cブロック:[11組]ユーマ・サラマンダーvsラン・テスタ[15組]

Dブロック:[14組]ランク・トップラーvs文月弥生(ふづきやよい)[12組]


挿絵(By みてみん)



「止め! 勝者、ウィルネ!」


 そのうち、Aブロックの試合が終了した。

 ウィルネは審判の教師にチグラテス式の礼をし、待機場所へと戻る。そこでニーナによってすぐに戦闘服の修繕がなされた。本来、戦闘服の修繕は自分でしなければいけないが、新入生たちはその修繕方法を知らない場合が多いため、今回は教師が修繕を行っているのである。

 ちなみに、負けたサントラは救護班の教師たちによって運ばれ、養護教諭のシーナ・バーンによって治療を受けている。


「14組、ガウン・ロード。13組、ブラク・ヴィクター。Aブロックへ」

「はい!」

「うっす!」


 名前を呼ばれた二人は返事をすると、Aブロックへと向かった。


*****


 それから数時間。Bブロックに続いてAブロックが第12試合目になった。


「11組、夜刀神刃冶。15組、ウィング・ノーム。Aブロックへ」

「はっ!」

「へ~い」


 名前を呼ばれた二人は返事をすると、Aブロックへと向かう。そして、所定の位置につくと、ウィングが目踏みするかのように刃冶を見つめて呟いた。


「お前が夜刀神刃冶か・・・・・・」

〈夕季~、やっぱり面倒だ。すぐに負けたいんだけどよ〉


 刃冶は意に介さず、欠伸をしながら夕季とテレパシー(精神感応)で会話していく。


〈ダメですよ。わざと負けたとしたら、お従姉様が怒りますよ?〉

〈ち・・・・・・っ。別に怖くはないが、それも面倒だ。仕方がない。やるか・・・・・・〉


 刃冶は舌打ちをすると、ウィングの方を見据える。ウィングは無視されたことに怒り心頭だったが、刃冶はニヤッと笑って、手を腿の付け根に据え両足をそろえる独特の構えをとった。


「無制限一本勝負。始め!」

「螺旋の炎よ! 全てを焼き尽くせ!」


 教師の合図と同時にウィングは炎系の攻撃魔法・火焔車を繰り出す。

 ウィングの指先から放たれた炎が螺旋を描くように刃冶へと向かっていく。刃冶はそれを見据えたまま動かない。しかし、その炎が刃冶に当たる瞬間、刃冶の身体がブレた。

 その直後、どかーんという爆発音が響いて砂埃が舞った。

 誰もが刃冶は逃げられないと諦めたと思っただろう。ウィングもそう思った一人だった。


「・・・・・・拍子抜けだな」

「ほぅ。流石は火焔車。威力が凄い凄い」


 ウィングがそう呟いた時、刃冶の声が聞こえてきた。砂埃が晴れてきて刃冶が姿を現した時、ウィングは目を見開いた。

 なぜならば、火焔車が当たったはずの刃冶が戦闘服は無傷でその場に立っていたからである。


「まぁ、夕季だったら魔力の練り方が甘いですとか言うだろうがな」


 刃冶はそう呟くとニヤッと笑いながら、驚いて固まっているウィングを見つめる。そのウィングは突っ込んできてくださいと言ってるように隙だらけである。


「戦場だったら死んでるぞ? お前」

「ぐはっ!?」


 一瞬で間合いを詰め、ウィングの腹を蹴りあげる刃冶。ウィングは驚愕する暇もなく、上空に張り巡らされているマジックネットぎりぎりまで吹っ飛ばされてしまう。


「・・・・・・・・・・・・」


 刃冶の強烈な蹴りにより、吹っ飛ばされたウィングは気絶していた。そのため、上空で留まることができず、重力に従い速度を上げて落ちてくる。

 そしてドン!と地面に叩きつけられた。


「・・・・・・勝者、刃冶!」


 審判の教師が地面にめり込んでいるウィングを確かめて、そう宣言する。刃冶は眠たそうな顔に戻ると、待機場所へと戻っていく。

 気絶したウィングはただちに運ばれ、治療を受ける。ウィングはあばらが数本折れていた。戦闘服がなければ死んでいただろう重症である。


『『『『『・・・・・・・・・・・・』』』』』


 その戦闘を見ていた生徒のほとんどが口をあんぐりと開けて呆けていた。特に中学時代の刃冶を知っている同窓生は信じられなかっただろう。

 それもそのはず、中学時代の刃冶は、妹に守られている魔法が使えない弱いやつという印象だったからだ。それはさておいて、刃冶の試合が終わったためAブロックの第1回戦が終了して第2回戦へと進んでいく。では他のブロックはどうだろう?

 Bブロックは戦闘中。Dブロック、そしてCブロックの第12試合は今、始まろうとしていた。


「11組、鎌田匠耶。11組、夜刀神夕季。Cブロックへ」

「はい」


 名前を呼ばれた夕季は戻ってくる刃冶に目くばせすると、Cブロックに向かった。刃冶がそれを見送ってると、愛紗美が傍に近づいてくる。


「ヤイバ、強くなったね♪」

「従姉さんと夕季のトレーニング相手を務めてりゃ、強くなるに決まってるさ」

「にゃはははは。そうかもね♪」


 刃冶は肩をすくめると、魔方陣に映されるCブロックの模様を見つめた。愛紗美も同じように見つめながら、


「ところでユキちゃんに何ていったのかな? さっきテレパシーで会話してたでしょ」


先程の夕季と刃冶のやり取りの内容を聞いてきた。刃冶は目だけを愛紗美に向けて答えた。


「もう一度念を押してたんだよ。手加減しろって」

「ああ、そうね。ユキちゃんが本気を出したら、鎌田って子一溜まりもないもんね」


 愛紗美は本気を出した夕季を思い出しながら、うんうんと頷いた。刃冶は“それだけじゃないんだな、これが”と心の中で呟き、夕季の様子を見守るため視線を魔法陣に戻した。



**********


「夜刀神夕季嬢がお相手とは・・・・・・、光栄の極み」

「・・・・・・・・・・・・」


 所定の位置につくや否や、鎌田さんが話しかけてきました。私はそれを無視して精神を落ち着かせていきます。

 兄様に手加減しろと言われるまでもなく、手加減はします。だって、本気を出してすぐに勝ったのでは、面白くも何ともありませんからね。


「始め!」

「レディファーストということで、夕季嬢。どっからでも掛ってきてください」

「・・・・・・・・・・・・その余裕の態度はいつまで続くのか見物ですね」


 私はそう呟くと、トランスペアレントイズ(透明化)を発動して、姿を消します。ちなみに、戦闘服も一緒に消えるように範囲を広くしています。

 戦闘服には透明化魔法を感知して一緒に透明になるようになっています。しかし、これは魔法ではなく超能力ですので、そのまま発動すると戦闘服は消えません。戦闘服に超能力でも消えるように調整する必要がありますが、今回は時間がありませんでしたからね。

 面倒ですが、今は仕方がありません。


「ほぅ。透明化魔法ですか。なら私は・・・・・・、はて? 夕季嬢は魔法は使えました――がはっ!?」

「これは魔法ではなく、超能力です。それと止まって思考するというのは、相手に殺してくださいと言ってるようなものです」


 私は思考して動きを止めた鎌田さんを、胴回し回転蹴りで地面に沈ませてから、姿を現しそう言います。

 あ、鎌田さんは大丈夫ですよ? 朝の蹴りの威力の半分も出してませんから。


「超能力ですと・・・・・・? 魔法と超能力というのは同じものではございませんか・・・・・・」


 よろよろと立ちあがった鎌田さんが、そう呟くのを聞き私は首を横に振りました。

 魔法と超能力が同じものと考える人が大勢いますが、この二つは似て非なるものです。今から、私がそのことを教えてあげますよ、鎌田さん。


「鎌田さん。魔法と超能力は同じものではございませんよ?」

「な、何をいっ――ぐっ!?」


 私はそう呟くと一瞬で間合いを詰め、鎌田さんの腕をとって捻りあげました。うめき声をあげる鎌田さんを尻目に私は魔法と超能力の違いを淡々と説明していきます。


「まず、第一に魔法は魔力を必要とします。この魔力は誰にでもあります。魔法が使えない人というのは、この魔力を外にだせないのです(ごく稀に魔力がない人がいますが、今は言わないでおきます)。それに対して超能力は魔力ではなく、気力を必要とします。この気力も誰にでもありますが、魔力と相反しますから、使えない人が殆どです」

「ぐ、ぐぐぐ・・・・・・っ」

「第二に補助魔法以外の魔法のほとんどが詠唱しないと、その効果を発揮できません。それに対して超能力は全て無詠唱で、その効果を発揮できます」

「がはっ!?」


 まだまだ魔法と超能力の違いはありますが、説明はそれぐらいにして戦闘を楽しむ事にしましょう。そう思った私は鎌田さんを放り投げて解放しました。

 地面に突っ伏した鎌田さんはよろよろと右腕を抑えながら、はぁはぁと息を荒げて立ちあがりました。私はその鎌田さんの息が整うのを待ちながら、第二の理由についての補足として、こう告げます。


「まぁ、ここの先生方や国際防衛部隊の方々は全て無詠唱で、その効果を発揮できますが、それは相当の訓練をしてきた強者です。あなたの様な中途半端な自信家には無理でしょう?」

「い、言わせておけば・・・・・・、私がどんなに優れているか、あなたに思い知らせてやりますよ」


 息を整えた鎌田さんは両腕をあげます。すると、上空に炎の球が出来始めました。

 へぇ、あれは火焔天球ではありませんか。挑発のつもりで、ああ言いましたけど、無詠唱で火焔天球を創れるというのは凄いですね。

 まぁ、魔力の練り方は全然なってませんけど。


「私を怒らせたことを後悔してください!」


 鎌田さんはそう言うと、半径100mぐらいの大きさまで膨れ上がった球を私に放ってきました。


「大きさは申し分ありませんが、魔力の練り方が不十分ですね。威力が全然ありません。だから、こういうこともできてしまいます(ドン!)」

「なっ!?」


 私はフィジカル・レインフォースメント(身体強化)とバリア(障壁)で強化した回し蹴りで、迫ってきた球を蹴り返します。それに驚いた鎌田さんは動きを止めてしまいました。


「あなたが優れているというのは、まぁ認めましょう。けど、それに甘んじて努力を怠っているのは否めません。これからは精進してくださいね」

「しまっ――」


 私がそう告げると、我に返った鎌田さんに火焔天球が直撃しました。

 どかーん!と爆発して砂埃が立ちこめまていきます。


「・・・・・・勝者、夕季!」


 そして砂埃が晴れると倒れ伏した鎌田さんがいました。

 それを確認した先生が、私の勝利を宣言します。私は救護班の先生方に運ばれていく鎌田さんに一礼すると、待機場所に戻りました。


*****


「やりすぎだ、バカ」

「うう、ごめんなさい」

「にゃはははは」


 戻ってきたら、兄様に叱られてしまいました。

 しょぼ~ん・・・・・・。

第4話をお読みくださいましてありがとうございます。また、誤字・脱字報告や感想・質問などのコメントをお待ちしております。


なお夕季の超能力の説明は、神さまからの授かりものという事は言えませんので、ああいう説明にしていることにしています。違和感があるかもしれませんが、ご容赦を。


Next Title: トーナメント 第ニ回戦



≪魔法説明≫

火焔車:

指先に自分の魔力を集束させて、螺旋を描きなが炎を放つ炎系の攻撃魔法。

威力は中の下。

詠唱『螺旋の炎よ。全てを焼き尽くせ』


火焔天球:

自分の魔力と周囲の魔力を集束させて、巨大な炎の球をつくりあげ放つ炎系の攻撃魔法。球の大きさは最大で半径500m。

威力は上の中。

詠唱『全てを焼き尽くす業火よ。この手に集まれ』

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