Episode:003 生徒会長登場
レフェル様、レックス様、ヒョウガ様、感想ありがとうございます。
第2話、更新しました。では本編をどうぞ。
魔剣学園は生徒棟の北校舎と本館・特別教室棟の南校舎に分かれており、夕季たちが向かう更衣室は南校舎一階の西端に位置し、全部で五部屋ある。そして、ニーナが案内したのは、プレート型魔方陣に“1611”と表示されている更衣室だった。ニーナはその扉の前に立って
「ここがあなた達が使用する更衣室よ」
と言いながら扉を開けて、夕季たちを中へ入れる。そして全員が入ったことを確認したニーナは、ここの使用について説明しだした。
「ここの更衣室は1年から3年の1組、6組、11組が共有して使用してるわ。だから、私物等は置いとかないこと。いいわね?」
『『『『『はい』』』』』
夕季たちはそれぞれロッカーの前に立ちながら返事をする。
「よろしい。じゃ、すぐに戦闘服に着替えなさい。私は一足先にグラウンドに行ってるからね」
ニーナは頷くと更衣室を出ていく。それを見送った夕季たちは扉を施錠し、戦闘服に着替えるため制服に手をかけた。
「きゃっ!?」
「ウィルネさん、どうかしました?」
その時、ウィルネが悲鳴を上げたため制服に手をかけたまま、全員ウィルネの方を向いた。隣にいた夕季は首だけを向けて訊ねる。
ウィルネはロッカーを開けて、その中を指差したまま固まっていた。夕季は首を傾げながらロッカーを覗き込むと、『え?』という表情をして動きを止めた。
「え?」
いや、声に出していた。怪訝そうにしていた他の女子達は、その言葉に更に怪訝な表情になる。
ウィルネや夕季が驚くのも無理もない。なぜならば、そこには戦闘服を身に付けた青色のショートヘアーのスッとした顔立ちの女子が挟まっていたからだ。
「にゃははは。やっほ~、ユキちゃん」
「・・・・・・こんなところで何をしてるのですか? 愛紗美お従姉様?」
その女子は、夕季に見つかってばつが悪そうに笑いながら手を振る。その人物が誰なのか気付いた夕季は呆れ顔で名を呼びながら、そう訊ねた。
『『『『『ええ!?(ドドドド!) あ、愛紗美様!?』』』』』
その発言にウィルネ以外の女子たちは夕季の所に群がると、ロッカー内で苦笑しながら手を振る女子を見て、また驚きの声を上げる。
それもそのはず、『愛紗美様』と呼ばれたその女子は魔剣学園の生徒ならば誰もが知っている、彼女らが憧れる魔剣学園第96代生徒会長、その人だったからである。
彼女の名は紺野愛紗美といい、夕季と刃冶の従姉である。彼女が憧れられているのは、ここの生徒会選挙の選考方法が関係していた。
生徒会選挙規則にはこうある。
《選挙資格は学年問わず学期末考査および魔法戦闘大会での上位入賞した者が有し、卒業式の一週間前に選挙を行うものとする。選挙の方法は全生徒の立ち会いの下、立候補者および現生徒会長の一騎打ち。それに勝利した者を次期生徒会長とする。ただし、現生徒会長が三年の場合、立候補者のみで魔法戦闘を行うものとする(要約)》
つまり生徒会長は自他ともに許す学園最強の実力があるといえる。その現生徒会長なのが、愛紗美である。しかも愛紗美は女子初の生徒会長であり、二年連続で生徒会長を務めている。
これで憧れない者などいるだろうか?
「にゃははは、助けてくれないかなユキちゃん。嵌って抜け出せないの」
「・・・・・・・・・・・・はぁ、分かりました」
皆が驚いている中、夕季はため息を吐いてロッカーから愛紗美を助けだした。
「皆、早くしないと時間に遅れちゃうよ。トーナメントでしょ?」
『『『『『あっ!』』』』』
助けだされた愛紗美が魔式時計を見ながら固まっている女子たちに告げると、女子たちは我に返り、取るものも取り敢えず戦闘服に着替えて、グラウンドへ向かった。夕季は愛紗美に耳打ちしてから、戦闘服に着替えて、女子たちに少し遅れてグラウンドに向かっていった。
「にゃはははは。やっぱり、ユキちゃんには隠し通せないか♪」
更衣室に残った愛紗美は笑顔になると、自分が挟まっていたロッカーを閉めてから更衣室を出た。そしてグラウンドの方角へ歩いていく。
「さぁ、皆の実力を見させてもらうよ♪」
**********
更衣室でのハプニングにより、私たちは少し遅れてグラウンドに集合しました。他のクラスは既に集まっていたので、私たちが最後だったようです。
「どうした? 夕季」
「ちょっとお従姉様に会ってしまって」
「従姉さんに?」
「ええ」
兄様に更衣室でお従姉様に会って遅れたというのを説明していると、当の本人が魔法実践科担当の竜人族のグラン先生に呼ばれて現れました。
ここに集まっている全員が突然のお従姉様の出現にざわざわと騒ぎ出します。
「三年の紺野愛紗美です。トーナメントの優勝者と手合わせをしたいなって思って、先生方に無理を言ってここに来ちゃいました♪」
その騒ぎを無視しながら、お従姉様はそう言うと笑顔で手を振ると、何人かが鼻血で倒れてしまいました。慌てて先生たちが介抱しに行きます。グラン先生は手を頭において首を振ると、お従姉様ととも朝礼台を降りました。
様子を見るにお従姉様を説教しているようですね。まぁ、やりすぎだということでしょうね。
「ここで注意しておく。トーナメントで勝った負けたで優劣をつけるのはやめろよ。お前らはまだまだ全員ひよっこだ。いいな!」
そして場が落ち着くのを待ってから再びグラン先生が朝礼台に登って、注意し全員を睨みつけました。
その威圧感でクラスの皆さまの息を呑む音が聞こえた気がします。あ、ちなみに兄様は欠伸をして、その威圧感を受け流してました。
流石、兄様です♪
(注)夕季も受け流し中。
一通り睨みつけたグラン先生は、このトーナメントの目的とルールを説明していきます。その間、皆は真剣に聞いているようでした。あの睨みが効いたということでしょうね。
「対戦相手についてはこちらで無作為に選んだ。で、これが対戦表だ(パチン)」
グラン先生が指をならすと、目の前に魔法陣が展開されて対戦表が表示されました。
それを見ると、兄様はAブロック第12試合、私はCブロック第12試合の二人とも第一回戦の最後の試合でした。
「・・・・・・対戦相手は1年15組のウィング・ノームか〈夕季、どんな相手か分かるか?〉」
〈ウィングさんですか? ああ、狼人族の方ですね。魔法は炎系と氷系を得意としています。狼人族ですので、素早さは上位に位置していますよ〉
対戦相手を見た兄様に対戦相手、ウィング・ノームさんについてテレパシー(精神感応)で説明します。テレパシーなのは、他の人たちに私が知っているのを知られないためです。
あ、ちなみにこの情報は、(盗み見た)私たちの家の私設ボディーガードさん達が用意していた書類に、書かれてあったことです♪
〈で、お前は誰なんだ?〉
〈鎌田匠耶さんですね〉
私は苦笑しながら、自分の対戦相手の名前を告げます。兄様は驚いた表情をしましたが、すぐにため息を吐いて言いました。
〈・・・・・・手加減しろよ?〉
〈ふふ、分かってますよ♪〉
私は笑って答えると、対戦表に目を落とします。
分かってますよ、兄様。あんな人に本気なんて出すワケないじゃないですか。
「ようし、見たな。では、今からメジャーメントブレスを配るから、ちゃんと嵌めろよ」
グラン先生はそう言うと、後ろに控えていた他の先生方に目配せします。他の先生方は頷くと、全員にメジャーメントブレスという腕輪を配っていきました。
メジャーメントブレスというのは、魔法の威力と魔力効率を測定する腕輪です。
「よし。では、今から能力測定トーナメントを行う! AブロックからCブロックの第一試合に出る者は所定の場所につくように! 以上」
全員にメジャーメントブレスが配られると、グラン先生はそう宣言しました。こうして能力測定のトーナメントが始まりました。
〈なぁ、夕季。面倒くさいからさっさと負けていいか?〉
〈ふふふ、ダメですよ。お従姉様が見ておられるのですから〉
〈はぁ、やっぱりか・・・・・・〉
第3話をお読みくださいましてありがとうございます。また、誤字・脱字報告や感想・質問などのコメントをお待ちしております。
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