Episode:002 自己紹介
レフェル様、ヒョウガ様、4ch+K様、FOOL様、感想をありがとうございます。
第2話、更新しました。今話はタイトル通りの自己紹介のお話です。では本編をどうぞ。
この世界には六カ国全体での脅威が存在する。
それは突然変異型スカルスター、通称“スカルミューテーション”である。スカルミューテーションとは、その名の通りスカルスターの突然変異型だ。
本来のスカルスターは魔力、霊力、瘴気の3つが同時に充満している場所に、1年に数体の確率で出現する巨大な魔霊体(人型の骸骨)であり、瘴気を浄化しながら疲弊した土地を耕すため、生きとし生けるものにとってはかけがえのない存在だった。
しかし、恒星“アクア”と主成分が緑柱石である彗星“マリン”が958年ぶりに最接近した50年前、スカルスターは突然変異型へと変貌した。
一度に数体で出現するようになり、瘴気を撒き散らして土地を疲弊させながら、生きとし生けるものを襲い始めたのである。
その原因は“バイオレット・ムーン”と呼ばれる現象であると考えられている。
バイオレット・ムーンとは、魔力、霊力の2つが充満している場所に緑柱石の塵が400km/hで衝突することで、魔力と霊力のエネルギーが増大し、紫色の月を形作る現象である。
その増大エネルギーがスカルスターを変貌させたと考えられているが、その科学的根拠は全くない。しかし、事実としてスカルスターは突然変異型に変貌を遂げている。
この事態に時の政府は非常事態宣言を発令すると、解体した軍隊を連合防衛軍として再組織した。それにより、20年の長きにわたるスカルミューテーションとの死闘が始まったのである。
その熾烈を極めた戦いは多数の犠牲を払いながらも、封印という形で一応の終結を迎えた。しかし、その封印は完全なものではなく、月に一個体ないしは二個体の出現率になった程度であった。
そのため、時の政府は連合防衛軍を更に強化し、スカルミューテーションとの戦闘及び瘴気汚染の浄化などの復興作業を主とした国際防衛部隊を組織した。
この国際防衛部隊の人材育成のために創設されたのが、夕季と刃冶が半ば強制的に入れられた“魔法実践コース”である。ちなみに、現在では国際防衛部隊だけではなく、“アイギスライン”などの民間の防衛会社などにも優秀な者を送っている。
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体育館を後にした私は、早歩きで兄様たちに追いかけ康海のクラスである1年5組の手前で、二人に追いつきました。
「夕季。遅かったけどどうしたの?」
「いえ。ちょっとお祖父様とお話をしていました」
康海に訊ねられたので、本当のようで少し違うことを言って誤魔化しました。
「あ、ここが私のクラスね。じゃあ、二人とも昼にまた会いましょう」
「ああ」
「ええ」
1年5組に着いたので、ここで康海とは一旦お別れです。私と兄様は返事をすると、自分たちのクラスである1年11組へと向かいました。そして、11組の自動扉を開けて中へと入ると、さっき兄様の悪口を言ったやつがいました。
「おやおや、夜刀神刃冶君ではありませんか。というか君はクラスを間違えてるのでは? ここは魔法実践コースだよ? 君のような落第生の来るところ――ぶげらっ!?(パリン!)」
しかも、また兄様の悪口を言ったので、今度は飛び膝蹴りをお見舞いしてやりました。私の飛び膝蹴りは見事に腹へとヒットし、その方は窓を割って中庭へと飛んでいきました。
ちなみに、ここは一階ですので死にはしません。まぁ、たとえ屋上だったとしても同じようにしましたけどね♪
あれ? そう言えばあの方の名前って何て言いましたっけ・・・・・・? まぁ、覚えていないということは、消去する程度の方ってことでしょうね。
「あ、兄様。あそこが空いていますよ♪」
「ああ」
私と兄様は他の方たちが何事かと窓の外に視線を向けているのを無視し、空いていた席(窓際の一番後ろ)に腰を下ろしました。そして、私はいつもの癖で瞑想しながら先生が来るのを待ちます。
「お~い、席につけ。ホームルームを始めるぞ」
瞑想で待つこと10分。自動扉の開く音がしたので目を開くと、魔剣学園の教師であるという証のローブ(男性ならば黒色、女性ならば白色)を身にまとった、121cmぐらいの黒髪の先生が入ってきました。先生はホビット族のようですね。
「さて、翻訳魔法はちゃんと機能してるかな? してないという者は手を上げて」
立っていたクラスメイト達が席についたのを確認した先生は教卓に立つと、私たち一人一人を見つめながら訊ねました。
翻訳魔法というのは、様々な言語を身につけている者の出身国の言語へと瞬時に翻訳されて聞こえたり、見えたりする魔法のことです。私と兄様の様な魔法が使えない人でも、制服に魔力が封じ込められているので、使用可能です。ただし、この魔法は三年生は使用不可になるため、それまでに全ての国の言語をマスターしないといけないみたいです。
あ、私と兄様はこの魔法を使用しなくても、分かりますよ。けど、お祖父様や父様、母様の言い付けで使用しないといけないんです。理由は訊いていないので、知りませんけど。
「諸君、入学おめでとう」
私たち全員が手をあげないことを確認した先生は頷いてそう挨拶をしてから、この学園について説明していきます。
※説明は省きます。
「最後に寮について説明するぞ。入り口を入って正面が管理人室、右へ行くと女子寮、左へ行くと男子寮だ。食堂は管理人室の横に階段から行けるぞ。風呂は部屋に常備されているが、それぞれの寮の地下に浴場があるから、興味があったら入ってみてくれ。寮則については後で知らせる」
説明し終わると、先生は何か質問があるか訊ねてきました。質問は何もないため黙っていると、先生は持っていた端末に手を触れます。すると、先生の後ろに魔法陣が展開して、先生の名前と担当教科が表示されました。
「さて、質問もないようなので、今から自己紹介をしてもらおうかな。では、まずは私から。ここに書いてある通り、私はこのクラスの副担任のミゲル・フォルスターだ。担当する教科は地理歴史と公民。一年間、よろしくな。ああ、それと担任の先生は別の仕事で遅れているから、紹介は後だ」
先生は自分の自己紹介をすると、端末に触れて魔法陣の表示をクラスの全員の名前に変えました。そして、こちらに視線を向けて
「では、君たちにも自己紹介をしてもらおう。名前と出身国と、何か一言。じゃ、まずは君から」
と言って、廊下側の一番前の女子を指名しました。
あっちからということは、ミゲル先生が気紛れを起こさない限り、私が最後になりそうでね。
「・・・・・・私はウィルネ・アースと申します。チグラテス出身です。よろしくお願いします」
ウィルネさんはエルフ族で、金髪のロングヘアー、先のとがった耳が特徴的です。また、彼女の出身国であるチグラテスというのは、エルフ族が統治している国で、日帝国の海を挟んで反対側に位置しています。
あ、ちなみに彼女は兄様のお嫁さん候補ランキング第5378位です。
「はい。次は君ね」
「はい。僕は―――」
ミゲル先生にさされながら順に自己紹介をしていくクラスメイト達。私は顔と名前を覚えながら、自分の番が来るのを待ちます。この分だと、やはり私が最後になりそうです。
「私の名は鎌田匠耶。ここ日帝国の出身。どうぞお見知りおきを」
途中、教室内に戻っていた兄様の悪口を言ったやつの自己紹介がありましたが、その方はブラックリスト入りです。
その後、自己紹介はどんどん続いて窓側の列、私と兄様の列まで来ました。
「俺はユーマ・サラマンダー。ドラゴロル出身だ。よろしく」
まず、最初に一番前の席に座っていた男子が自己紹介をしました。
ユーマさんは竜人族で、燃えるような赤い髪と顔の鱗の模様が特徴的です。また、彼の出身国であるドラゴロルといのは竜人族が統治している国で、日帝国の隣に位置しています。
ちなみに、他の三国はミゲル先生のようなホビット族が統治している“ドーム”、鳥人族が統治している“オデット”、狼人族が統治している“ワーフル”となります。
「俺の名は夜刀神刃冶。日帝国出身。“魔法科学研究コース”に行くつもりだったのに、祖父さんの画策で、“魔法実践コース”に強制的にこのクラスに入れられた。文句がある奴は直接祖父さんに言ってほしい。以上」
自分の番になった兄様は立ち上がると、そう告げ一睨みしてから、席につきました。私は苦笑しながら立ちあがると、深々とお辞宜をします。そして、一人一人の顔(あの方は除く)を見つめながら、自分の名を口にしました。
「私は夜刀神夕季。日帝国の出身です。顔を見れば分かると思いますけど、私は前の夜刀神刃冶の双子の妹です。よろしくお願いします(ニコッ)」
『『『『『!!』』』』』
再度お辞宜をして微笑みかけると、一部の男子と女子の皆さまが鼻を摘まんで上を見上げます。
私はその様子にやりすぎたかなと思いながら、席に座り直しました。
まぁ、これで兄様が言ったことは忘れてくれたと思うので、良しとしましょう。
「さて、これで皆の自己紹介が終わった訳だが、担任の先生が来られないので、今日の日程について説明する」
私が座るのを待って、ミゲル先生はそう言って端末に触れる。すると、魔法陣の表示が今日の日程に代わりました。
その時、自動扉が開いて白いローブを身にまとった茶色のロングヘアーのエルフ族の先生が入ってきました。
「ごめんない、ミゲル先生。ちょっと遅くなっちゃったわ。えっと、それでどこまで行きました?」
その先生は教卓の前へと近づくと、ミゲル先生に話しかけます。ミゲル先生はこの学園についてと自己紹介が終わったことを説明しました。
やはり、この方が私たちの担任の先生のようですね。
「そう。じゃ、最後に私の自己紹介ね。ええと、私はニーナ・ファンタジア。このクラスの担任よ。数学と魔法科学を担当しているわ。ミゲル先生ともども、一年間よろしくね」
先生は頷くと、そう自己紹介をして、最後に笑顔を私たちに向けました。その笑顔に大半の生徒が赤くなってしまったのは言うまでもありません。私はというと、ニーナ先生には敵いませんねぇと思いながら、見つめ返していました。
「さて、今日の日程を言うから、ちゃんと聞きなさい。この後は、グラウンドに集合。そこでトーナメントがあるわ」
『『『『『トーナメント?』』』』』
???
「ああ、あなた達は初めてだったわね」
ニーナ先生はそう言って、トーナメントについて説明してくれました。
それによると、一年生は魔神石で測定した魔力量だけでしかデータがないため、これでは個々の能力が判断できないから、魔法戦闘における動きや魔力効率などを見るためにトーナメントをするようです。トーナメント形式なのは時間がないからだそうで、次の試合では総当たり戦になるそうです。
「じゃ、今から皆の専用の『戦闘服』を渡すわ。名前を呼ばれたら取りに来てね」
そう言ってニーナ先生は一番のウィルネさんから出席番号順に専用の戦闘服を渡していきます。
“戦闘服”というのは、魔法戦闘に特化した高性能の服です。登録者の身体にフィットして動き易い、登録者の生命維持、魔法戦闘における破損を一日で修復、戦闘の記録など色々な機能がある優れものです。
「皆、戦闘服をもらったわね? じゃ、女子は私についてきなさい。更衣室に案内するわ」
ニーナ先生は全員に戦闘服が渡ったことを確認し、私を含めた女子達を廊下に連れ出しました。そして私たちは、ニーナ先生の案内で更衣室へと向かいました。
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なお刃冶の嫁候補ランキングを作成している夕季ですが、女性たちの情報をどこから入手しているのかは秘密です。
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