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魔剣学園 ~ブラコン娘の奮闘記~  作者: 光闇雪
Chapter.2 ~フラグのへし折り~
21/23

Episode:020 授業再開

レフェル様、ヒョウガ様、感想ありがとうございます。


お待たせしました。第20話、更新です。

今話は爆発直後からのお話です。

では本編をどうぞ。

 愛紗美と刃冶は、夕季に手を取られると、集合した他の生徒たちがいる所へテレポートで転移させられる。急な転移であったため座標がわずかにずれて、愛紗美と刃冶は先頭にいたユーマにぶつかってしまった。

 その直後、大きく膨れ上がった鬥蕁麻(とうじんま)が大爆発をおこした。夕季は、逃げる間もなく爆煙に呑みこまれていった。


「会長!? 大丈夫ですか!?」

「いたたたっ。だ、大丈夫だよ」

「・・・・・・・・・・・・」


 ユーマは華奢な愛紗美が自分にぶつかったことに驚いて、地面に転がる刃冶には目もくれず、腰を抑えている愛紗美を心配する。愛紗美は少し痛がっていたが、笑顔で答えると立ち上がって、たった今いた場所へ視線を向ける。起き上がるのも面倒であるかのように地面に大の字で横たわった刃冶もまた、爆煙に視線を向けていた。


「か、会長。夕季は・・・・・・」

「会長」


 愛紗美がユーマの質問に答えようとしたとき、副会長のルーシュ・ランデグルフが声をかけてきた。


<グラン先生から左側に進んだ1年生たちが何者かに捉えられていたため救出したとの連絡がありました>

「!!」


 ルーシュは小声で報告したが、愛紗美のそばにいたためユーマには聞こえてしまったようで、目を見開いて驚いていた。


「そう・・・・・・。これは鬥の仕業だと思ってもいいかしらね、ヤイバ」

「知らん。夕季に訊いてくれ」


 愛紗美はユーマの質問に答えるのを中断して頷く。そして爆煙を注視しながら刃冶に訊ねた。すると、いつものかんじで刃冶が答える


「刃冶、何を言って・・・・・・」

「にゃはは。分かったわ。あとで訊くことにしましょう。ルーシュ君、グラン先生にこのことを報告してちょうだい」

「分かりました」


 ユーマが怪訝そうな表情で呟くが、愛紗美は笑って頷いた。そしてそばに控えていたルーシュに報告を頼んでから、自分を真剣な目で見つめる生徒たちに命令した。


「ただちにマスクを装着! またグラン先生が戻ってくるまで、その場で待機!」

『『『『『はっ!』』』』』


 命令に従ってウィルネおよび2,3年の生徒たちは、戦闘服の襟首にあるボタンを押した。ユーマも愛紗美の態度に疑問に思いつつも、周りの先輩たちと同じようにボタンを押した。

 カチッという音とともに全員の顔にマスク(瘴気などの毒性の高いものをシャットアウトし、空気などの無害なものだけを通すことのできる透明なフィルム)が装着された。


「あの煙が何なのか2,3年生は知っていると思うけど、あの男のことは知らないと思うから一応、最初か説明するわね。あの男は鬥蕁麻と言って、10年前まで魔剣学園の学園長を務めていたの。説明はできないけど、鬥前学園長は当時6歳だったユキちゃん、夜刀神夕季によって失脚させられた。まぁ、鬥前学園長の自業自得だけれどね。その逆恨みで、ユキちゃんを狙ってやってきたというわけね」

「会長。あの人が前学園長であることは分かりました。けどあの人が飲んだのは一体何なんですか?」


 愛紗美は皆がマスクを装着したのを確認してから、自らもマスクを装着して状況を説明していく。するとウィルネが手を挙げて質問してきた。愛紗美は微笑むと、ウィルネとユーマを見つめてから返答した。


「ウィルネさんとユーマくんには分からないわね。あれは濃瘴溶液といって、科学的に濃縮した瘴気をグリセラリンという液体に溶かしたものです。魔法科学Ⅰの“濃瘴溶液による人体爆発の危険性”という項目で習うものよ。詳しい説明は省くけど、あれは鬥前学園長の濃瘴溶液による爆発テロです。そしてあの煙は濃縮された瘴気の塊です」

「なっ!?」


 濃縮瘴気は、曝露した身体がすぐに腐敗して朽ち果ててしまうほど、瘴気よりも毒性が高い。ウィルネはそのことを知っていたため驚いて目を見開いた。ユーマは爆発の規模で夕季を心配していたが、それ以上の濃縮瘴気という危険なものだと分かり、声が出せないほど驚いていた。

 そんな二人の様子で夕季を心配しているのに気付いた愛紗美は、笑顔で顔を横に振って『大丈夫だよ』と呟いた。


「さっきヤイバが言ったでしょ? 『夕季に訊いてくれ』って。それにヤイバの使い魔くんはどこに行ったのかな?」


 二人はハッとなって、いまだに横になっている刃冶を見つめた。

 愛紗美の言う通り、さっきまで刃冶の肩に乗っていた使い魔・紅焔(こうえん)は、どこにも見当たらなかった。


「ね? ヤイバ」

「知らん。夕季に訊いてくれ」


 愛紗美は『使い魔で助けたでしょ?』という意味で訊ねた。刃冶は、いつもの口癖で答えると、そのままの格好で眠り始めた。

 ウィルネとユーマは刃冶の態度に夕季は大丈夫である確信した。しかし、どこにいるのかと首をかしげるのだった。


*****


 その数分後、ほかの1年生と夕季の使い魔である葛葉を引き連れたグランと、掃除を完了した魔法実践科の先生たちが戻ってきた。

 その中の一人が、今もなおもくもくと立ち上っている煙に近づいた。その人は魔法実践科の先生の一人、津久毛慎之助(つくもしんのすけ)教諭だ。慎之助は80歳の老教師だが、瘴気除染に関しては右に出る者がいないほどのエキスパートである。

 ゆっくりとした動作で懐から小瓶を3つ取り出した慎之助は、それらのフタを開ける。そして呪文を呟きながら振りかけていく。すると徐々に煙が小さくなっていき、最後にはなくなってしまった。そこには夕季はいなかった。ましてや朽ち果てた残骸などもなかった。


「ウォーカ先生。除染完了したよ」

「津久毛先生、ありがとうございます」

「これが私の仕事だよ。さてあとは頼みましたよ」

「はい。さてお前たち、マスクを外してもかまわん」


 グランは慎之助に礼を述べると、愛紗美たちにマスクを外すよう告げた。愛紗美たちは襟首のボタンを押して、マスクを外して休めの体勢をとる。刃冶はユーマに起き上がられて、しぶしぶ休めの体勢をとった。


「鬥蕁麻については報告を受けている。そして1年生どもを閉じ込めていたのも、鬥蕁麻であることも夕季によって知らされている。夕季については、無事であることは言っておく。本人から先ほど連絡を受けた」


 グランは1年生が自分のグループに集合したのを確認してから、淡々と告げる。グランの足元で毛づくろいをしていた葛葉が、夕季の話題に入った瞬間に『コン♪』と鳴いて、森の中へと向かっていった。その入れ替わりに紅焔が、森の中から出てきて刃冶の肩へととまった。


「グラン先生」


 その様子をポカーンと見ていたユーマだったが、すぐに我に返って手を挙げた。


「ユーマか。なんだ?」

「夕季はどこにいるんでしょうか?」

「それは後で夕季にでも訊きなさい。私からは何も言うことはない。ただ、授業を欠席するということだけは言っておく。では皆がそろったということで授業を再開する」


 グランは質問に答えると、授業を再開させる。

 ユーマは怪訝そうにしていたが、愛紗美に『授業だよ。気を引き締めてね』と声をかけられたので、すぐに気を引き締めた。


「2,3年生は昨年もやったから知っているとは思うが、1年生は初めてなので今からやることを説明するぞ。今からお前たちは俺たち魔法実践科の教師たちと戦ってもらう」


 魔法実践科の先生たちは、軍に所属しているものや過去に軍人として活躍した歴戦の猛者たちばかりである。その中でも魔法実践科兼主任教諭であるグラン・ウォーカは、国際防衛部隊で5人しかいない中将であり、実力もほかの先生たちよりも抜きんでている。そのためグランの言葉に1年生たちがざわつくのも仕方がないことだろう。


「1組につき一人の教師がつく。お前たちは全員で協力して時間内に我々を倒す。それが条件だ。本来なら時間内に我々を倒せなかった場合、居残ってもらっていたが、今回は鬥蕁麻のこともあるので、居残りは無しだ。ただし、わざと時間を潰そうとしたら、罰を与えるので肝に銘じておけ」


 グランは1年生がざわつく中、意に介さずに授業の内容を淡々と説明した。

 1年生は自分一人で先生と戦うわけではないと分かって安堵の表情を浮かべるが、すぐに気を引き締めた。先輩方の緊張した雰囲気に、一筋縄ではいかないと分かったからだ。


「では、それぞれ担当の先生を紹介する。Aグループは私が、Bグループはセザール・ウルネ先生が、Cグループは津久毛慎之助先生が、Dグループはユズキ・イリーナ先生が、Eグループは杏莉ゆう先生が、Fグループはサリーナ・アース先生が、Gグループは安藤高志先生が、Hグループはウォーカー・セダン先生が、Iグループは霧ヶ峰ミリア先生が、Jグループはセリナ・ユース先生が担当する。なお、明日以降は、それぞれの担当の先生が授業を行うからな。では、それぞれの先生の指示に従うように」


 グランは1年生が黙ったのを確認し、それぞれのグループを担当する先生を紹介して先生方に合図を送った。先生方はそれぞれ担当する生徒たちの前に進むと、挨拶もそこそこに指示を出していった。


「Aグループを担当するグランだ。よろしく」

『『『『『はい!』』』』』

「今回は2人が抜けているから、少し難しいかもしれんが、頑張って私を倒してみてくれ。時間もないからさっさと始めるぞ」


 グランもAグループの愛紗美たちのところに向かって挨拶し、戦闘開始の旨を告げる。愛紗美たちが頷いたのを合図に、グランは森の中へと走り去っていった。


「時間はないけど、グラン先生を倒せるように作戦を考えるよ」

『『『『『はい!』』』』』

(はぁ・・・、面倒だ)


 こうしてグラン対愛紗美率いるAグループの戦いが切って落とされたのだった。

第20話をお読みくださいましてありがとうございます。また、誤字・脱字報告や感想・質問などのコメントをお待ちしております。


Next Title: YATOK(ヤートック)



≪用語説明≫

グリセラリン:

グリセリンと同意。

示性式 C3H5(OH)3 もしくは分子式 C3H8O3 で表される無色透明の糖蜜状液体。


濃瘴溶液による人体爆発の危険性:

“魔法科学Ⅰ”という科目で教えられるもの。

濃瘴溶液が体内に入ると、身体が膨張し始めて、やがて爆発してしまう。爆煙には濃縮瘴気が大量に含まれる。膨張し爆発する理由は濃縮された瘴気が体内の魔力と反応するためと考えられているが、実際には分かっていない。

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