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魔剣学園 ~ブラコン娘の奮闘記~  作者: 光闇雪
Chapter.2 ~フラグのへし折り~
19/23

Episode:018 魔斬山登山 後

レフェル様、ヒョウガ様、感想ありがとうございます。


お待たせしました。第18話、更新です。

今話も魔斬山(まざんさん)登山での出来事です。

では本編をどうぞ。

 第三トラップを突破した私と兄様は、ウィルネさんとユーマさんの後から頂上を目指して進んでいました。


「・・・・・・紅焔(こうえん)で飛んでいいか?」

「では私をおんぶしましょう♪」

「意味が分からん。はぁ。歩けばいいんだろ、歩けば」

「ふふふ」


 私は十分に兄様成分を注入できたので、首に巻きつけた葛葉(くずのは)のもふもふ感を堪能しつつ、兄様の問いかけに応じていきます。兄様は私の返事にため息を吐きながらも、歩みを止めずに進んでいきます。


「ところで次のトラップは何なんだ? 夕季」

「ふふふ。なんでしょうねぇ」

「まぁ、いいや。あの夫婦が突破してくれるだろうよ」


 兄様は欠伸混じりに、前を進むウィルネさんとユーマさんを指差しました。二人を見つめると、仲睦まじく会話しながら歩いています。

 私はユーマさんを見つめるウィルネさんの嬉しそうな横顔に、二人を応援しようとひそかに思っていました。ちなみにウィルネさんの兄様のお嫁さん候補ランキングは第10000位に変更しています。

 それからしばらく歩いていると、第四(最終)トラップがある場所に到着しました。そこでは先に到着していたウィルネさんとユーマさんが困惑した表情で立札を見つめていました。


「どうかしたのか? マンサラダ―夫婦」

「サラマンダーだ。しかも夫婦じゃねぇ!」

「そ、そうだよ!」

「そんなことはどうでもいい。で、何があったんだ?」


 兄様のからかいに困惑していた二人が勢いよく否定しました。けど兄様は意に介さずに話を進めます。

 ユーマさんは元々赤い顔をもっと赤くして咳払いを一つして、立札を指差しました。

 立札を覗きこむように見ると、こう書かれてありました。


≪≪ここからが正念場。頂上までの一本道には、獰猛な霊獣を配置している。全ての魔法を駆使して迎撃せよ≫≫


「・・・・・・よし。帰るか」

「ふふふ。ダメですよ♪ これが最後のトラップなんですから。これらを突破すれば頂上なんですから、気合を入れていきましょう」

「はぁ。霊獣たちがいるって分かってたら、全力でサボっていたんだが・・・・・・」

「ふふふ。だから黙ってたんです。さぁ、兄様行きますよ♪」

「はぁ・・・・・・。本当に夕季が冷たいんだが、紅焔」

(ファ、ファイトです。主様)


 兄様はあからさまに嫌そうな表情になりながらも、私に押されるままに歩いていきます。

 その後をウィルネさんとユーマさんが追ってきました。そして私たちに追いつくと、ウィルネさんが耳打ちをしてきました。


<ねぇ、夕季さん。霊獣って四神獣の青龍、朱雀、白虎、玄武だよね、確か>

<ふふふ。四神獣も霊獣の一体ですが、ここにいるのは違います。ここにいるのは稻羽之素菟(いなばのしろうさぎ)金鵄(きんし)蓑亀(みのがめ)八咫烏(やたがらす)八岐大蛇(やまたのおろち)の五体になります>

「ええ!? わ、私たちで勝てるの!?」

「ど、どうした? いきなり大声なんかあげて」


 私が言った五霊獣の名に驚いて、大声を張り上げてしまうウィルネさん。その声に吃驚したユーマさんが目を丸くしながらウィルネさんを見つめてきました。


「ゆ、ゆゆゆゆゆゆ」


 ウィルネさんは私が言った名前をユーマさんに教えようと声を出しましたが、唇が震えて上手く喋れてません。ユーマさんは首を傾げつつ、ウィルネさんの肩を両手でガシッと持つと、ウィルネさんに視線を合わせました。


「ウィルネ落ち着け。はい。深呼吸」

「す~は~。す~は~」

「よし。落ち着いたな。何で驚いたのか教えてくれ」


 深呼吸をして、どうにか落ち着いたウィルネさんは頷くと、これから現れる霊獣たちの名を告げました。するとユーマさんも両眼を目一杯ひろげて驚いた表情になり、私を見つめてきました。


「ほ、本当なのか!? 夜刀神妹!?」

「ちょっと勘違いをしているぞ。マンサラダ―」

「サラマンダーだ! って、そんなことよりもどういうことだ?」


 詰め寄ろうとしたユーマさんをもう一度地面に叩きつけようとしたら、その前に兄様がユーマさんを止めてしまいました。

 業をかけようとした手を元の位置に戻して見守ることにします。

 ユーマさんは兄様の名前間違いで、少し冷静さを取り戻したのか、いつもの声色で訊ねてきました。


「あとは夕季に訊いてくれ」


 ドタッ!


 ウィルネさんとユーマさんは予想外の返答だったのか、思い切りこけてしまいました。その二人の反応が予想通りだったので、私は少し笑いを堪えながら補足説明をしていきます。


「立札にはこう書いてあったはずです。“獰猛な霊獣たちを配置している”と」

「ああ。確かに書いてあっ・・・・・・・、なるほど。“獰猛な”霊獣か・・・・・・」

「あっ。そうだよね。“獰猛な”霊獣っておかしいかも」

「ふふふ。分かったようですね。皆さんも知っての通り、霊獣は本来争いを好みません。私たちが霊獣を怒らす行為をしないかぎり、決して襲ってくることはないのです」

「ということは立札に書いてあったのは嘘ってこと?」

「いいえ。嘘ではありませんよ」

「え? それじゃ矛盾してるよ? 霊獣は獰猛じゃないのに、ここにいる霊獣は獰猛って」

「それは・・・・・・、あの子を倒したら分かります」

「え?」


 ウィルネさんの質問に答える変わりに、10メートル先にいた一羽の巨大な兎を指差しました。

 あの巨大な兎こそ、霊獣の稻羽之素菟です。

 素菟は後ろ脚で身体を立たせ、鋭い眼光で私たちを睨みつけていました。


「ね、ねぇユーマ。アレって・・・・・・」

「おそらく・・・・・・、稻羽之素菟だ」

「あ、あんなに大きかったっけ?」

「いや・・・・・・、中学時代に習ったのはもう少し小さ――」


 二人は素菟の大きさに驚いて足を止めてしまいました。その瞬間、素菟が臨戦態勢を取り、二人めがけて体当たりしてきました。

 私は二人と素菟の間に割りこむと、フィジカル・レインフォースメント(身体強化)で防御力を高め、素菟の初撃を受け止めました。


 ドン!


 素菟との衝突で、顎と鼻にある手に凄まじいほどの負荷がかかります。気付くと、私はニヤッと笑っていました。

 あっ、いけない・・・・・・、これは。



**********


「はは。いい攻撃だね・・・・・・」

「!!」


 素菟は、自らの攻撃を受け止めた少女、夕季の雰囲気の変化を感じ、後ずさって距離をとった。

 ウィルネとユーマもまた夕季の変化に戸惑っていた。

 これはウィークとの対戦のときの見た目の変化とは異なっていたからだ。見た目は夕季だが、雰囲気が夕季のものではないのである。


「や、夜刀神兄。これはどういうことだ・・・・・・?」

「夕季さん。どうなったの?」

「知らん。あとで夕季に訊いてくれ」


 刃冶は興味なさそうに呟くと、露出した根っこに腰かけて、どこからか取り出した餌を紅焔に与えた。


「はぁ!? 何を言って――くっ!?」


 ユーマはその刃冶の態度に文句を言おうとした。しかし刃冶から発せられた、何とも言いようもない迫力に何も言えなくなった。ウィルネは暗に刃冶が『黙って見守れ』と言ってるように感じられたため、黙って夕季を見つめた。


「あれ? どうしたの? もう攻撃しないの? だったら僕から攻撃してもいいかな? まぁ、ダメって言ってもやるけど!」

「!?」


 夕季は数回リズムよく跳躍した後、一瞬で素菟に肉薄した。素菟が逃げようと身体をのけ反らせる。それをサイコキネシス(念動力)で止めた夕季は、フィジカル・レインフォースメント(身体強化)で硬くした拳を素菟の脳天にぶつけた。


 ドン!


 勢いよく地面に頭から落ちる素菟。この攻撃により、あっさり素菟は気絶してしまった。


「ええ~? これくらいでやられちゃったの? あんなにいい攻撃だったから、できると思ったのに。がっかり――ぎゃっ!?」

「お前とやれるのは従姉(ねえ)さんだけだ。祐喜」


 気絶した素菟にがっかりした表情を浮かべる夕季に対して、刃冶が鉄拳制裁で黙らせると事実を述べた。頭を押さえてうずくまった夕季は、涙目で刃冶を見つめた。


「兄さん、痛いよ~」

「痛くしたんだ」

「むぅ。あ~あ。何だかつまらないから、オリジナルに変わるね~」


 夕季は頭をさすりながら立ち上がったかと思うと、フッと身体の力が抜けた。それを支えた刃冶は、寝息を立てている夕季を見つめてため息を吐いた。

 ウィルネとユーマの二人は困惑した表情をしながらも刃冶と夕季に近づく。その時、寝息を立てていた夕季が眼を覚ました。



**********


「兄様・・・・・・、“狂戦士(バーサーカー)モード”になってしまったようですね」

「まぁな。ちなみにマンサラダ―夫婦に説明頼むぞ」

「・・・・・・ふふふ。サラマンダー夫婦ですよ兄様」


 私はいつもの兄様の態度に微笑みながら、名前を訂正しました。兄様は『うるせ』と言って私たちに近づいてきたウィルネさんとユーマさんの方を顔を向けました。私も立ち上がると二人に微笑みました。


「夕季さん。大丈夫?」

「ええ。大丈夫です」

「夜刀神妹。さっきのお前は何なんだ?」

「そうですねぇ。どう説明したらいいか分かりませんねぇ・・・・・・。この授業が終わったら説明しますね」

「・・・・・・分かった。約束だぞ」

「ええ」


 とりあえず説明を後回しにした私は、気絶している素菟の方に顔を向けました。すると、ちょうど素菟が消えようとしているのが見えました。


「あれがここの霊獣の正体です」

「・・・・・・なるほど霊気による幻霊獣か」

「ええ。本物の霊獣よりも力は劣りますから、二人でも倒せます」

「分かった。次の相手は俺が倒してやる」

「おう。がんばれよ~」

「ふふふ」

「ははは」


 ユーマさんは勢いよく手を上げて宣言しました。兄様は興味なさそうに答え、ウィルネさんと私は笑ってユーマさんを見つめていました。


*****


 その後、私たちはユーマとウィルネの活躍で、残りの四体の幻霊獣、金鵄、蓑亀、八咫烏、八岐大蛇を倒すことができました。これで山頂まであと少しです。

第18話をお読みくださいましてありがとうございます。また、誤字・脱字報告や感想・質問などのコメントをお待ちしております。


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