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魔剣学園 ~ブラコン娘の奮闘記~  作者: 光闇雪
Chapter.2 ~フラグのへし折り~
13/23

Episode:012 初授業と夕季の戦闘

ヒョウガ様、感想ありがとうございます。

第12話、更新しました。今話は初授業のプロローグです

では本編をどうぞ。

 ここは夜刀神家が懇意にしている夜神(やがみ)病院。その個室に身体全体を包帯で巻かれた人物がいた。その人物が誰なのかは、顔も覆われているため判別できないが、個室の外に掲げられている名札には“夜刀神刀彌(とうみ)”と書かれていた。


「あらあら。随分とまぁ大袈裟にお巻きになったものですね? あなた」


 その時、見た目50代前後の女性が入ってきて、刀彌ミイラ(```)を見て告げてきた。その女性は、名を夜刀神恵美(えみ)(以下、恵美)といい、夜刀神刀彌の妻で刃冶と夕季の大叔母にあたる。また夜刀神家の分家の中で、唯一夕季が信頼している人でもある。


「毎度のことながら、威勢の良いことを仰っているわりに結果は変わりませんねぇ」

「・・・・・・うるさい」

「あ、そうそう。院長さんが仰っていましたけど、怪我そのものはすぐに治るのに、包帯をミイラみたいにして欲しいと言われた時はビックリしたそうですよ?」

「うるさいと言っている! 着替えをおいたら出ていけ!」

「はいはい。着替えはここに入れておきますので、着替えてくださいね。ではまた来ますね」


 刀彌の怒鳴り声にも怯まず、恵美は着替えをタンスのなかに入れた。そして刀彌に微笑むと、踵を返して個室を出ていった。


〈申し訳ございません恵美様〉


 個室を出てロビーに向かっていた恵美に、現・夜刀神家施設ボディーガード集団“YATOK”のリーダー、家城裕也から秘匿回線の連絡が入った。恵美はそのまま歩き続けながら口を開いていく。


〈いいのよ家城。お義兄様に知らせる前に、ユキちゃんが気付いちゃったのでしょう?〉

〈はい。我々が駆けつけた時にはもう夕季様がおられました〉

〈本当、ユキちゃんの察知能力はずば抜けているわね。けど、今度はユキちゃんにあんなことをさせないようにしましょ。家城、夜刀神家の分家連中の監視よろしくね。〉

〈はい、恵美様〉


 家城は頷くと回線を切って、恵美は何事もなかったかのようにロビーを進んで、そのまま病院の外へと出た。そして待たせてあった車に乗り込むと、病院を後にする。


(・・・・・・ユキちゃん、ヤイバくん。絶対、あなた達のこと守って見せるわ。だって、お姉様の・・・・・・、あなた達のお祖母(ばあ)様との約束だもの)


 車の後部座席で寛ぎながら、恵美は自分の実の姉である夜刀神刃秦の亡き妻、夜刀神さおりとの約束を思い出していた。



**********


「各クラスの出席番号1番の者。全員いるか確かめて報告!」


 戦闘服に着替えて、(やはり)さぼろうとしていた兄様と紅焔(こうえん)を引っ張ってグラウンドに到着した時、グラン先生の声が響きました。

 どうやら集合時間ギリギリになってしまったよですね。


「ほら兄様。行きますよ」

「へいへい」


 兄様の腕をとった私は、列の最後尾に素早く並びます。そして出席番号1番のウィルネさんが私と兄様を見て首を傾げましたが、すぐにグラン先生の方へと向かいました。

 どうやら最初っから私たちがいたと思ったようですね。


「・・・・・・よし。全員いるようだな・・・・・・。さて1年生諸君。この魔法実践では、2,3年生とともに1年間鍛錬をする。そこで今日は、1年間ともにする仲間たちとの顔合わせをしてもらう(スッ)」

『『『『『はい!』』』』』


 グラン先生が合図を送ると、控えていた2,3年生が分かれ出しました。そして2,3年全員が、20人1組、計10組に分れた時、グラン先生が再び私たちの方を向き直しました。


「今年のグループは向かって右からA,B,C,D,E,F,G,H,I,Jの10組で構成してある。今からお前たちが、どのグループに所属するのか発表する。ちなみにグループは昨日の能力測定トーナメントを基に振り分けたものだ(パチン)」


 グラン先生が指をならすと、私の目の前に魔法陣が展開されました。そこには“夜刀神夕季 グループA”とありました。兄様の方をみると、やっぱり“グループA”と出ていました。

 運よく兄様と同じグループになったようですね。これでちゃんと介入ができます。あ、言っときますが、私は何もしておりませんよ? まぁ、やろうと思えばできますが。


「よし、皆確認したな。それでは1年生。自分のグループに向かいなさい」

『『『『『はい』』』』』

「ふふふ。行きましょうか兄様」

「はぁ、面倒だ・・・・・・」


 グラン先生の言葉に頷いた私たち1年生は、それぞれのグループに分かれていきます。

 ああ。そう言えばここである嫌なイベントがありましたね・・・・・・。ここは一つフラグをへし折っておきましょう。


「は~い。グループAの皆はこっちに集まって~。あ、ヤイバ~。ユキちゃ~ん。2人もA?」

「ええ」

「まぁな」


 兄様とグループAに向かうと、お従姉(ねえ)様が呼びかけを行っていました。お従姉様は私たちに気付くと近寄ってきました。

 私は笑顔で、兄様は退屈そうに頷きました。すると早速、嫌なイベントが始まりました。タイミングを逃さないように準備をしておきましょう。


『な、ななななななぜエリートの僕が、あの者たちと同じグループなんですか!? おかしいです!?』

『お前は確か1年13組のフィーク・アースだったな。さっきも言ったが、これは昨日のトーナメントの結果を基にした振り分けだ。抗議は一切受け付けん。さっさとグループのところへと行け』

『いいえ、納得できません! やり直しを要求します!』

「やれやれ。毎年いるんだよね。自分の力を過信して、先生たちに抗議する者って」


 グラン先生に楯突いている生徒を見ながらお従姉様がため息を吐きます。私はお従姉様を一瞥しましたが、すぐに向き直って、グラン先生とその生徒、アースさんのやり取りを見守ります。


『お兄様。おやめください!』


 だんだんとヒートアップするアースさんに一人の女生徒が止めに入りました。それはウィルネさんでした。

 ボディーガードさん達の資料によると、ウィルネ・アースさんとフィーク・アースさんは双子のご兄妹です。そして私たちと違って兄妹仲は悪いようです。まぁ、アースさんの一方的な傲慢によるものみたいですけど。


 さてウィルネさんが来たという事は、今がチャンスですね。


『うるさい! お前は黙ってい――ぐはっ!?』


 私はアースさんがウィルネさんに手を上げようとした瞬間を狙って、アースさんをふっ飛ばしました。


 ふふふ。乱入成功です。これで1つ、フラグをへし折れます♪

 さて覚悟はよろしいですか? アースさん。



**********


「うるさい! お前は黙ってい――ぐはっ!?」

「・・・・・・え?」

「ふぅ。女の方に手を上げようとするなんて、本当に愚かな方ですね。大丈夫ですか? ウィルネさん」

「・・・・・・ゆ、夕季さん? え、ええ。大丈夫です」

「それは良かったです」

『だ、だれだ!? 僕に攻撃したのは!?』


 兄であるウィークが突然吹っ飛ばされたため唖然とするウィルネだったが、目の前に夕季が現れたので、我に返る。そして夕季の問い掛けに頷いた。その時、吹っ飛ばされたウィークが大声で叫びながら戻ってきた。

 それを一瞥した夕季は、テレパシー(精神感応)でグランに話し掛けた。


〈グラン先生。少しよろしいですか?〉

〈・・・・・・なんだ?〉

〈あの方は私と兄様がいるというのが、気にくわないようです〉

〈どうやらそうらしいな〉

〈ならば変えて差し上げられたらよろしいのでは?〉

〈このグループは、理事長と学園長の立ち会いのもとで決めたものだ。変更は認められない〉

〈なるほど。けど、このままだと収拾がつきませんよ? ここはあの方が納得できるようにしないいけないと思います。もし許可をいただけるのであれば私が対戦しますが、どうでしょう?〉

〈うむ・・・・・・〉


 グランは夕季の横顔と怒り心頭で戻ってくるウィークを交互に見つめながら思案顔になった。しかし、すぐに元の表情に戻して、隣に控えていた魔法実践科の先生方に耳打ちをし始めた。そしてウィークが夕季たちの下へと戻ってきたとき、夕季とウィークを一瞥してから他の生徒たちに告げた。


「どうやらウィーク・アースは、グループを変えてもらいたいそうだが、このグループは、理事長と学園長の立ち会いのもとで決められたもの。何事も変更は許されん。しかし、このままではグループとしての統率に差し支えることになりかねん。そこで他の先生方とも相談したが、ただ今からウィーク・アースと夜刀神夕季の魔法戦闘を執り行うことにした!」

「な、何を言ってるのですか!? わ、私がこの者と戦闘ですと!?」


 突然の言葉に怒りから驚愕に変わったウィーク。グランは生徒たちの方を見つめながら言葉を続ける。


「そうだ。夜刀神夕季の実力が如何様なものなのか、お前自身が確かめろ」

「く・・・・・・っ! あ、甘く見られたものですね。いいでしょう。僕の実力がこの者とあの者と一緒になるようなものではないと見せつけてやりますよ」

「そうか。では皆の者。グラウンドからこちらに集合しなさい。そして夜刀神夕季とウィーク・アースはただちに所定の位置に付きなさい」

『『『『『はい』』』』』

「ふん」

「あ、ウィルネさん。葛葉(くずのは)をよろしくお願いしますね」

「あ。う、うん」


 グランの言葉で一斉に動く生徒たち。

 ウィークは夕季を一瞥してから所定の位置に向かった。頭に乗せていた葛葉をウィルネに預けてから、夕季も所定の位置に向かった。


(ユキさま? 私も一緒に)

〈葛葉、大丈夫です。アースさんのような者のために、あなたの能力を使わせるわけにはいきません。今回はそこで見守ってください〉

(はい。ユキさま、頑張ってくださいね)

〈ふふふ。はい〉


 葛葉の応援に頷いた夕季は、一纏まりにしていた髪をほどいた。

 それを魔法陣で見ていた刃冶は遠くのほうにいる夕季を睨みながらテレパシーを送る。


〈夕季。お前まさか〉

〈・・・・・・大丈夫ですよ。“狂戦士(バーサーカー)モード”にはなりません。ただ、“観察・分析モード”にはならせていただきます〉

〈・・・・・・はぁ。ほどほどにしておけよ〉

〈ふふふ。はい〉


 刃冶は、夕季の頑固さを知っているため諦めたように告げて、生徒たちの最後尾まで移動し草むらに寝転がって眠り始めた。

 夕季は刃冶の言葉に微笑みながら、ほどいた髪を団子ヘアにしていく。そして団子ヘアが完成した時、銀色だった夕季の髪が、黒色へと変化していくのだった。

第12話をお読みくださいましてありがとうございます。また、誤字・脱字報告や感想・質問などのコメントをお待ちしております。


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