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魔剣学園 ~ブラコン娘の奮闘記~  作者: 光闇雪
Introductory Chapter ~序章~
1/23

Episode:000 終わりと始まり

“ツインズ”のオリジナル主人公・夕季がオリジナル小説として復活!


第0話は“ツインズ”とほぼ一緒ですので、ご注意ください。

「・・・・・・・・・・・・」


 ここは○○県○○市にある○○大学内に建てられた病院の個室。

 そこで・・・・・・、ある少年が眠っていた。


「・・・・・・祐喜ちゃん。ねぇ、目を覚ましてよ。お願いだから・・・・・・」

「祐喜・・・・・・」


 両親はまだあどけなさが残る17歳の息子の頭を撫でながら話しかけていた。しかし彼は、眠ったまま起きる気配がなかった。なぜなら彼は、眠っているのではなく・・・・・・。

 彼は先天性の病気でずっと入院していた。今から一週間前、彼は17歳の誕生日の祝いで一時帰宅が許されてていたが、翌朝容体が急変する。すぐに救急車で病院に担ぎ込まれたが、着いた頃には既に心肺停止状態であったという。

 主治医の懸命な措置で、一時は心臓の鼓動が再開し危地脱出の期待を抱かせた。しかし彼の意識は、戻らないまま、今しがた息を引き取ったのだった。


*****


 場面は変わり・・・・・・、ここは神界と呼ばれる場所。

 そこに亡くなったはずの少年、橘祐喜が眠っていた。その傍には、一人の女性が呼びかけていた。


「・・・・・・・・・・・・」

『・・・・・・しょう・・・よ・・・・おき・・・さい』

「う、うぅん・・・・・・」

『・・・・・・少年よ、起きなさい』

「うぅん? だ、誰? 僕を呼ぶのは・・・・・・」


 眼をこすった祐喜は、起き上がり声のした方に顔を向けた。


「少年・・・・・・、目を覚ましましたか」

「え、誰?」


 その女性に見覚えがなかった祐喜は、誰なのだろうと思った。いや・・・・・・、実際に声に出していた。


「私は神の1人です」


 女性は、落ち着き払い祐喜を立たせる。そして自分をそう、表現した。

 一般の人なら“この人何を言ってんの?”と思うかもしれない。しかし祐喜はというと・・・・・・、


「ふ~ん、そうなんだぁ」

「ぜ、全然、驚いていませんね」


 納得し頷いていた。その反応が意外だったのか、女神は苦笑してしまう。


「だって僕、死んじゃったと思うから。ここは、やっぱり天国?」

「いいえ、違います。ここは神界です」

「神界・・・・・・、ですか?」

「はい」


 祐喜は何故、自分が神界にいるのかが不思議だった。

 しかし考えても分かるワケがないため気持ちを切り替えて、自分になんの用なのか訊ねた。すると女神は、苦痛の表情になってしまう。

 祐喜が首を傾げながら見つめていると、女神は姿勢を正し祐喜を見つめ返した。


「大変申し上げにくいことなのですが・・・・・・、実を言いますとあなたは死ぬことはなかったのです」

「え?」


 祐喜は、女神の言葉が理解できなかった。

 現に自分は死んでここにいるのに、死ぬことはなかったと言われ理解する方が無理な話である。


「あの~、どういう事でしょうか?」

「本来ならば・・・・・・、あなたは何不自由なく両親と一緒に過ごして、人生を全うする事になっていたはずなのです」

「え・・・・・・? で、でも僕は死んじゃったんですよね?」

「・・・・・・それは、あの者の仕業です」


 その女神の指差す方向には、磔にされた一人の男性がいた。


「あの者は面白半分にあなたの状態を最悪にし、あまつさえ寿命も短くしてまったのです」

「・・・・・・・・・・・・」


 磔にされた男性をみつめたまま、その言葉に二の句が告げずにいる祐喜。

 “これはどういうことなんだろう? 何故、自分なんだろう?”といった様々な疑問が、祐喜の頭の中をぐるぐる回っていたのである。


「我々が気付いた時には・・・・・・、もう手遅れだったのです。・・・・・・本当に申し訳ございません!」

「ええ!?」


 急に女神が土下座をする勢いで謝ってきたので、祐喜は素っ頓狂な声を上げてしまった。


「か、顔を上げてください! 別に怒っていませんから」

「ですが・・・・・・」


 祐喜が慌てて顔を上げるように言うが、女神はまだ謝り足りないという表情で見つめた。困ったような表情になりながら祐喜は告げた。


「別にいいんです。確かになぜ僕なんだろうっていう疑問はあります。でも、病気は苦しかったですが、それ以上に僕は幸せだったんですよ?」

「・・・・・・そうですか」

「はい。だから、顔を上げてください(ニコッ)」


 女神は祐喜の笑顔につられ微笑むと、顔を上げお礼を言った。


「ありがとうございます。そう言ってもらえると助かります」

「えっと、それで僕はこの後どうすればいいんでしょうか?」

「本来であれば天国へ昇天し転生を待つのが通例です。しかし今回は、私どもに罪があるため今すぐに別世界への転生が可能です」


 女神は顔を顔を引き締めると、そう説明する。


「今すぐに別世界への転生が可能? それは良い話かもしれませんけど・・・・・・、この世界じゃダメなんですか?」

「はい。同じ世界に転生させるというのは神の理に反することですので」


 祐喜は両親の元へ帰れると少し期待していただけに少し落胆してしまった。その様子に女神は悲しそうな表情になると、謝りながら頭を下げた。


「い、いいえ、いいんです! あと別世界って、どこでも良いんでしょうか! 例えば漫画やアニメの世界とか!」

「・・・・・・ふふ。はい。どこでも好きな世界を言ってください。でも、あなたの人生です。よく考えてくださいね。また、転生後は赤ちゃんからのスタートですので、それも考慮にいれてください。もし、天国へ行きたいのならば、そう仰ってもらってもかまいません」


 慌てた祐喜は大丈夫ですというばかりに声を張り上げ訊ねてきた。女神は微笑んで頷くが、祐喜の人生をおもんばかり慎重に考えるよう提案する。


「はい」


 祐喜は頷くと腕を組んで、転生するかいなか、するとしてもどこに転生するのかを考えていく。


「・・・・・・・・・・・・決めました。僕は―――」


 そして、じっくり考えた祐喜はとある世界に行くと決めたのだった。


*****


「最後に訊きます。本当にそこでいいのですね?」


 祐喜の願いを訊いた女神が最後の確認を取った。


「はい」


 祐喜が揺るぎない表情で頷くと、女神は笑顔になり右手を翳した。すると祐喜の目の前に大きな扉が出現する。


「道を開きました。この扉をくぐれば、あなたが望んだ世界に行けます」

「ありがとうございます」


 祐喜はお礼を言うと目の前の扉をくぐろうと歩み出したが、すぐに立ち止まった。女神がどうしたのかと訊ねると祐喜は振り返り訊ねた。


「伝言を頼んでもいいですか?」


 女神はしばし考える仕草をして、伝言の内容を訊ねた。


「お父さんとお母さんに『僕を生んでくれてありがとう。そして愛してくれてありがとう』って」

「・・・・・・分かりました。それぐらいなら大丈夫でしょう。では新しい世界のであなたの幸せを祈っていますよ」


 女神は、祐喜の伝言を訊き笑顔で快諾する。

 祐喜は、お礼を言い扉の中へと足を踏み入れていった。


「・・・・・・・・・・・・行きましたか。少年に幸あらんことを・・・・・・」


 祐喜が扉の中へ入ったのを確認した女神は、扉を消して眼を瞑って祈りをささげた。その後、目を開けた女神は少年の元いた世界を映しだした。


「では、少年に頼まれたことをしましょうか」


 手を交差させ目を瞑った女神は、神詞をつむぎだした。


「・・・・・・・・・・これで少年の両親に少年の言葉を伝わっていることでしょう」


 神詞を完成させた女神は、交差させていた手を下ろし磔にされた男性の元に向かった。その直後、男性の断末魔が空間内に響き渡ったのだった。

 その頃、病院の待合室で肩を寄り添いあって眠っていた祐喜の両親が目をさました。


「ねぇ。あなた・・・・・・」

「なんだい?」

「さっき夢に祐喜ちゃんが出てきて・・・・・・、『僕を生んでくれてありがとう。そして愛してくれてありがとう』って言ってたの」

「そうか。俺も同じ夢を見たよ・・・・・・」

「あの子が悲しむ私たちに・・・・・・、元気出してって言ってくれたような気がするの」

「ああ」

「明日から祐喜ちゃんに心配されないように、明るく元気になりましょう」

「ああ、それが良い」

「でも、今日だけは泣かせて」

「ああ、思う存分泣けば良い」


 母親は父親の胸の中で涙で全てを洗い流すように泣いていく。祐喜が心配しないよう、明日を生きるために。



**********


 扉へと足を踏み入れた瞬間、僕は意識がなくなった。


(・・・・・・・・・・・・う、ううん。えっと、ここは?)


 再び意識を取り戻した僕の目の前には知らない天井があった。

 これは言った方がいいのかな?


「うぃうぁうぁいうぇんうぉううぁ(知らない天井だ)」


 って、あれ? 上手く喋れないよ・・・・・・。ああ、そうか。女神さまが『赤ちゃんからのスタートです』と言ってたっけ。

 ということは、この世界は“魔剣学園”の世界なのかも・・・・・・


「あら、起きちゃったの?」

「あぅ?(うん?)」


 そう僕が思い始めた時、女の人の声が聞こえてきたので首を動かそうとした。けど、まだ首がすわってないのか動けなかった。


「夕季、おはよう♪」


 首を動かすのを諦めて天井を見つめていると、女の人の顔が覗きこむように現れた。


 あ、この人が僕のお母さん、かな・・・・・・? あれ? この人どこかで・・・・・・


 そう思ってじーっと見つめていると、その人は微笑んで私を抱き上げる。すると、僕の他にも子どもがいるのに気が付いた。


刃冶(とうや)、もおはよう♪」

「あぅ」


 え・・・・・・? 刃冶って、あの刃冶だよね・・・・・・?

 あ、思い出した。この人って刃冶の・・・・・・お母さんだ!

 えええええええええええええええええええええっ!? じゃ、じゃあ、ここって夜刀神(やとのかみ)家なの!?


 僕は心の中で絶叫した。

 だって、夜刀神刃冶というのは“魔剣学園”の主人公なんだよ!? その主人公の兄弟だなんて物凄く畏れ多いよ!?


*****


 ひとしきり絶叫した僕は女のh――お母さんが部屋を出ていくのを聞いて確認した。落ち着いてくると、僕は嬉しい気持ちでいっぱいになった。だって、あの夢まで見た刃冶が僕の兄弟になるんだもん。


〈すいません。少年いや祐喜〉


 その時、僕の頭の中に女神さまの言葉が響いた。その声があまりにも申し訳なさそうだったため、一抹の不安が頭を過った。


〈ああ、あなたが心配しているようなことではありません。あのバカ、あなたを殺した奴のことでちょっと〉


 女神さまは僕の考えを読み取ったのか、そう言って話を続ける。良かった。夜刀神家の家族になったのが間違いってことになったらどうしようかと思ったよ。


 え? でも、まって・・・・・・。あのバカって、僕を病気にした人だよね・・・・・・。その人のことって・・・・・・、まさか・・・・・。


〈あの・・・・・・また僕、病気になるんですか?〉

〈いえ、違います〉


 女神さまに『口に出さなくても聞こえます』と言われたので、口には出さずに自分の思った事を訊ねてみた。すると、女神さまはそうきっぱり否定してくれた。


 よ、良かった。夜刀神家の家族になったのに、すぐに病気になったんじゃ意味がないもの。


〈・・・・・・それで何をやったんですか?〉

〈私は夜刀神刃冶の双子の弟として転生させようとしたのですが・・・・・・、妹として転生させてしまったのです〉

〈い、妹・・・・・・?〉

〈はい。本当に申し訳ございません。あのバカにはしかるべき罰を行うので〉

〈いえ、良いんです。女の子の体だけど、健康なら僕は気にしません〉


 僕は慌てて女神さまを止める。そして心の中で笑顔になり言った。

 これは僕の偽りのない気持ちだ。女の子の体になったとしても、僕は僕だもん。それにあの刃冶が僕のお兄ちゃんになるんだ。生前、一人っ子で兄弟が欲しいって思ってた僕にとって、これ以上の喜びはないよ。


〈それは、私が保証します。命に関わる病気は一切しませんので安心してください。でも本当に女の体で良いんですか?〉

〈はい。元気であれば良いんです〉

〈そうですか・・・・・・では、貴女の能力について説明します〉

〈え?〉


 僕は女神さまの言葉に心の中で首を傾げた。


〈あ、言ってませんでしたか? あなたには特別に私から能力を授けました〉

〈え? そうなんですか?〉

〈はい。余計なお世話でしたでしょうか?〉

〈い、いいえ。ちょっと驚いただけで〉

〈そうですか・・・・・・。では能力の説明をしたいのですが、よろしいですか?〉

〈あ、はい。お願いします〉


 能力かぁ・・・・・・。一体、何だろう・・・・・・。


〈まずは完全記憶能力です〉

〈完全記憶能力・・・・・・〉


 えっと、完全記憶能力というのは・・・・・・、嫌なことも忘れることはできないということなのかな・・・・・・?


〈あなたが必要ないと思ったものは忘れることができるので安心してください〉

〈あ、はい〉


 良かった。・・・・・・えっと、『まずは』だから他にも能力があるのかな?


〈次の能力は超能力です〉

〈超能力・・・・・・〉

〈超能力は原則、サイコキネシス(念動力)・サイコメトリー(接触感応)・テレパシー(精神感応)の三つですが、あなたの努力次第では応用技もできるでしょう。なお、サイコメトリーについては、あなたの意思でON、OFFができます〉

〈はい〉


 超能力か。・・・・・・この世界って魔法科学が発達してるから、正直いらないかも。

 あ、でも刃冶は魔法ができなかったよね。ということは僕も魔法ができないかもしれないなぁ。うん、あった方がいいかな、やっぱり。そう言えば、超能力って副作用があるって聞いたことがあるけど、そこんとこはどうなってるんだろう・・・・・・?


〈これらの超能力は副作用とかはありません。実際は使いすぎると眠くなるのですが、今回は特別に副作用は取り除かせていただきました〉

〈あ、ありがとうございます〉


 副作用がない超能力かぁ。これはこれで良かったかも。

 でも、多用はよそう。頼りっきりになるのは危険だもん。いざ超能力が使えない時、困っちゃうからね。


 そう言うと、女神さまは微笑んで頷いてくれた。


〈では祐喜。あなたは今から夜刀神刃冶の双子の妹です〉

〈はい〉

〈・・・・・・この世界で幸あらんことを祈っていますよ〉


 この言葉を最後に女神さまの声は聞こえなくなった。

 僕は天井を見ながら、これからの人生を楽しんでいこうと誓った。

第0話をお読みくださいましてありがとうございます。また、誤字・脱字報告や感想・質問などのコメントをお待ちしております。


なお“魔剣学園”は私の完全オリジナル小説で、二次創作では決してございません。分かってるよ!という方はご容赦を。


Next Title: 入学式



≪タイトル説明≫

“魔剣学園”

祐喜が最も読んでいたライトノベル。

魔法科学が発達した世界の最も権威のある学校、魔剣学園が物語の舞台。主人公は夜刀神家第58代当主候補・夜刀神刃冶。

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