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2人の帰り道。

そうは思っていても、まだ吸われる勇気はないし、

月城くんも元気になってきたので、

俺は家に帰ることにした。


月「こーくん、今日はありがとうね。僕が送って行くよ。もう眠たくないし!」


緋「あ!じゃあ俺も…!」


月「緋美は僕のことおんぶして帰って疲れたでしょ。洗ってあげられなくて悪いけど、先にお風呂入って(血を吸われるの)待ってて?」


うわっ、『先にシャワー浴びてこいよ』ってか!

セリフの破壊力よ……


月城くんに洗われるのを回避出来た上、

この後ラブラブ吸血タイムが待っているとわかった緋美は、ホッとしたような顔で大人しく俺たちを見送った。



まだ日が暮れ始めたばかりだったけれど、帰り道の森はもう薄暗かった。


光「1人で帰れるから、送ってくれなくてよかったのに。月し…静夢が、帰り1人になっちゃう方が心配だよ。」


月「大丈夫だよ!僕、このくらいの時間からの方が元気なんだ。夜目も効くし、心配ないよ!」


月「…それに…」


月「2人になりたかったし…」


光「エッ?」


月「こーくん、」


光「何??」


月「……おんぶして。」


光「はぁ?!」


光「眠くなったの??」


月「…ううん。」


光「あ!まさか、また緋美直伝の血が美味しくなる儀式的な??」


月「いや、緋美は関係なくて…。」


光「じゃあ、何で?」


月「う〜ん…わかんない。あはっ。」


月「……ダメ?」


そう言うと、月城くんは立ち止まった。

振り返ると、潤んだ大きな瞳で、俺をじっと見つめている。


無理やり血を吸おうとしているわけでも無さそうだし、吸血に関しての儀式でもないのなら…

おんぶが気に入ったのかな?

寝てただけなのに?


よくわからない人だな……


でも俺だって、月城くんをおんぶしてる緋美を、実は羨ましいな…って、どこかで感じていたんだ。


重い荷物と傘を持たされていたから──

だけじゃなくて。


何なんだろうな……。


理由なんて、わかんない時もあるよね。

頭で考えるのはよそう。


『そうしたい』と心が動いたなら、

それが全てだ。



光「ダメじゃないよ、ちょっと待ってね。」


俺は背中のリュックを前に掛け直し、空いた背中を見せるよう向き直り、右膝を立てて屈んだ。


月「やったぁ!こーくん、ありがとう!」


言うや否や、月城くんは俺の背中に飛び乗った。

表情こそわからなかったが、その明るい声で、喜んでいる様子が伝わった。


良かった、嬉しそうだな。


俺は真綿のような月城くんをおんぶして、森を抜け、駅までの道を歩き続けた。


重さは殆ど感じないけれど、

背中に月城くんの温もりと、首元にほのかな息づかいを感じる。


月城くん、満足してるのかな?

おんぶして〜なんて我儘言ってきた割には、何も喋んないじゃん。


光「静夢って、軽いね。体重どのくらいなの?」


月「やだっ、乙女に体重聞くなんて!」


光「ははっ、それ自虐?」


光「静夢お嬢さま、俺の乗り心地はいかがでしょうか?」


月「悪くなくて…よ……。」


月「……ハァッ……!」


光「どうしたの!?」


月「ヤバい、こーくんの首筋が近くて……」


月「血も出てないのに、良い匂いする……噛みたくなっちゃってる。ふざけきれない…」


光「えええ!ヤバいヤバい!」


光「下ろしていい??」


月「いやっダメっ!」


月「我慢するから……」


月「噛まないって約束するから、ちょっとだけ、首舐めてもいい?」


光「はっ??なめっ?!」


承諾もしていないのに、月城くんは俺の首筋を、


ペロッ


軽くひと舐めした。


光「あっ……!」


俺のピュアッピュア拗らせメーターがギュイン!と唸り、一点に血を集めた。


これは俺の方がヤバい……!!


それからも、俺の首筋を何度か舐めたり、唇で挟んだりしてきたが、俺は頑張って無言で耐えていた。


でも、俺が何も言わないのをいいことに、



チュッ♡



光「だぁぁぁぁああああ!!」


光「ッツ…!タタタタタ…!」


光「ストップストップ!!」


月「こーくん!どうしたの?痛かった??ごめん!!大丈夫??」


光「痛いのは違う、こっちの話…!」


光「キスしていいなんて言ってない!!」


月「ごめーん、ついつい!」


光「メーターの針、ぶっ飛んじゃうから!首絞めることになるから!」


月「こーくん??」


光「えっとつまりその、静夢のためにならない」


光「……から………」


そう言って振り返ってしまったのは──


失敗だったのか、成功だったのか。


唇が重なりそうなほどの至近距離で、

顔を真っ赤にした月城くんと目が合ってしまって……



えっ、血を吸う側が、こんなに照れる作法って、あったっけ??



驚いた顔で見ていると、月城くんは目を逸らし、

ゆっくり頭を俺の背中に乗せた。


月「なんか、今日の僕、おかしいね。」


月「もう、何もしないから、

  お願い、このまま連れてって……」


光「……うん。」



それから駅までは、お互い言葉を発することはなかった。


駅に着いて、背中から降りた月城くんは、俺が見えなくなるまで、手を振り見送ってくれたけれど、

視線は斜め下に落としたままだった。


いつも変だけど、今日はなんか、変の方向性が違ったような気がするな…。




空にはもう、青白い月が浮かんでいた。






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