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転校生はひなたの子。

転校先の教室で一番最初に目を奪われたのは

透けるように白い肌をした少年だった——。


* * * * *


「神奈川県から来ました。日向野(ひなたの) (こう)です。関東を出たのは初めてなので、色々教えてください。よろしくお願いします。」


俺の親は転勤族で、転校は今回で3度目だ。

別れの涙も乾かないうちに、新しいクラスで明るく自己紹介するのにも慣れた。


特に郊外の学校では転入生が珍しいから、みんなが興味を持ってくれて、友達も作りやすい。


案の定、自己紹介を始めるとクラス中の視線が俺に集まった。



……だけど。



一番後ろの彼だけは、

窓の外をぼんやり眺めたまま、

一度もこちらを見ようとはしない。



なのに、俺の視線だけは、どうしても彼の方へ吸い寄せられてしまう。



綺麗な人だな…



先生「月城の隣が空いてたな。日向野の席はあそこだ。」

先生「月城、日向野にいろいろ教えてやってくれ。」


先生がそう声をかけると、窓の外を見ていた彼が、初めてこちらに視線を向けた。



——月城くん…っていうんだ。



俺は指示された席に座りながら、月城くんに声を掛けた。


光「よろしくね、月城くん。」


月「ああ、ええっと…」


光「日向野だよ。日向野光。よろしく。」


月「ひなたの…!……くん…?」


月「…よろしくね。ええと、鹿児島からだったっけ?」


光「ううん、神奈川。関東から出るのは初めてだよ。」


鹿児島って…。

「か」しかあってないよ…。


やっぱりさっきの自己紹介なんて聞いてなかったんだな。俺に興味なさ過ぎだろ。



月「そうなんだ…。『ひなたの子』…かあ…。」


月「…僕日光が苦手なんだよね。仲良くできるかなぁ、君と。」



光「…えっ?」



先生「じゃあ授業始めるぞー」



今のはどういう意味だ?日光?栃木??


よくわからないけど、俺とあんまり仲良くする気は無いのかな…。


月城くんは授業中も、時折小さくあくびをしながら、ぼんやりと窓を眺めていた。



掴めない人だな…。




——————



午前の授業が終わり、昼休みに入るや否や、



女子「日向野く〜ん!お弁当持って来てる?購買行くなら、場所教えてあげる!」


クラスの女子数人が話しかけてきた。


光「あ、ありがとう。お昼は持ってるから、大丈夫だよ。」


女子「そっか!じゃあ購買がわからなかったらいつでも聞いてね!」


そう言って女子達は隣でワイワイとお弁当を食べ始めた。



俺は月城くんのさっきの言葉が引っかかっていて、一緒にお昼を食べながら話が出来れば…と思っていたが、月城くんは見あたらない。


購買に行ったのかな?

そう思っていた矢先、月城くんが教室に戻って来た。



左手にパックの牛乳を一つ持っている。



そして自分の席に座ると、ストローをくわえ、美味しそうに飲みほした。


光「あれっ、月城くん、お昼それだけ?購買売り切れてたの?」


俺が声を掛けると、


女子「月城くんはいつも牛乳だけなのよ。ね!」


隣でお昼を食べていた女子達が先に答えた。


光「そうなんだ。お腹空かないの?」


再び月城くんに聞くと、

今度は月城くん本人が、


月「…僕ね、すっごい偏食なんだ。」


月「固形物全般無理なの。」


そして、さっき飲み干した牛乳パックを俺の方に向けて、



月「牛乳は好きだよ!」



そう言いながら、パックを上下にカタカタと振ったので、僅かに残った牛乳がストローから飛び散り、俺にかかった。


月「あっ、ごめん!」

 

女子「あはは!月城くん、天然〜!」


女子達が笑い、俺も笑うと、


月城くんも「あはは!」と笑った。



その不意打ちの笑顔の可愛さと、

口元からわずかに見えた鋭い犬歯があまりにもアンバランスで、


俺の心臓は「ドクン」と跳ねた。



光「…あ、ティッシュあるから、大丈夫だよ、牛乳美味しいよね。」



反射的にそう返したものの、頭の中は完全に混乱していた。



…え?あれ何?犬歯?尖り過ぎじゃ…?

ってか、「固形物全般無理」って言ってた?

それって、偏食の度を超してない…??



やっと少し話せたのに、月城くんのことが、ますます分からなくなった。

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