【夢中】子おおかみ1~4②予告編
『不安と平和……』視点:双葉
俺は、母さんと一葉を見ながら呟いた。
「ねぇ、父さん。一葉は母さんに似たのかな?」
二人は、テレビの前で和やかに笑っている。
「そうだね。お前は俺だな。心を読むのは辛くないか?」
父から受け継いだ能力。
昔は、嫌だった。けど、今は……
「くくっ。物凄く楽しい♪」
俺の答えが意外だったのか表情がひきつり、会話が変わる。
「相手は見つかったのか?」
「うん。心の中で、俺を見下す女の子。」
今度は、思考が固まったようだ。
「一葉の相手は、美味しそうな獲物なのにね~。くすくすくす……一葉はバカだね♪」
父さんはそんな俺に「俺に似ていない部分は、お前の個性かな?」と、苦笑い。
「父さん?母さんも一葉も、どうして気がつかないのかな?」
「平和なんだよ……」
二人は、心が読めるのを知らない……
『どSかしら?』視点:蓮美
小学校への道をのんびり歩いていた。
後ろからの声に、現実に戻る。
「蓮美、走らないと遅刻するよ?」
知り合いのお兄さん。中学1年生の麒麟くんです。
「おはようございます。」
私の挨拶に、何故か苦笑い。
あら?何か、心が反応します。ふふっ。何かしら?
考え事をしている私に「おいで、抱っこして走ってあげる。」と、有無を言わせずお姫様抱っこ。
無意識なのかしら?
麒麟くんは私を軽々と抱き、軽やかに走る。
……。
体がうずうずして、首元に噛み付いた。
「……っ?!!」
麒麟くんの足が止まり、私に不思議そうな顔。
「……蓮美?どうして、噛んだの?」
訊かれたことに正直に答えました。
「なんとなく?」
……。
「なんとなく?」
「なんとなく。」
無言で見つめる時間が流れ……学校の鐘が響く……
『鬼畜VSどSですか?』視点:蓮美
口を開いたのは麒麟くん。
何故か、色っぽく感じます。
「……蓮美、いけない子だね。くすくすくす……。男に、そんなことしたら……」
私の体を軽々と、片手で抱き直し……あいた手でお腹に触れた。
【ゾク……】
「くす。ダメよ?隠してるけど、お母さんに似て胸大きいの。ふふ。犯罪よ?私の同意がないと……ね?」
お互いに、同じ何かを感じ取った。
「蓮美、触れたい……逃がさないよ?」
私の額にキスを落とす。心地いい……
「くす。逃げてみるのも楽しいかしら?くすくすくす……」
「じゃ、とりあえず……昔聞いた呪いの物語。契約のキスを君に捧げるね……」
「麒麟……一生の相手……」
道の真ん中……私の唇に、優しいキス。
ゾクゾクする。勝つのは、私……
(末恐ろしいカップル誕生。私の首が絞まる……)
『鬼畜ですよ……』視点:麒麟
任務の途中で、家に帰ったときのこと。
連歌くんの娘で小5の蓮美と契約したと、母に報告した。
「え?麒麟……今、何て?」
母は青ざめる。
「蓮美を、一生の相手に選んでみた。」
俺は冷蔵庫を開け、牛乳をパック越しに飲んだ。
その俺の腕を両手でつかんで揺する。
「待って、あなたは鬼畜なのよ?そんな恐ろしい……連歌は、どS……蓮美も……駄目よ!!」
必死の母に、軽いショックを受ける。
「母さん?俺、やっぱり……鬼畜なの?」
母は、本当のことを言ってしまった……という顔。
畜生!こうなったら、受け入れてやる!
「くすくすくす……いいよ、鬼畜で。蓮美に負けるわけにいかないからね。ふふ……容赦しないよ。」
俺は、遠い目をする。
そんな俺に、母さんは呟いた。
「鬼畜の子は……」
鬼畜……ですか?
『娘ですね……』視点:蓮美
私は、麒麟と付き合うことを父に報告しました。
「え、ヒツジのところの麒麟と?」
ふふ……固まりましたよ。
母さんには強引なのに、私には弱いみたいです。
「はい。解放された呪いのキスを、今日交わしました。」
私の言葉に、落ち込む父の姿がとても可愛い♪
ゾクゾクします。
父は、下を向いて呟きます。
「小鹿似の外見で、俺の性格……相手は鬼畜の子……」
今度は、視線を私に合わせて言いました。
「いいえ、駄目です!ヒツジの鬼畜を受け継いでいるのですよ?麒麟のほうが絶対、上手じゃないか!今なら、呪いから解放されてます。別の相手にしなさい。」
まだです♪
「今なら勝ち目が、あります。くすくすくす……」
父は青ざめ、呟きました。
「ヒツジ……“鬼畜”に対抗できるのは、家の娘かもしれない」と。
『麒麟の任務……』視点:麒麟
俺は、情報系の任務に就いている。
「月……何か?」
上司からの呼び出しがあった。
「問題はありません。収集は、迅速で優秀だ。ですが、あなたの性格は情報系ではない気がします。」
穏やかな上司が、言葉を選ぶ。
「……鬼畜……ですか?」
……。
返事はない。
最近、ショックが大きい。そんなに鬼畜ですか?!
「墨が、後任を捜しています。警備系に移りますか?」
草樹がいるチーム。そのリーダーの一人に、俺が?嬉しいけど……
「……恵……俺を捨てるの?」
悲しい表情の俺に、苦笑い。
「……守るものが出来ましたね?ここでは限界がある……と、俺は思ったのです。」
恵の判断力は、確かだ。
「あなたの相手は一番、警護が必要かと……」
蓮美の情報が頭に浮かぶ。
「魔性の……小学生?」
恵は口を閉ざしたまま……
『最強……』視点:麒麟
俺は、任務で巡回中だった。
のんびり歩く女の子を見つけ、驚いて走り寄る。
「蓮美、傘はどうした?!」
俺に珍しく微笑んで答える。
「いい天気♪梅雨のじめじめした日は、気持ちいい。大粒の雨を体に受けると、幸せ。」
何か、不思議な台詞。
それよりも気になるのは、服が透けて胸が……あぁ、本当に美味しそう。
って、違う!!畜生、何故か負けそうだ。
俺の考えを見透かしたように俺に身を寄せる。
「くすっ。ダメよ?何を想像したのかしら、視線を逸らさないで?」
魔性だ。
汚い!!俺が手を出せない年齢だと知っているんだ。
俺は、制服の上着を被せ抱きかかえる。
「今日は、噛み付いちゃ駄目だよ?容赦しないから。」
「くすす……じゃ、今日は舐めるだけね♪」
鬼畜が最強ではないことを……俺は知る……
『失敗……』視点:麒麟
俺は、任務に使う衣装室に蓮美を連れて行く。
「墨、この子ですか?」
恵が、様子を見に来た。
「はじめまして。」
蓮美が丁寧に挨拶を交わし、最高の笑顔。
「はは、大変ですね。」
苦笑いの恵は、そう言って部屋を出て行った。
……恵?
不思議に思ったが、蓮美の濡れた服の方が気になった。
「蓮美、制服のサイズは?」
麻生学園小等部の、制服棚の前に立つ。
「サイズ?これ、特注なのです。」と、服を脱ぎ始める。
白い肌が見えた。
「なっ……脱ぐな!!」
慌てる俺に、首を傾げた。
ため息が出る。
「蓮美、あんまり煽ると後悔するよ?」
蓮美は一瞬キョトンとし、妖艶に微笑む。
墓穴を掘った……
「くすっ。是非、教えてください。煽ると、どうなるのか。ふふ……知りたいわ。」
上目で見つめる君は、本当に小学生?!
『鬼畜に……』視点:麒麟
「くすっ。いいわよ?双方の合意があれば……ね?」
俺の限界も臨界線ギリギリ……。
俺だって男です!伊達に、鬼畜を目の当たりに生きてきていない。
長いすに座り、色気のある蓮美が俺を誘う。
欲望のままに押し倒し、上に被さる。
肌の色は白く、濡れた服や髪は匂いを放つ。
俺の何かが現れる。
「どこまでOKかな?くすくす……ギリギリまで試す?」
俺は、蓮美の口を掌で押さえ首元に舌を這わす。
「ふっ……ん……」
掌に熱い息がかかり、俺を刺激する。
やばい!言葉に流されないように、口を押さえたのが裏目に出た。
くっ……どこまで俺を惑わすんだ?
もう、このまま欲望のままに……
【ガチャ】
固まる俺の目に、草樹と優貴さん。
目が合った二人は口元の笑みで、静かに扉が閉まる。
俺は、何かを失った気がした……
『シリーズ最後……?』視点:泉麗
「烏鏡ぅ~~。どこ?ここかな?この辺から、匂いがする。くんくん……ん?この部屋かな?」
【ガチッ】
鍵が、かかってる。くす……♪
【カリッカチ……カチャン】
開いた♪
「失礼しま~~……」
薄暗い部屋に、烏鏡が押し倒されてる?!!
「なっ!!鍵……どう……出て行け!」
慌てる相手は、数学の教師……。
俺は怒りでこの後の記憶が飛び、覚えていない。
気がつくと、手には血で……中庭。
隣に烏鏡が、俺にもたれて寝ている。
はぁ……
「烏鏡?ね、起きて……チュウ……するよ?……君が悪いんだからね。」
俺は目を細めて、烏鏡の顔に唇を近づけていく。
【フニ……】
柔らかい手が、俺の唇を押し退ける。
「……嫌い。泉麗、バニラの匂い……甘くて嫌い……」
【ペロッ】
俺は、烏鏡の掌を舐めた。
「ご馳走様♪」
『緊急追加……bad?』視点:采景
「……ん……采景、もっと……」
「……苺愛?」
気を失った彼女を愛しく見つめ、水分を取りに立ち上がる。
台所に立ち、冷蔵庫を開けた。
……そう言えば、苺愛の様子がおかしい。
求めてくれるのは嬉しいが、子どもが欲しいなんて。
いや、二人目がどうと言うわけじゃない。
失うのを恐れるような……まさか……そんな、烏鏡が……?
嫌な予感がする。
次の日……草樹から連絡が来た。
高等部の保健室に入る。
「はじめまして、神成 劾です。私は、未来を見る……先見。」
未来……?
苺愛も、未来を感じる魔女。
「……烏鏡は、死ぬのか?」
声が震える。
「死ぬのは泉麗かもしれない。」
どちらかが死ぬかもしれない……?
「未来が俺にも見えない。……消えるのは、俺の息子かもしれない。」
同じ時期に生れる5人……未来は……




