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⑫‐D【全シリーズ】感謝短編ほか  作者: 邑 紫貴
12.短編かき集め

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【微笑】⑥オオヂカさんと連歌

ちょっと休憩:連歌の感想


「……最初、そんなに純粋だったのですか?」

「うん?ふふ……可愛いよね。今の俺みたいに迫ったんじゃ、振られていたかもね。」

不敵な笑みで、俺を見つめる。

「仰近さん、そこから……どうすれば、あの里鹿さんになるのでしょう?」

「訊きたいんだよね♪良いよ……でも、その前に。」

……?

仰近さんの瞳が光る。

「連歌くん?まさかと思って訊くけど……小鹿が可愛いからって、付き合う前に……手を出したり、していないよね♪」

【ギクッ】

冷たい汗が、背中を流れる。

「ふっ……君の話は、後でゆっくり……聞かせてもらうね?」

目が、笑っていません!!

俺は……とんでもない話に付き合っているのですか??

「俺なんて、付き合った経験もなく……必死で、我慢して……触れるのなんて、段階踏んで……時間もいっぱいかかって……」

仰近さんは、遠い眼をした。

「あの、その……俺も、付き合った経験なくて……でも、その必死は同じ……というか。」

言葉が出ません!!

一生の相手……やっと、本物を見つけて……必死だったのです。

「くくっ……連歌くん、どSには遠いねぇ~~。君の呪いの事も、小鹿の状況も、俺は知っていたんだよ……実は。」

……へ??

きっと、間抜けな顔をしていたでしょう……

「俺、君とは接触ないけど……衆だったんだ。今は、降りたけど……役員は続けているよ。」

情報を知って……俺を……

「おぉ~~い?大丈夫かぁ~~」


「じゃ、娘を奪った男をイジメたし?ふふ……仲良くするために、調教話……聞いていくよね?」

「……はい。」

俺は小鹿が他の奴と付き合っていたころから知っていた。

別れたと聞いて、嬉しくて……手加減なんて、頭になかった。

泣いている小鹿の胸に触れてしまうほど……俺は、自分のことだけを考えていた。

追い詰めて……必死で……




調教転換点 side仰近


里鹿を部屋に呼んだ……ドキドキの空間。

距離を縮めて、そっと触れる唇……

「ね、里鹿……キスって気持ちいい……もう少し、いい?」

見つめる俺に……頬を染めて、うなずく。

何度も優しく触れ、欲求に急かされ唇を強く押し付ける。

閉じきらない目で……俺に視線を向けるのが色っぽい。

「はぁ……制御できないかも……」

俺の戸惑いに、目を閉じた里鹿が自分から唇を重ねてくる。

「私も、気持ちいい……よ。」

小さな声で囁き、目を開く……潤んだ瞳に、吸い込まれるように見つめたまま……

キスは深く、躊躇なく舌を入れた。

感覚を味わっている意識もあるようで、ない……宙を浮いたような定まらない意識。

必死……だった気がする。

床に押し倒し、触れる身体に夢中だった……

「やっ……」

拒絶のような声に反応して、我に返る……

後悔と恐怖を一瞬に味わい……冷たい感覚が俺を襲った。

どんな顔をしていたのか、全く分からない……ただ、里鹿が微笑んだ。

「……恥ずかしいけど、嫌じゃない……拒絶じゃないの。傷ついた顔しないで……ね?もっと……」

それから……俺は、気持ちや感覚を里鹿に伝えるようにした。

それに応えるように、恥ずかしさを伴いながらも……里鹿が口にする。

「舌……入れて?もっと……とろけるような熱を頂戴……」

「溶けそうなのは、俺だ……ね、もっと……もっと、俺を求めて。君だけが、兄貴じゃない俺を見つけた……いつも、それを自覚できるように……」

「触れて……あなたを求めているの。あなたも、私を求める?応えるから……愛情を注いで。頂戴……もっと……」

素直さが可愛くて、初めての恋に……これが普通だと思っていた。

ある時、兄貴が言った。

「お前……何、調教してんの!?」

留守だと思って、イチャイチャした後……聞こえた情事へのコメントだった……




締め括り:連歌の苦笑

side:連歌


「仰近さん……素直に、言葉にすれば良いってものではないと思いますが?」

「ふっ。俺の予想外だよ。初めての恋で、相手を調教なんて……今は、楽しくていいけど。当時は……周りに、可愛い里鹿を見せたくなかったしね。」

目が本気を物語る。

鋭い視線で、俺の様子を見るわけでもないのに……ゾクリとする。


仰近さんから解放されて、フラフラ……寮の自分の部屋に帰る。

鍵を開けて、中に入ると……草樹がテレビをつけて見ている。

「草樹……姫は、どうしたのです?」

「……ひいじいちゃんが、情操教育に悪いって……追い出された。」

落ち込んだ草樹の相手をするには、体力がない……

「采景は、どうしたのです?」

「……采景は、苺愛と喧嘩して機嫌が悪いんだ。首を絞めるのが、いつもより本気だった。」

いつも、本気だと思うのは俺だけでしょうか?

「ふふ……連歌、ここにいるのは俺だけじゃないぞ?」

え?

ニヤリと、テンションを上げて何を言うのかと思えば??

周りを見渡すと、テレビの隅に寝ているヒツジ!?

理由もなく込み上げる怒りに、ヒツジを起こす。

「……この隙間、気持ちい……また来てもいいだろ?」

「良いわけ、あるかぁ~~!!!!」

年上のくせに……

この頃からヒツジが、年下の俺に懐くようになったのです。

ふと、鬼畜仲間かと訊いてみる。

「ヒツジ……麗季は、お前の愛情に応えきれているのですか?」

ヒツジは遠くを見つめるように……

「俺、鬼畜じゃない……なのに、何故……麗季は、泣くんだろ?」

……一体、何をしたのです!?

思わず、訊くのを躊躇します……

「ヒツジは、麗季の弱いところに……ねっちい。」

草樹がテレビを見ながらバニラアイスを口に運んで、呟いた。

ねっちい!?

「てか、草樹……お前、そのアイス!!」

「……ん?大丈夫だって!!これ、3つ目……連歌のところには、予備を置かないって決めてんだ♪」

双子なのに、こいつの頭の中が分かりません!!

「ねっちい?麗季にも言われたな……良いよ、鬼畜じゃないなら。」

……俺の周りは、オカシイ奴ばかりですか!?

「ヒツジは……麗季に、Hな言葉を言わせたりするのですか?」

俺の中で燻っていた疑問が、ポロリ……それに対してヒツジ。

「Hな言葉??麗季は……泣くだけだぞ?だから、疑問なんだ。」

……調教は、鬼畜と無関係でした!!

そんな、どうでも良い情報が欲しかったわけではありません……

ただ、体力を失った俺の部屋で……理解不能な二匹が自由に過ごして帰っていく。

ドSなんて……所詮は、こんなものです。

そんな苦笑の日……携帯が鳴ります。

「もしもし?連歌……その、ね?あの……」

素直になれない小鹿が、可愛いと思ってしまう時点で……仰近さんの言うように甘いのでしょうか?

「小鹿……俺のキスは、感じますか?」

小鹿のかけてきた用事も聞かずに、口走る。

疲れで、思考がまとまらない所為にしましょう……謝ろうとした俺に小鹿が囁く。

「……ん。気持ちいい……よ?好き……求められているのだと、自覚できるから……」

離れたこの場所で、そんな事を言われたら……

俺の気持ちなんて、どこまで理解しているのでしょう??

そんな小悪魔に微笑まれて……俺は、苦笑する……





End


読んでくださり、ありがとうございます!!

更新の期間が過ぎると、こんな中途半端な調教編……

バレンタイン企画の、考えていたストーリーも頭から飛んだので(←え!?)

ヒツジ(羊二)との絡みは【おおかみ女と嘘つきな青年】にて!!

連歌の双子の弟、草樹の恋愛は【天使な束縛】にて♪

(次は【微笑】結婚後でっす!←いっぱい書いてますね。)


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