【微笑】⑥オオヂカさんと連歌
ちょっと休憩:連歌の感想
「……最初、そんなに純粋だったのですか?」
「うん?ふふ……可愛いよね。今の俺みたいに迫ったんじゃ、振られていたかもね。」
不敵な笑みで、俺を見つめる。
「仰近さん、そこから……どうすれば、あの里鹿さんになるのでしょう?」
「訊きたいんだよね♪良いよ……でも、その前に。」
……?
仰近さんの瞳が光る。
「連歌くん?まさかと思って訊くけど……小鹿が可愛いからって、付き合う前に……手を出したり、していないよね♪」
【ギクッ】
冷たい汗が、背中を流れる。
「ふっ……君の話は、後でゆっくり……聞かせてもらうね?」
目が、笑っていません!!
俺は……とんでもない話に付き合っているのですか??
「俺なんて、付き合った経験もなく……必死で、我慢して……触れるのなんて、段階踏んで……時間もいっぱいかかって……」
仰近さんは、遠い眼をした。
「あの、その……俺も、付き合った経験なくて……でも、その必死は同じ……というか。」
言葉が出ません!!
一生の相手……やっと、本物を見つけて……必死だったのです。
「くくっ……連歌くん、どSには遠いねぇ~~。君の呪いの事も、小鹿の状況も、俺は知っていたんだよ……実は。」
……へ??
きっと、間抜けな顔をしていたでしょう……
「俺、君とは接触ないけど……衆だったんだ。今は、降りたけど……役員は続けているよ。」
情報を知って……俺を……
「おぉ~~い?大丈夫かぁ~~」
「じゃ、娘を奪った男をイジメたし?ふふ……仲良くするために、調教話……聞いていくよね?」
「……はい。」
俺は小鹿が他の奴と付き合っていたころから知っていた。
別れたと聞いて、嬉しくて……手加減なんて、頭になかった。
泣いている小鹿の胸に触れてしまうほど……俺は、自分のことだけを考えていた。
追い詰めて……必死で……
調教転換点 side仰近
里鹿を部屋に呼んだ……ドキドキの空間。
距離を縮めて、そっと触れる唇……
「ね、里鹿……キスって気持ちいい……もう少し、いい?」
見つめる俺に……頬を染めて、うなずく。
何度も優しく触れ、欲求に急かされ唇を強く押し付ける。
閉じきらない目で……俺に視線を向けるのが色っぽい。
「はぁ……制御できないかも……」
俺の戸惑いに、目を閉じた里鹿が自分から唇を重ねてくる。
「私も、気持ちいい……よ。」
小さな声で囁き、目を開く……潤んだ瞳に、吸い込まれるように見つめたまま……
キスは深く、躊躇なく舌を入れた。
感覚を味わっている意識もあるようで、ない……宙を浮いたような定まらない意識。
必死……だった気がする。
床に押し倒し、触れる身体に夢中だった……
「やっ……」
拒絶のような声に反応して、我に返る……
後悔と恐怖を一瞬に味わい……冷たい感覚が俺を襲った。
どんな顔をしていたのか、全く分からない……ただ、里鹿が微笑んだ。
「……恥ずかしいけど、嫌じゃない……拒絶じゃないの。傷ついた顔しないで……ね?もっと……」
それから……俺は、気持ちや感覚を里鹿に伝えるようにした。
それに応えるように、恥ずかしさを伴いながらも……里鹿が口にする。
「舌……入れて?もっと……とろけるような熱を頂戴……」
「溶けそうなのは、俺だ……ね、もっと……もっと、俺を求めて。君だけが、兄貴じゃない俺を見つけた……いつも、それを自覚できるように……」
「触れて……あなたを求めているの。あなたも、私を求める?応えるから……愛情を注いで。頂戴……もっと……」
素直さが可愛くて、初めての恋に……これが普通だと思っていた。
ある時、兄貴が言った。
「お前……何、調教してんの!?」
留守だと思って、イチャイチャした後……聞こえた情事へのコメントだった……
締め括り:連歌の苦笑
side:連歌
「仰近さん……素直に、言葉にすれば良いってものではないと思いますが?」
「ふっ。俺の予想外だよ。初めての恋で、相手を調教なんて……今は、楽しくていいけど。当時は……周りに、可愛い里鹿を見せたくなかったしね。」
目が本気を物語る。
鋭い視線で、俺の様子を見るわけでもないのに……ゾクリとする。
仰近さんから解放されて、フラフラ……寮の自分の部屋に帰る。
鍵を開けて、中に入ると……草樹がテレビをつけて見ている。
「草樹……姫は、どうしたのです?」
「……ひいじいちゃんが、情操教育に悪いって……追い出された。」
落ち込んだ草樹の相手をするには、体力がない……
「采景は、どうしたのです?」
「……采景は、苺愛と喧嘩して機嫌が悪いんだ。首を絞めるのが、いつもより本気だった。」
いつも、本気だと思うのは俺だけでしょうか?
「ふふ……連歌、ここにいるのは俺だけじゃないぞ?」
え?
ニヤリと、テンションを上げて何を言うのかと思えば??
周りを見渡すと、テレビの隅に寝ているヒツジ!?
理由もなく込み上げる怒りに、ヒツジを起こす。
「……この隙間、気持ちい……また来てもいいだろ?」
「良いわけ、あるかぁ~~!!!!」
年上のくせに……
この頃からヒツジが、年下の俺に懐くようになったのです。
ふと、鬼畜仲間かと訊いてみる。
「ヒツジ……麗季は、お前の愛情に応えきれているのですか?」
ヒツジは遠くを見つめるように……
「俺、鬼畜じゃない……なのに、何故……麗季は、泣くんだろ?」
……一体、何をしたのです!?
思わず、訊くのを躊躇します……
「ヒツジは、麗季の弱いところに……ねっちい。」
草樹がテレビを見ながらバニラアイスを口に運んで、呟いた。
ねっちい!?
「てか、草樹……お前、そのアイス!!」
「……ん?大丈夫だって!!これ、3つ目……連歌のところには、予備を置かないって決めてんだ♪」
双子なのに、こいつの頭の中が分かりません!!
「ねっちい?麗季にも言われたな……良いよ、鬼畜じゃないなら。」
……俺の周りは、オカシイ奴ばかりですか!?
「ヒツジは……麗季に、Hな言葉を言わせたりするのですか?」
俺の中で燻っていた疑問が、ポロリ……それに対してヒツジ。
「Hな言葉??麗季は……泣くだけだぞ?だから、疑問なんだ。」
……調教は、鬼畜と無関係でした!!
そんな、どうでも良い情報が欲しかったわけではありません……
ただ、体力を失った俺の部屋で……理解不能な二匹が自由に過ごして帰っていく。
ドSなんて……所詮は、こんなものです。
そんな苦笑の日……携帯が鳴ります。
「もしもし?連歌……その、ね?あの……」
素直になれない小鹿が、可愛いと思ってしまう時点で……仰近さんの言うように甘いのでしょうか?
「小鹿……俺のキスは、感じますか?」
小鹿のかけてきた用事も聞かずに、口走る。
疲れで、思考がまとまらない所為にしましょう……謝ろうとした俺に小鹿が囁く。
「……ん。気持ちいい……よ?好き……求められているのだと、自覚できるから……」
離れたこの場所で、そんな事を言われたら……
俺の気持ちなんて、どこまで理解しているのでしょう??
そんな小悪魔に微笑まれて……俺は、苦笑する……
End
読んでくださり、ありがとうございます!!
更新の期間が過ぎると、こんな中途半端な調教編……
バレンタイン企画の、考えていたストーリーも頭から飛んだので(←え!?)
ヒツジ(羊二)との絡みは【おおかみ女と嘘つきな青年】にて!!
連歌の双子の弟、草樹の恋愛は【天使な束縛】にて♪
(次は【微笑】結婚後でっす!←いっぱい書いてますね。)




