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⑫‐D【全シリーズ】感謝短編ほか  作者: 邑 紫貴
12.短編かき集め

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【微笑】③オオヂカが微笑んで

小鹿の父親の話が膨らんだモノ。かなりの膨張あり。

ここに出てくるもく遠矢とおやの側近です。


side:仰近おおぢか


君が笑顔を向けたのは、兄貴……愛しさの瞳……映らない俺。

兄貴には彼女がいる……俺だけを見ればいい。俺の事を意識すればいい。

逃がさない……こんな風にしたのは、君だから。微笑は、君だけに……




居場所


何の変化もない日常……人と関わるのを避け、一匹狼……

「ね、君……生徒会長の弟だよね?」

サボリで、裏庭の木陰……声をかけたのは知らない男。

背の高い私服姿……見たことも記憶にも、ない。

当然、私服だから生徒ではない。先生……なのか?

兄貴を出されると、嫌気がするんだよね……

睨んだ俺に「くふふ。好み♪」と小声で、ニッコリ。

……好み……?

「失礼します!!」

背を向けた俺に、奴は言った。

「ね、役員に興味はない?兄貴の知らない世界……」

知らない世界……あっち??けど、役員って……

足を止め、振り返る。しかし、そこにいたはずの彼の姿はなかった……

役員を生徒会の兄貴が知らない?“俺に”対しての誘い……胸にかかる何か。


「オオシカぁ~!!」

親しくもない奴が俺を呼ぶ。視線を向けて、睨んで無言。

「怒るなよ~。な、オオシカ!!」

近づいて背中をバシバシ叩く馴れ馴れしい奴……距離をとり、一言。

「俺はオオヂカ。仰近だ……」

何度も言った……覚えられないなら……いや、兄貴と同等でないのなら……オオジカでいい。

この居場所が……不安定になる……

「そんなことより、帰りに皆で遊びに行こうぜ!女子が、お前が来るならって……~~……」

またか……俺は、会話の途中で背を向けて歩き出す。

「おぉ~~い!!」

無視して歩き続け、空を見上げる。

……青い……広がる世界。この学園は同じように広い……

俺の居場所を求めながらも、線を引く……

校舎の入り口で、兄貴を見つけた。

生徒に囲まれ、にこやかな笑顔……

ん?道を変え、兄貴から離れた場所……陰に隠れて、頬を染めた女の子。

「……っ!!」

俺に気づき、走り去る。

長い髪が流れ、スカートが揺れる……

【どくっ……ん】

何だ……これ……胸が苦しい。

記憶に留まり、何度も繰り返す……さっきの光景……

駆り立てる何かに、後を追った。

必死で探す……周りを確認し、音を聞き取る。いない……見失った?

誰なんだ……兄貴を見ていた。くそっ……また、兄貴なのか!!

……テにイレタイ……ホシイ……

どうしたら、俺のものになる?

俺を見て……兄貴への視線が欲しい……

願いは、純粋なのか……ただの自己満足なのか……それは、君が教えてくれた……




揺れる


図書室へ行き、学園の生徒名簿を管理する特別な部屋の前に立つ。

厳重なシステム……出来る……

「ふふ。みっけ♪くすす……遠矢には、及ばないか。俺に見つかるようでは、まだまだっ……でも、ないかな?」

急に感じた気配に、とっさに首元を捉え攻撃した。

それは交わされ、俺は反撃の膝蹴りを止めるのに必死。

「見逃せ。俺の私用だ。悪用しない。」

「くすくす……良い目だ。主に似てる……気分が良いから、見逃すね♪でも……5分だよ?」

ストップウォッチを見せ、ボタンを押した。

数字が動き始める……背を向け、ドアにある装置に指を5本のせた。

『暗号を認証しました』

ドアは開いて、俺を招き入れる。

生徒の情報管理システム……機械の電源を入れ、操作する。

画面には、彼女の情報……

俺は、作業を逆転させ部屋を出た。奴の前に行き、ボタンを止める。

「3分55秒、十分じゃね?」

数字を見た奴は、嬉しそうに俺に視線を移して話しかける。

「夢見の通り……推薦に間違いはない。な?役員になれよ♪」

命令形……

「嫌だ。」

「てか、笑えよ。氷の王子様は、ウワサのままか?やりづらいぜ。」

……人の話、聴いているのか??

「面白くもないのに、笑えるかよ。俺は役員には、ならない。どけ……」

彼に背を向けるのは、何度目だろうか……

「微笑は、欲しいものを引き寄せる。……来いよ、待っているからな……」

この言葉を背に受け、彼女の情報を思い返す。

放課後まで、俺の想いを独占していた……

長い髪……サラサラと流れ、揺れる。触れてみたい……

真っ直ぐな髪……指を通して、クシャってしたら……どうなるんだろう?

はぁ……ぞくぞくする。何だか、いけないことをしてしまうような……そんな感覚。

俺……頭、おかしくなったのかな……

いい、こんな俺を知らない。知らなかった俺を見つけ、安堵する……

居場所を見つけた気がするから。

男の俺……欲情も、欲望も……願いも望みも増加している……

否定しないで……俺を受け入れて。目覚めた俺の何か……

これが恋?人への想い……愛情?

見つけた……望んだ居場所……

君は知らない。知ればいい……逃がさない。

兄貴には、彼女がいるんだ……行き場のない想いを、俺に……

アニキのカワリ……頭に過る想いと思い……

『微笑みは、欲しいものを引き寄せる』

知っている……だから、無視したんだ。

氷のように冷たく、誰にも心を許すことなく……

氷の王子?作ったのは、俺だけじゃない……

兄貴に彼女が出来たから、寄ってくる女の子……それを狙ったように利用しようとする男……

手に入れたいのは君だけ。君にだけ、微笑む……

手に入れたい。でも……手に、入れたら……




微笑んで


得た情報で、彼女のクラスへ向かう。

俺の呼び出しに、クラス中の視線を浴びる彼女。

オロオロと挙動不審で……耐えられずに、別のドアから逃げた。

……ユレル……長い髪。逃げる後姿を見つめながら、追いかける。

校舎の端……行き詰った壁に両手をついて、息を切らす後ろ姿。

可愛い……ぞくぞくする。何だ?この……胸にある感情……

追いかけて走ったからじゃない。全速力でもなく……

時間が止まったような感覚の中、理解できない感情を味わった。

「ねぇ、どうして逃げるの?」

【ビクッ】

俺の声に体が動き、少し震えながら。

俺に背を向けたまま……

「お、追いかけて……来るから。」

俺を……見て欲しい……

近づき、手を捕らえて引き寄せる。

「きゃ?!」

長い髪が揺れる。良い匂い……

勢いで、俺の胸に顔が当たる。

「……痛い……」

顔を押さえ、涙目で俺の目線と合う。……見上げる視線に欲情する。

俺の男の部分を刺激するのに……彼女が求めるのは、兄貴なのか?

手に入れたい……俺の自己満足でもいい……

「兄貴には、彼女がいる。忘れろ……」

「どうして、そんなことを言うの?どうして……こんなこと……」

捕らえたままの手を、振り解こうと抵抗する。

苛立ちに、手を服の中に滑らせた。

「やっ!!……嫌……だ」

指を、お腹から胸の下まで移動させた。

「っ!!……ぁ……」

反応が、俺の感覚を狂わせる。

ダメだ……そう思うのに、身体は止まらない。

手は胸を包み込み、唇は首筋を這う……

「好き……だったのに……」

かすれるような小さな声……

え?……スキ……だった……?

思考が止まり、目に入ったのは赤い痕が入った白い肌。

乱れた服から見える肌に、俺から解放された彼女の手が覆う。

黙ったまま、動きが止まった俺を……涙が溢れた目が見つめる。

たくさん零れた頬を伝う涙に、胸が痛む。

「ごめん……」

俺の行動が許せなく、理解できず……想いは複雑に、涙が零れた。

情けない……

「許さなくていい……赦さないで……」

「どうして泣くの?あなたは……私の事……好き?」

【ズキッ】

心が痛む……

【ビクッ】

俺の頬に、優しく触れる手……撫でるように、そっと……

「ごめん。分からない……でも、欲しいと願ったんだ。」

彼女は……俺の事……好き?本当に?

「私の心は、あなたにあった……好き……今は、揺れているわ。どうしていいのか分からない。あなたは手に入れた。私の心……私の恋心……もう、いらない?あなたが気にするお兄さんを、あなただと思って見つめた……あなたを見るより、簡単だから。怖かったの……あなたの感情が見えなくて。心を閉ざしたあなた……もう一度、微笑んで……」

「もう一度……?」

彼女の手が、俺の頬を滑り離れる。

慌てて捕らえた。

自分のとっさの行動に、彼女が微笑む。

「逃げないわ。視線をあなたと一緒にしたいの……起きても良い?」

手を引いて、起き上がらせる。

「……ふふ。くすす……あなたが好き。変わらない想い……あなたは、いらないかな?」

確認するように、もう一度……俺に問う。

「……いる。逃がさないから!」

抱き寄せるが、震えて力が入らない。

「私に微笑んでくれる?」

「あぁ、君だけに微笑む……」


彼女は、兄貴と仲が良かった時……俺の笑顔を見たのだと言う。

いつか、また……微笑むのを見られるのは兄貴と一緒にいる時だと……

周りに囲まれる兄貴を見つけるのは、簡単……

兄貴の惜しみなく注ぐ笑顔が、“俺に”似ていたんだと……


「じゃ、心と共に……イタダキマス!!」

押し倒した俺に、彼女は本気の抵抗……

「ちょ?!待って、まだ!!ダメ!!だって、気持ちが……追いついていないんだからぁ~~!!」

「ん?あぁ、愛情が足りないの?ふふ……愛しているよ……手に入れたんだ。俺のモノ……“俺”を好きな君……里鹿りかに、微笑をあげる。……キス、しても良い?」






読んでくださり、ありがとうございます!!

あ……れ??おかしいなぁ~~もっと、俺様になる予定でしたが……トラウマ男ですか??

遠矢との接点も、あったかも??

小鹿こじかの名前から、浮かんだ短編で現実逃避……

実は、まだまだ続くのですよ(遠い目)


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