【七匹目】②
『じゅうしー』視点:苺愛
「苺愛、このチョコどう?」
「……イチゴの乾燥したのなんか、イチゴと認めない!」
「……イチゴ、好きだから……買ったのに。」
「采景!チョコは、女の子があげるものよ!!」
「くくっ……俺は、チョコを食わなくてもいい。苺愛を喰う。」
「ふふ……味わってくれる?」
(ちょっと内容の違うのがバレンタイン企画に掲載されています♪)
『綺麗な顔が好きですか?』視点:采景
廊下を歩き、苺愛のクラスへ。
すると、俺だけの特別な笑顔を見知らぬ男に向けていた。
意識は飛んで、気が付いたら殴っていた。
気絶した男の胸座を掴んだまま、苺愛に視線を移す。
「……な、何をするの??」
だと?しかも、珍しい叫び声……
【ムカッ!!】コイツの味方をするのか?
「苺愛、キスしろよ。」
俺の手には、重い荷物があるまま……
「へ?」
「キ・ス!舌は入れろよ?俺は、屈まない……さ、早くしろ。しないと、コイツ……手加減しないよ?」
「……バカっ!!その人が、采景の写真をくれたのよ!」
……は?俺の写真??
「ほら、綺麗♪むふふ……くふふ……その人ね、采景の顔を褒めてたよ?」
だから、笑顔……?待て、落ち着け……
「俺に無断かよ!!」
屍を廊下に放置して、苺愛を抱える。
「采景?」
「何だよ!」
「くすっ……何でもない。大好きよ……」
「愛してるって、体に刻んでやるよ。」
紫貴のお礼……すみません。俺様でしょうか??嫉妬つながりに出来るかと、こんな短編です。
いいのかな??“おおかみ投票”に、ありがとうございました!!
タイトル『ふぁみこん』Side:采景・登場人物:苺愛・時期:高校生
「苺愛、いい加減に機嫌を直せよ!」
数日前から、機嫌が悪い。
大抵は、次の日には仲直り……ってか、俺の謝罪で許してくれるのに。
今回は、何が原因なんだ??
好きな苺のパンやケーキでも機嫌は直らない……何が不満なんだよ。
他人なんか気にしない兄貴やオヤジに憧れ、大人ぶった俺を崩したのは苺愛……
我儘に思ったことを伝えて欲しいと言ったけど、微妙に違うんだよな。
考えるのが面倒になってきた。どうせ、泣かれるのが変わらないなら引いてみるか。
「苺愛、もう知らねぇ。俺は謝ったからな!」
顔を背け、予想通りの涙……声を殺して泣く……
甘いよなぁ~俺。苺愛を抱き寄せ、顔をすり寄せた。
抵抗はないけど、顔を背けて目線を合わせようとしない。
「苺愛、泣かれると困る。前にも言ったよな?言葉に出して欲しい……思ったことを知りたい。それは、他の誰にも願わない。お前だけだ……」
首元にキスを落とし……顔を上げると、苺愛と視線が合った。
ホッとする。
「嘘つき!采景のふぁみこん!!」
ふぁみこんって古いゲームのハードだっけ??不思議な言葉に、眉間にシワ……
「うっ……ファザコン・マザコン・シスコン・ブラコン……ふぁみこんだよ。私の事、二の次!」
面倒臭い内容だな。
「ウソじゃないぜ?俺は家族に憧れを抱くが、動機を知ってまで理解しようとしたりはしなかった。」
今度は、苺愛が不思議そうな顔。
何だ?恋愛が分からなくなる瞬間だ。他人だけど、深く知りたいと願う……
「苺愛、いつかはさ……お前も、家族だぞ?俺の嫁……くくっ。イヤだと言っても、逃がすつもりはない。」
家族は好きだけど、俺自身の全てをさらけ出すことをしなかった。
苺愛にだけ……特別なんだけどな……
「好きだ」
俺に全開の笑顔の後、見たことのない量の涙を流し始めた。
げげっ!?何で、そうなるわけ??
面倒臭さも、どこへ行ったのか……焦りが俺を急かす。
今までに俺の知らなかった自分……苺愛を抱き寄せ、頭を何度も撫でる。
「ごめん、ごめんって……泣きやめよ。俺が困んだろ、苺愛……頼むから……」
俺の困惑に、やはり涙の笑顔。
「くすっ。ふふ……ふぁみこんね……私の好きになった采景と違うわ。なのに、愛しさが甘くて切ない。」
苺愛からの唇への軽いキス……
何だか、怒りとは違う苛立ち。自分の情けなさを、見たくなくて……そこが良いと言う苺愛。
「くそっ……苺愛、黙れ……その唇を塞いで、舌を突っ込むぞ?」
苺愛は目を閉じて俺を待つ……
いつか……言葉にしなくても、すべてを理解しあえるようになるだろうか?
情報が足りない。触れて温もりを感じ、喧嘩をして疑問をぶつける……
ふぁみこんか。俺は家族の中で過ごしながらも……どれほどの事を知っているだろう?
呪いに対して、家族がそれぞれした苦闘……詳細は知らない。
俺が全てを語っていないのと同様……
「苺愛……もっと感情を見せて。思った事や考え方……感じたことを全て、包み隠さずに言葉にして欲しい。」
「……ふふ。あなたは、もっと自己中心的だと思っていたわ。」
俺の成長と変化……苺愛の中にもあるなら、それに気づける自分でいたい。
十分に自己中。
「ふっ。俺はふぁみこんだろ?」
甘い時間を味わい共に、これからも……
タイトル『視線』Side:苺愛・登場人物:采景
采景の私を見つめる目が特別なのを知っている。
優しさの伴う視線が苦しい。
男子生徒の視線も奪うほどの外見……そんな周りの視線に、煩わしさを露わにした不機嫌な態度。
それを見ても、流し目の優美な姿と勘違いする人が多数。
「苺愛?また、機嫌が悪いのか……いい加減にしてくれよ。最近、多いけど……俺さ、苺愛が思ったことを言って欲しいんだけど。」
顔を背け、視線も合わせない我儘な私の機嫌をとろうとする采景。
「ふぅ、機嫌が良くなるか分からね~けど……手に入ったコレ……なんだと思う?」
視線をチラリ。目に入ったのは赤い大きな粒……
思わず二度見で、視線は釘づけ。
「な、何……この大きなイチゴ!」
私のテンションに、見たことのない笑みを見せる采景。
私の唇に大きな苺を当て、満足そうな顔。何だか、悔しい気がする。
プニプニと唇を突いて、甘い声。
「高級特大いちごだ。ほら、美味しいぞ?」
【カプッ】噛んだところから、ジューシーで甘い味と香り。
大きい粒で、噛み切ってしまうと落としそうだ。
采景は、顔を近づけて手を離し、苺の反対側に噛みついた。
どんどん食べ尽くしていく。
食べる様子が、綺麗と言うより男の色気で満ち、自分まで食べられてしまいそうな勢い。
モグモグ、ゴクン……最初の一口を必死で噛んで呑み込んだ。
「あ~喰っちまったのかよ。苺愛……」
ほとんど食べ尽くしたのは采景だけど?
意味が分からない。私に持って来たんじゃなかったの?
私に、采景が不機嫌な顔。
それに苛立ち、視線を逸らして頬を膨らせて口も閉ざした。
「……ちっ。苺愛……俺を見ろよ。」
指を私の首から顎に滑らせて、逸らした顔を向けさせようとする。
「いや。」
首を上げて、采景の指を避けた。
「苺愛、いい加減にしろよ。なぁ……俺を見ないのは、どうしてなんだ?」
声から悲しみが読み取れ、胸が痛んで視線を向ける。
采景は、自分を見ろと言ったのに……
いつもの自信に満ちた雰囲気も無く、下を向いてため息を吐いた。
何だか、小さく見え……消えてしまいそう。彼を傷つけたのは私。
「采景の目に映るのが怖い。」
私の言葉に采景の体が反応して、ゆっくり顔を上げた。
「……何だ、それ……」
あ、違う。言葉を省き過ぎて言いたいことが伝わっていない。
「采景、待って!違う、聞いて……お願い、聞きたいと言ったのはあなたよね?私の本当に伝えたい言葉を……お願い、聞いて欲しいの。」
目を合わせ、彼の瞳が私を映す。そう、これ……
「あなたに見つめられると、采景への愛しさに溺れてしまいそうになる……。他の人も、私と同様……あなたを見つめる。でも、あなたが特別に見るのは……私なのだと……自惚れながらも、失う事が頭を過る。言葉に出来ない、どう伝えて良いのか分からない。ね、どれほど伝わる?ちゃんと伝わっているかな?采景……」
一気に言葉を吐き出し、情けなくて涙が出そうになる。
采景は手を伸ばし、私の頬を撫でて微笑む。視線を向け、じっと見つめたまま。
「うん、伝わる。……ふっ。ははは……ヤベ、嬉し過ぎて泣きそうだ。かっこ悪ぃ……見ないでくれ。」
見て欲しいと言ったり、見ないで欲しいとか……。
采景の手に頬をすり寄せ、笑みがもれた。
机に置かれた苺を手に取り、自分の口に運ぶ。
「采景、苺……美味しいね。ありがとう……一緒に味わう?」
大きな粒を口に挟み、目を細めて誘ってみた。
「目を逸らすなよ、俺にはお前だけ……一生に一人……俺の目に映る唯一。」
苺を二人で食べながら、視線を合わせて二人の時間……
もっと、知って欲しい。見つめて、お願い……




