【君は】
【君は】タイトル『優位に』
side:優貴・登場人物:綾(伏せます)
待ち合わせ場所に向かうと、俺の姿を見た綾が何かを隠した。
「綾、今……何を見ていたの?」
「え、別に?」
明らかに挙動不審。
小学生とはいえ、ファンクラブまであり……俺は日々、そいつらと闘っている。
暇を見つけては鍛えているほどだ。
苛立つ嫉妬心……身を寄せて、隠したポケットに手を伸ばす。
密着した身体は柔らかく、良い匂いがする。けど“今は”騙されないぞ!
「別に見られてもいい物だよね?」
綾は頑なに、ポケットを押さえながら抵抗。
「綾?オイタはイケナイね……俺、機嫌を損ねちゃうよ。」
久々の優位……最近は小学生の綾に振り回されていたので、新鮮な気分。
イヤイヤと、顔を真っ赤に涙目で訴える。
そんなに見られたくない物なのか!?俺も見たくて、意地になってしまう。
顔を近づけ、強引なキスをした。
綾の抵抗が緩んだすきに、ポケットの中身を奪い取る。
綾の届かない位置で確認すると、それは柔道着で汗だくの俺……明らかな隠し撮り。
視線を綾に戻すと、悔しそうに睨む。
「綾、これ……買ったの?」
いくら俺でも、綾が写真を撮っていれば気付く……需要なんか分からないけど、買った物だろう。
俺は、笑顔になってしまった。
恥ずかしさなのか、油断した俺の手から写真を奪い返して、その手に噛みついた。
「痛っ……ちょ、マジ噛み!?」
歯形が、くっきり付くような強さ。噛んだまま鋭い視線……
怒っているんだろうけど、俺は悪くないよね??
今回……嵐じゃないけど、綾を追い詰めるのはゾクゾクするなぁ。
このまま、意地悪したら……綾は、どんな表情を見せるんだろう?
年相応の態度と戸惑いや迷い……さらけ出して欲しい。
「綾……俺に隠し事をした方が悪いと思わない?ね、『ごめんなさい』は……出来るかな?」
年の差を気にする綾にとって、子供扱いはダメだと分かっている。
俺も後で『ごめんなさい』するつもり。
ただ……今は、手に感じる痛みと舌や熱い息に駆り立てられる欲望へ偏り傾向。
自分が冷静なのか、もう……狂った状態なのかさえ曖昧。
愛しさと激しい感情が入り混じる。
綾は眉間にシワで、フルフルと震え……手を解放……
綾の熱が逃げるのが惜しくて、歯形に舌を這わす。
息があがる……冷静だとは言えないよな。
綾は口をキュッと閉じ、俺を睨んだまま涙を零す。
呑み込んだ言葉は『子ども扱いしないで』
言えない悲しみの表情……
「綾、ごめん……君の大人な表情に、俺は自分を失う。キスしてもいい?」
ボロボロと涙を零した目を閉じ、俺を待つ。
優しいキスを繰り返し、涙を拭って味わう君の存在……
俺は、常に優位にいたのだと理解して……年下の、小学生の君を捕らえて満足しているんだ。
本当は、捕らえているのか……君に囚われているのか……
「写真じゃない乱れた俺を、いつでも見せてあげる。」
「ふふ……小学生相手に?」
意地悪だね……我慢するよ、今は……
タイトル『反抗期』
Side:優貴・登場人物:綾(伏せます)
高校生になった綾は、素直さがなくなったような気がする。
「最近さ、綾から好きって言葉を聞いてない。」
休日、俺の部屋に遊びに来た綾を抱き寄せて首元に舌を這わせる。
耳元で囁く俺に、流し目で返事。
「優貴は、私の事……好き?」
質問返しって卑怯だ。負けないぞ。
「ふっ。綾が言ってくれたら、答えるよ?」
手をお腹と胸に移動させながら、余裕な振り。
綾の目は冷たく、俺の手を払う様に叩く。
痛い。ご立腹か?
「触らせてもくれないのなら、外に出る?」
任務関係で一緒の行動も多く、外でイチャイチャするのも平気。
綾は久々の甘い時間を、どう過ごしたいのか気になる。
床に手を付いて立ち上がろうとする俺に、綾は抱き着いてきた。
本当に、素直じゃないよね。大人の女になるって……ちょっと面倒だな。
ため息を吐きながら、綾の髪を頬から耳に掛けるように撫でる。
「触らないで!」
うあぁ~、自分から触るのはOKで俺からは駄目なの?
「……めんどくせっ。」
小さく漏れた本音に、冷や汗。
綾の抱きしめる腕に力が入って、反応のあったのが伝わった。
不機嫌だろうな、コレ……
ん?綾は、俺の胸に顔をうずめて無言。震えに気づき、泣いているのだと理解する。
「綾……好きだよ、愛している。」
焦って、言葉を掛けた。
「……っ。……ふっ……く。」
泣いているのを、必死で見られないように……腕の力が更に強まる。
大人の女じゃないか……まだ、高校生。
年の差を気にする彼女にとって、俺の一言は同年代と比較されたとしか受け取れないんだろうな。
「ね、綾……俺は、好きだと言ったけど?綾は、言ってくれないわけ?」
顔をすり寄せ、涙を拭っているのか服が冷たい。
胸が痛む。
「綾~?」
後頭部から首に手を滑らせて、背中を撫でる。
「ぐすっ……触るなって、言って……でしょ。」
可愛いなぁ、ちくしょうぅ~~。
「くすくすっ、泣いてるの?」
意地悪心に火が付いた。
「泣いてない!」
意地っ張りな綾は、涙でぐしゃぐしゃの顔を上げる。
「うん?これは、何かな~?くすくすくす……ふふっ。もっと、俺の胸で泣く?」
目元にキスをして、頬まで舐めとる。
「……んっ、ヤダ……」
弱い抵抗に、征服欲が煽られる。
「綾、言えよ……俺の事、好きだろ?」
床に押し倒し、抵抗する両手を捕らえて見下ろした。
「……いや、言わない……」
綾は顔を背け、涙を堪えて口をギュッと閉ざす。
「くくっ。愛しさに狂いそうだよ……言えって、ほら……泣き顔も見せて?」
首元に舌を這わせた。
「……はっ……はぁ。」
綾の喉元を通る息遣いを感じて、体が熱くなる。
「あんまり、素直じゃないと……酷くしちゃうよ?」
首元に噛みつき、いつもより力が加わる。
「痛……んん……あっ、ダメ……」
噛み痕を舐めとり、片手を胸に移動させる。
自由になった綾の手は俺を押し退けようとするが、力が入っていない。
「最後ね?」
逸らした頬から、唇まで口づけしていく。
綾の涙目が、俺の視線に絡む。
「……好き……過ぎて辛い。嫌い……よ。」
可愛げのない告白に、嬉しさの笑みがもれて、満たされる心。
「ふはっ。キス、してもいい?」
優しく体を抱き寄せ、身を起こす。
「……ダメ、涙が止まるまでは……慰めて、優しく撫でて欲しい。」
上目のお願い……
自分の感覚で愛撫する。
「ちょ、慰めてって……違うんだから!」
本気の抵抗に、口もとが緩んで……
「綾、反抗期には調教がいるよね?さ、俺の声に耳を傾けて……身を任せてみようか。」
俺の余裕に、綾の睨んだ視線。
ゾクゾクする……癖になりそうだ。
何度も繰り返す。年の差と感覚の違いで喧嘩を繰り返し……
深まる情愛……




