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⑫‐D【全シリーズ】感謝短編ほか  作者: 邑 紫貴
12.短編かき集め

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【君は】

【君は】タイトル『優位に』

side:優貴ゆうき・登場人物:綾(伏せます)


待ち合わせ場所に向かうと、俺の姿を見た綾が何かを隠した。

「綾、今……何を見ていたの?」

「え、別に?」

明らかに挙動不審。

小学生とはいえ、ファンクラブまであり……俺は日々、そいつらと闘っている。

暇を見つけては鍛えているほどだ。

苛立つ嫉妬心……身を寄せて、隠したポケットに手を伸ばす。

密着した身体は柔らかく、良い匂いがする。けど“今は”騙されないぞ!

「別に見られてもいい物だよね?」

綾は頑なに、ポケットを押さえながら抵抗。

「綾?オイタはイケナイね……俺、機嫌を損ねちゃうよ。」

久々の優位……最近は小学生の綾に振り回されていたので、新鮮な気分。

イヤイヤと、顔を真っ赤に涙目で訴える。

そんなに見られたくない物なのか!?俺も見たくて、意地になってしまう。

顔を近づけ、強引なキスをした。

綾の抵抗が緩んだすきに、ポケットの中身を奪い取る。

綾の届かない位置で確認すると、それは柔道着で汗だくの俺……明らかな隠し撮り。

視線を綾に戻すと、悔しそうに睨む。

「綾、これ……買ったの?」

いくら俺でも、綾が写真を撮っていれば気付く……需要なんか分からないけど、買った物だろう。

俺は、笑顔になってしまった。

恥ずかしさなのか、油断した俺の手から写真を奪い返して、その手に噛みついた。

「痛っ……ちょ、マジ噛み!?」

歯形が、くっきり付くような強さ。噛んだまま鋭い視線……

怒っているんだろうけど、俺は悪くないよね??

今回……嵐じゃないけど、綾を追い詰めるのはゾクゾクするなぁ。

このまま、意地悪したら……綾は、どんな表情を見せるんだろう?

年相応の態度と戸惑いや迷い……さらけ出して欲しい。

「綾……俺に隠し事をした方が悪いと思わない?ね、『ごめんなさい』は……出来るかな?」

年の差を気にする綾にとって、子供扱いはダメだと分かっている。

俺も後で『ごめんなさい』するつもり。

ただ……今は、手に感じる痛みと舌や熱い息に駆り立てられる欲望へ偏り傾向。

自分が冷静なのか、もう……狂った状態なのかさえ曖昧。

愛しさと激しい感情が入り混じる。

綾は眉間にシワで、フルフルと震え……手を解放……

綾の熱が逃げるのが惜しくて、歯形に舌を這わす。

息があがる……冷静だとは言えないよな。

綾は口をキュッと閉じ、俺を睨んだまま涙を零す。

呑み込んだ言葉は『子ども扱いしないで』

言えない悲しみの表情……

「綾、ごめん……君の大人な表情に、俺は自分を失う。キスしてもいい?」

ボロボロと涙を零した目を閉じ、俺を待つ。

優しいキスを繰り返し、涙を拭って味わう君の存在……

俺は、常に優位にいたのだと理解して……年下の、小学生の君を捕らえて満足しているんだ。

本当は、捕らえているのか……君に囚われているのか……

「写真じゃない乱れた俺を、いつでも見せてあげる。」

「ふふ……小学生相手に?」

意地悪だね……我慢するよ、今は……




タイトル『反抗期』

Side:優貴ゆうき・登場人物:綾(伏せます)


高校生になった綾は、素直さがなくなったような気がする。

「最近さ、綾から好きって言葉を聞いてない。」

休日、俺の部屋に遊びに来た綾を抱き寄せて首元に舌を這わせる。

耳元で囁く俺に、流し目で返事。

「優貴は、私の事……好き?」

質問返しって卑怯だ。負けないぞ。

「ふっ。綾が言ってくれたら、答えるよ?」

手をお腹と胸に移動させながら、余裕な振り。

綾の目は冷たく、俺の手を払う様に叩く。

痛い。ご立腹か?

「触らせてもくれないのなら、外に出る?」

任務関係で一緒の行動も多く、外でイチャイチャするのも平気。

綾は久々の甘い時間を、どう過ごしたいのか気になる。

床に手を付いて立ち上がろうとする俺に、綾は抱き着いてきた。

本当に、素直じゃないよね。大人の女になるって……ちょっと面倒だな。

ため息を吐きながら、綾の髪を頬から耳に掛けるように撫でる。

「触らないで!」

うあぁ~、自分から触るのはOKで俺からは駄目なの?

「……めんどくせっ。」

小さく漏れた本音に、冷や汗。

綾の抱きしめる腕に力が入って、反応のあったのが伝わった。

不機嫌だろうな、コレ……

ん?綾は、俺の胸に顔をうずめて無言。震えに気づき、泣いているのだと理解する。

「綾……好きだよ、愛している。」

焦って、言葉を掛けた。

「……っ。……ふっ……く。」

泣いているのを、必死で見られないように……腕の力が更に強まる。

大人の女じゃないか……まだ、高校生。

年の差を気にする彼女にとって、俺の一言は同年代と比較されたとしか受け取れないんだろうな。

「ね、綾……俺は、好きだと言ったけど?綾は、言ってくれないわけ?」

顔をすり寄せ、涙を拭っているのか服が冷たい。

胸が痛む。

「綾~?」

後頭部から首に手を滑らせて、背中を撫でる。

「ぐすっ……触るなって、言って……でしょ。」

可愛いなぁ、ちくしょうぅ~~。

「くすくすっ、泣いてるの?」

意地悪心に火が付いた。

「泣いてない!」

意地っ張りな綾は、涙でぐしゃぐしゃの顔を上げる。

「うん?これは、何かな~?くすくすくす……ふふっ。もっと、俺の胸で泣く?」

目元にキスをして、頬まで舐めとる。

「……んっ、ヤダ……」

弱い抵抗に、征服欲が煽られる。

「綾、言えよ……俺の事、好きだろ?」

床に押し倒し、抵抗する両手を捕らえて見下ろした。

「……いや、言わない……」

綾は顔を背け、涙を堪えて口をギュッと閉ざす。

「くくっ。愛しさに狂いそうだよ……言えって、ほら……泣き顔も見せて?」

首元に舌を這わせた。

「……はっ……はぁ。」

綾の喉元を通る息遣いを感じて、体が熱くなる。

「あんまり、素直じゃないと……酷くしちゃうよ?」

首元に噛みつき、いつもより力が加わる。

「痛……んん……あっ、ダメ……」

噛み痕を舐めとり、片手を胸に移動させる。

自由になった綾の手は俺を押し退けようとするが、力が入っていない。

「最後ね?」

逸らした頬から、唇まで口づけしていく。

綾の涙目が、俺の視線に絡む。

「……好き……過ぎて辛い。嫌い……よ。」

可愛げのない告白に、嬉しさの笑みがもれて、満たされる心。

「ふはっ。キス、してもいい?」

優しく体を抱き寄せ、身を起こす。

「……ダメ、涙が止まるまでは……慰めて、優しく撫でて欲しい。」

上目のお願い……

自分の感覚で愛撫する。

「ちょ、慰めてって……違うんだから!」

本気の抵抗に、口もとが緩んで……

「綾、反抗期には調教がいるよね?さ、俺の声に耳を傾けて……身を任せてみようか。」

俺の余裕に、綾の睨んだ視線。

ゾクゾクする……癖になりそうだ。

何度も繰り返す。年の差と感覚の違いで喧嘩を繰り返し……

深まる情愛……






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