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⑫‐D【全シリーズ】感謝短編ほか  作者: 邑 紫貴
8.おおかみ達の夜は甘く♪(バレンタイン企画)

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①バレンタイン企画‘11(短編)


【情報屋】

めぐむいばら


「ね、恵?」

「荊、任務は終わったの?……こっちに来て。」

結南の制服姿で、冬北にいると目立つような気がして周りを見てしまう。

慌てて、木陰に手を引いて移動した。

荊は、視線を落としたまま……

「どうしたの?体調が悪い??」

俺の声に、身体が固まる。

え?何だ??……別れとか……??

「あの、その……うっ……」

顔を上げたと思ったら、涙を零し……俺に抱き着いた。

ええぇ~~??何?何、何なの??どうすればいい??

「荊、何があったのか教えて?どうしていいか、分からないよ?」

混乱しながら、荊を抱き寄せ……頭を撫でる。

「ぐすっ……どうしても、無理。」

無理?今日の任務は、そんなにハードでは……

「恵……嫌わないで。」

「嫌わないよ。無理なら、しなくていい。荊が嫌なら、俺……他に頼むし……」

「うあぁ~~ん!!酷い!浮気者~~!!」

浮気……者……!?!!?

「酷いよ……他の子に、そんなおねだりするなんて!不潔ぅ~~!!」

おねだり??不潔????

「あの、荊。落ち着いて?俺が好きなのは荊だけだよ。」

「うぅ……嘘だぁ~~。」

酷いや……

「話が見えないんだ。どうしたのか、ちゃんと教えてよ。」

荊は、涙を浮かべ俺を見つめる。

「だって、今日はバレンタインでしょう?」

チョコを期待していたけど、荊の様子がおかしかったから……もらえないかと思った。

チョコと関係が??

「うん。俺は、任務の話をしていると思ったけど?」

「任務は、夏希君が片づけてたの。」

「夏希……?まさか?!ちょ、待って……」

携帯で、敬一に連絡をする。

出た途端、夏希の闇討ちで救急車を呼んだと聞かされた。

「……あぁ、後を頼む。」

「でね、夏希君が……去年と同じじゃ、ダメだって……ぐすっ……でも、そんな大胆な事……出来ないよぅ~~!!!!」

……夏希、何を??

「荊、チョコは持ってる?」

「うん。普通のだよ?」

……顔が引きつってしまう。

「大丈夫、それを頂戴。一緒に食べよう?」

「本当に、しなくていいの??」

……何を吹き込んだのか、気になるけど……聞くのが怖い。

「荊、今年は俺がキスをしても良いかな?」

「うん……良いよ。甘いのを頂戴……」

口にチョコをはさみ、荊の口に運ぶ。

荊の熱で溶けるチョコは、去年よりも甘い……



【花冠】

凌子りょうこたける


武の家に、お邪魔する。

「ふふ。今日は、母さん……飲み会で遅いんだ。」

頬を染め、嬉しそうに笑う。

そんな武が愛しい♪

「イチャイチャ、出来る?」

「へへっ!出来る♪てか、邪魔者は励二のところ?」

「うん。昨日から、出張先に追いかけて行ったわ。邪魔は入らないよ?」

武に、甘えるようにすり寄る。

「良い匂いがする。」

「ん?チョコ、手作りしたからかな。匂いが付いてる?」

「甘い香り……ね、味わっても良い?」

「まだダメ。先に、チョコを食べて?」

「……じゃ、キスしても良い?我慢が出来ないよ……」

「チョコが先♪」

「……何で?いつもと違う……」

「ふふふ……くすすっ……焦らしてるの♪」

「酷いよ。邪魔が入って、俺……いつも我慢してるだろ?」

「……怖いのよ?本当は……」

何度も触れる少しの抱擁じゃない……今日は……

「あ……そっか……へへ?ごめんな……優しくする。チョコ、先に食べる!!」

顔を真っ赤に、チョコを受け取り……包みを開けた。

「美味そう♪戴きます!!」

チョコを口に入れ、モグモグ。

武は私から離れてベッドに座り、チョコの箱を自分の横に置く。

立ったままの私に微笑んで、二粒目を口に入れた。

無意識で、そこに座ったんだ……

「美味しい?」

「うん、うまひ……」

次の一粒を、口に入れた。

鈍いところがあるよね……武。

「頂戴?」

膝に手を載せ、片手を頬に当てる。

唇を重ね、口に入ったチョコを奪う。

「凌子……?」

「ね、私も……甘いかな?」

武の唇についたチョコをペロリ。そして、自分の唇を舐める。

武の眼が、真剣で……いつもと違う熱い視線。

「甘いか……食べても良い?」

膝に乗せた手を引かれ、腰に腕が回る。

ドキドキして身体が熱い。

この熱は、私?それとも……

「凌子、好き。良い匂いだ……イタダキマス♪」



【君は】

優貴ゆうき・綾(伏せます)


相手は小学生……どこまで、OKなのかな?

ずっと、頭にあるのはそんなこと……

「優貴!ごめんね、待った?」

小学生にしては、高めの背……普段着で出かけると、年の差に違和感はない。

「いや、ボスに呼ばれていたから。新体操は、お休みなの?」

「うぅん、お休みしちゃった♪」

任務に巻き込まれ、共に過ごす時間が増え……膨らむ欲望。

「どこか、行きたいところはある?」

「あ……」

どこかに思い当たり、口を閉ざした。

「どこ?」

問う俺から、視線を逸らす。

「……太西高校。制服デートがしたい。」

小さな声……

【ズキッ】

可愛いお願いに胸が痛むのは、年の差を気にした綾の想いが伝わるから。

「じゃ、待っているから。更衣室に、行っておいで……制服デートしよう?」

視線を少し、俺に向け……微妙な笑顔。

手を綾の頬に当てる。

綾は甘えるように、俺の手に頬の柔らかさと温もりを伝える。

【きゅぅ~~ん】

可愛い……愛しさに、望むまま触れたい。俺の思いのまま……

もう片手で綾の腰に触れ、引き寄せる。

流し目で、顔を逸らしたままの綾。頬にキスを落とす。

反応して目を閉じた綾の力が抜け、俺の手に動かされるまま……

顔が正面に向く。綾は一度 目を開け、俺を見つめる。

「綾……好きだ。年の差は、気にしない。君は、気になる……よね?」

「今の一時を、大事にしたい……」

綾の目に、涙が溜まる。

「うん。一分も無駄にしたくない……」

顔を近づける俺に、受け入れる視線。

閉じ気味に、ギリギリまで閉じることのない目を見つめながら。

君に囚われる……溺れるような感覚……

重ねる唇は、冷たい??

目を見開いて、唇を離す。

綾は目を細め、唇に小さな板チョコを当てていた。

「チョコ……あ、バレンタイン??」

驚いた俺に、綾も驚いた顔。

「優貴、他の子からチョコもらっていないの?」

「あぁ、太西はチョコ禁止だから。今日は、任務にも行ったし……。」

俺がもらっていないことが、そんなに嬉しいのか最高の笑顔。

「食べて?キスを頂戴……私に、甘さを与えて……」

俺の口にチョコを入れ、頬に手を当ててキスをする。

甘い……一時も、無駄じゃない。

キスを受けるのも、キスをするのも……君とだけ。

分かつ甘さは、チョコだけじゃない……君は、本当に小学生?

気にならない……気にしない。したくない……

貪欲な俺が、汚す……

「綾……好きだ。もっと、甘さを頂戴……君も、味わって……」

溶けるチョコ……甘い香りに誘われるままに……




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