第4話:「破滅の連鎖」
朝の光は、昨日までの悲劇をまるで無かったかのように優しく差し込む。
だが、シエラにはその光さえも、冷たく感じられた。
リュカの死。
アナスタシアの裏切り。
すべては、彼女の存在が呼び込んだ破滅の証だった。
「……どうして、私だけが……」
心の奥で呻く声に、ルーヴァの囁きが重なる。
「抗うほどに、美は人を狂わせる。君は何も悪くない……いや、すべて悪いのは君だ」
昨日までの自分が、今は懐かしい。
人を信じ、愛し、友情を願った日々。
すべて、無惨に散った。
放課後、シエラは一人で街を歩く。
人々の視線が痛い。噂が心に刺さる。
――「あの子と関わると、不幸になる」
歩くたびに、破滅の連鎖を感じる。
リュカの笑顔、アナスタシアの笑み、そして自分の無力。
全てが混ざり合い、心に黒い渦を作る。
「……もう、何もかも、嫌だ」
そう呟いた瞬間、背後で声がした。
「シエラ……ねえ、辛いよね」
振り返ると、アナスタシアが立っていた。
その瞳にはまだ、わずかな迷いが残っている。
だが、契約の影は消えていない。
「あなたを憎んでる……でも、どうしても離れられないの」
アナスタシアの声が震える。
友情と嫉妬、愛と破滅――その感情が渦巻く。
「……私は、あなたを止めたい」
シエラの声は静かだが、力強い。
手を伸ばすが、触れることはできない。
美しさはそのまま、破滅を呼ぶ。
「駄目……あなたに触れたら、私も……」
アナスタシアは涙を流しながら、黒い契約の影に飲み込まれる。
破滅の連鎖は、もう止められない。
その瞬間、街の空気が一変する。
無数の人々の心に嫉妬、憎悪、恐怖が湧き上がり、次の犠牲者を求めて動き出す。
シエラはただ、目を伏せるしかなかった。
――愛も友情も、善意も、すべてが破滅を生む。
そして自分は、何も変えられない。
「……私がいる限り、誰も救われない」
胸の奥で、決意と絶望が交錯する。
花は散り、血が流れ、世界は破滅に向かう。
しかし、美はまだ死なず、今日もシエラの胸に宿っている。




