9発目
思い出ぼろぼろ(・ω・)
…俺は、産まれて直ぐに孤児院の前に捨てられ、
孤児院で育った。
自分を捨てた親を恨んだ。
そんな自分を哀れむような目で見る大人も、
「だから孤児は…」と罵り見下す奴らも全て憎かった。
ある日、孤児院の秘密を知った。
院長はダムデストロイの下請けで、
行く宛が見つからないであろう生徒を
ダムデストロイに売りさばいていた。
人身売買ってやつだ。ダムデストロイの使いが院長の隠し部屋で
院長と商談をしに現れたの見計らいこう言った。
「俺を連れて行ってくれ!」
その場で脚を撃たれ気を失った。
13才位の時だった。
気づいたら知らない部屋にいた。
俺が起きるのを見計らってか、白衣を着た女が部屋に入って来て、
淡々と語り始めた。
俺の体はもう普通の身体では無いこと、組織のこと、もう元には戻れないこと、
俺は…狂喜した。
大概の奴はこの話を聞くと暴れだし破壊されるか、
自ら命をすてるらしい。
辛い訓練にも耐えた。
改造手術を受けるために、強くなるために、幾多も功績もあげてきた。
全ては世界に怒りをぶつけるために…。
二十歳頃、
俺は四天王「デススティンガー」を名乗っていた。
そしてその頃から奴が動き出した。
「閃光のサイナード」
ダムデストロイと最も激突し、俺も含めた幹部怪人も一目置くヒーローだった。
何度かピンチに陥れるも、その度に強くなり、ダムデストロイの邪魔をしていた。
奴は無償で、誰に頼まれるでも無く、
俺達悪と命懸けで闘い続けていた。
ある日、俺はサイナードと1対1になった。
立場は違うものの、俺と奴はある共通点があった。
俺は世界が憎かったし、サイナードは敵だ。
だが、正面から薙ぎ倒さなけりゃ、本当の勝利、世界への完璧な復讐にはならない、と。
そして奴はヒーロー故に真っ直ぐだった。
お互い理由はどうあれ、正々堂々としていた。
正真正銘のライバルだった。
後々、思い返せば奴と拳を交えていた時が一番スカッとしていたのかも知れない。
でも、それから間もなくヒーロー連合によるダムデストロイ襲撃が起きた。
「お前とこうしてやり合うのは今日で最後だな…」
俺はサイナードに言い放つ。
「…デススティンガー」
「…なんだ?」
「君は生きろ。もうわかっているんだろ!?」
サイナードは説得するように語り掛ける。
「…何を? 」
「君の目はもう憎しみに捕らわれていない。」
「何を馬鹿な…」
「君はもう…戦わなくていいんだ。」
「…黙れ!俺は憎い!世界が!人間が!」
「違う!君が憎んでいるのは世界なんかじゃ無い!人間でも無い!君が憎かったのは…全てを憎む君自身だ!!」
「…ッ!」
その瞬間、俺達の不意を付くかのように流れ弾が激突した。
サイナードより早く流れ弾の弾道に気がつき、
無意識にサイナードをかばうようにはじき飛ばしていた。
一瞬の出来事だった。
目を空けるとサイナードは頭上から墜ちてきたとおもわれる巨大なコンクリートの破片に半身を押しつぶされていた。
コンクリートはダムデストロイ基地の破片だった。
「おい!しっかりしろ!お前を倒すのはこの俺だ!こんなことで死ぬんじゃない!俺は!…俺はまだ!」
「…デススティンガー、」
サイナードは小さい声だが力強く俺に語り掛ける。
「…お前は、‥生きろ、…生きて‥いつか、本…当の、し、あ、わ…」
「おい!おい!サイナード!」
「…ウォォォォ!!」
それが生まれて初めての涙だった。
あざーす