5発目
(・ω・)
「…べオウルフのメモリーの解析が終了しました」
白衣を着た女性が言う。
「ダムデストロイにデススティンガーか…」
脚を組ながら椅子に座る男はそう呟くと静かに立ち上がる。
「…どちらへ?」
「珈琲を飲みに…な」
俺は今日は休みだ…が、行くアテも無く店でだらけていた。…いや正確には午前中に遊びには行ったのだ。パチンコ屋に…。
サクっと三万ほど負けて今にいたる。
元悪の組織が仮面ライ○ーなんて打つもんじゃないね。
チャリン♪
来客を知らせるベルが鳴る。
「いらっしゃーい」
マスターが笑顔で挨拶をする。
男が一人、ソイツは俺の隣のカウンター席に腰かけて言った。
「おさしぶりです…先輩」
「…あぁ」
俺はこの男を知っている。
(戦爪のガーランド)
元ダムデストロイ幹部の一人で戦闘員時代からの俺の後輩だ。
「先輩…もう一度やりませんか?世界征服を俺の組織で一緒に」
俺は沈黙し…首を横に振った。
「…」
「…先輩」
「俺はもう奪うのも奪われるのも嫌なんだ…」
勝手な言い分なのは百も承知だ。
「先輩…ベオウルフを倒したのは先輩ですね?」
黙ったまま頷く。
そうかコイツがブリューナクの…
「その件については何も言いません、奴は性格に問題があり、手がつけられなかったのも事実です。むしろ感謝すらしてます」
戦闘員時代、俺のパシリだった男はいつの間にか、世間が脅威する悪の組織の首領になっていた。
沈黙が続いた。
「お~ぃ!高松く~ん」
まさかのマスターの呼び声で沈黙は破られた。
「牛乳が切れそうなんだよ~」
牛乳パックをもちながらマスターがキッチンから顔を出す。
「あ、俺買って来ますよ」
「いや~、そう?悪いね~」
「…」
そんなやりとりを見てたガーランドは静かに立ち上がり一言。
「ごちそうさまでした。」
「まいど~」
マスターの声を背に店をあとにする。
「じゃぁ、俺行ってきますよ」
「よろしくね~」
俺も牛乳を買いに店を出る。
「先輩」
「まだ居たのか…」
ガーランドは店の前に立っていた。
「気が変わったらいつでもここに連絡して下さい。」
名刺を渡された。
視線を返すともうそこには誰も居なかった。
「はぁ~、めんどくせぇ…」
ため息をこぼし、牛乳を買いに歩き出す。