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第4話 申し訳ありませんが閲覧のみとなっております

「何か希望はあるか?」と高次元の誰かに聞かれて俺は「魔法を使いたい」と答えた覚えがある。「もうそれなりの歳なんで派手じゃなく、いぶし銀な格好いい役どころで」


 その際に付け加えて言ったのだ。


「あらゆる魔法を無効化する強敵や結界に邪魔されるなんて嫌だから逆に相手が誰であったとしても何があっても俺は絶対に魔法をかけられるようにしてほしい」


 高次元の誰かは俺の希望を了承した。


 生前、俺が好きだったとある六人組で迷宮を探索するゲームで相手に先手をとられてこちらの行動を封じられてしまう行為が脅威だった。


 詠唱できないように沈黙をさせられたり斬りかかれないように眠らされたり。


 もちろん派手な殲滅系の呪文やブレスによる先制攻撃も怖いけれども俺が最も危機感を覚えたのは能力の無力化だ。


 そこで俺のユニークスキル『絶対魔法効果』だ。


 シンプルに自分の魔法が絶対に効果を発揮するというだけの能力だ。


 例えば相手に『沈黙』の魔法をかけられて詠唱ができなくなっても俺は無詠唱で魔法をかけられる。『絶対魔法効果』の絶対とは絶対だ。だって絶対だもの。


 絶対に魔法が効果を発揮するということは逆説的に言えば絶対に魔法が使えなくならないということも意味している。


 要するに俺は魔力不足には絶対にならない。


 俺は脳裏に自分が使える魔法のリストを思い浮かべようと試みた。実際に魔法を使った経験はまるでないが自分に何ができて何ができないかは不思議とわかる。


【支援魔法士】の名前のとおり俺には派手な殲滅系の攻撃呪文は使えないし怪我を治癒する回復呪文も使えない。


 バフ、デバフ、眠り、沈黙、その他諸々。見事に補助的な魔法ばかりが思い浮かんだ。


 確かに直接的な攻撃や回復はできなかったけれども搦め手としてなら十分効果的だ。


 相手を眠らせてタコ殴りにするなんてロマン攻撃以外の何物でもなかった。


 俺が思う、いぶし銀の格好良さであり強さだ。


 確実に相手を眠らせてしまえば怪我もせず獲物の生け捕りもし放題。


 傷がなければ毛皮だって高く引き取ってもらえることだろう。火炎呪文で黒焦げになった毛皮よりも急所を一刺ししただけの毛皮のほうが価値は高いに違いない。


 そんなわけで俺にとっての【支援魔法士】はアタリ職だった。高次元の誰かはユニークスキルとの相性を見越して俺の探索者職業(ジョブ)も決めてくれたのだろう。


 もっとも俺にユニークスキルがある事実は俺が転移者である事実同様、誰にも内緒だ。


 ヘレンは【支援魔法士】に対する一通りの()の側面を説明した上で俺に確認した。


「それでも【支援魔法士】として探索者登録をなさいますか?」


「もちろん」と俺はヘレンに笑いかけた。


「もともとソロのつもりだから人に魔法をかけるつもりはないし食えるだけの薬草採取とかで生きていければいい。失敗ありきで自分にだけ何度も魔法をかければやれる範囲で」


 魔物を眠らせてタコ殴りにできる可能性はあったけれどももちろん黙っておく。他人にチートを知られるのは悪手だ。一般的な【支援魔法士】らしく振舞おう。


 ヘレンは俺に笑い返した。


「ギンさんが慎重な方で安心しました。申請書の記入をお願いします」


 俺は記入途中だった探索者登録申請書に向きなおった。


「えーっと、探索者職業(ジョブ)、し・え・ん・ま・ほ・う・し」


 わざわざ言葉に出しながら探索者職業(ジョブ)欄に【支援魔法士】と記入する。


「お願いします」


 俺は記入を終えて申請書をヘレンに差し出した。


 性別、年齢、種族、出身地といったプライベートな内容については、差し支えなければご記入くださいとなっていた。この世界でも少しは個人情報への配慮もあるらしい。


 男、二十六歳、ヒューマンとは記入したが出身地は記入しなかった。


 日本と書いたところでわからないだろうし、じゃあ何と書けばいいかもわからない。


 そもそもの話として、ここどこだよ?


 なので未記入。


 食い詰めて逃げてきたはずの人間なのだから出身地は秘密にしても不思議はないだろう。


 ヘレンは俺の申請書を一瞥したけれども未記入欄に対して特に何も言わなかった。


 ヘレンは手元の石板(タブレット)端末を操作した。


 端末から真新しい探索者カードが吐き出された。名刺の四分の一ぐらいの大きさの小さな金属製のプレートだ。カードと言うよりタグか。


 ヘレンは俺に探索者タグを差し出した。


「首からぶら下げて常に携帯してください。内容に間違いはございませんか?」


 タグは片隅に穴が開けられていて紐を通せるようになっていた。戦争映画でよく見るドッグタグのような扱いなのだろう。


 名前と探索者職業、探索者ランク、アルファベットと数字を組み合わせた探索者番号が刻字されていた。申請書に記載した内容よりも刻字された項目は遥かに少ない。



 名前:ギン


 探索者職業:支援魔法士


 探索者ランク:F


 探索者番号:************



 名前と探索者職業しか俺には確認のしようがない。


 恐らく探索者ランクは想像のとおりでFが最低でE、D、Cと上がっていくのだろう。Aの上にSがあるのかSSやSSSまであるのかは分からない。


 探索者番号も探索者固有の番号なのだろうとは思うがこのギルド限定の番号なのか、この国レベルの番号なのか、国とは関係なく世界的な組織として割り振られた番号なのか、そういった詳細が分からない。いずれにしてもギルド側が一方的に割り振ってくる番号だ。


「名前と職業はあってるよ。それ以外は確認できない。そもそも探索者ギルドの仕組みについてほとんど知らないんだ。約款とか規約とか何か紙にまとめられた物はないの?」


 ヘレンは目を見開いた。


「もちろんございます。大事なことなのに皆さん字を読まれるのはお嫌いみたいでそのような要求をいただいたのはギンさんが初めてです」


 おいおい脳筋探索者たち大丈夫か。


 俺は新しくゲームを買った時には電源を入れる前に必ず付属のマニュアルを熟読する派だ。もっとも最近のマニュアルは電子ばかりだが。


 本当は登録申請をする前に把握するべきだった内容だが仕方がないだろう。ギルドで約款がどうのとか言っている異世界転生物を読んだ覚えはない。思いつかなかった。


「それってもらえるもの?」


「申し訳ありませんが閲覧のみとなっております。書き写しは可能ですが持ち出しはできません。閲覧されますか?」


「もちろん」

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