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第13話 ヘレン案で行こう

「Fランク探索者に限ってですが薬草採取の買い上げ単価が探索者ギルドと国と領主からの補助金で底上げされます。それならば生活できるかと」


 ヘレンはおずおずと説明した。


 こういうことらしい。


 一般的に探索者の死亡率、引退率はFランク探索者が一番高い。成人したから、もしくは食い詰めたからという理由で探索者になってみたはいいものの実質素人であるのだから動きは悪い。慣れれば問題なくこなせるような行動も不慣れであるため失敗をするし失敗を繰り返してばかりいると、さらに食うに困ってしまい無理をして難易度の高い依頼に挑戦して大失敗。死亡したり怪我による引退を強いられたりといった事例が多かった。


 探索者ギルドとしては探索者の死亡は避けたいし引退による総数の減少も避けたい。


 国や領主は大規模な魔物発生時や特殊な魔物発生時には対処活動への参加を強制できるDランク以上の探索者に増えてもらいたい。


 Dランク以上の探索者ともなれば仮にその後引退して地元に戻ってしまっても魔物への対処のノウハウは身についているので自衛能力が高くなる。国や領主の負担が減る。


 とはいえ、いきなりDランクは無理なので、まずは生活が成り立つ探索者を増やす。


 Fランク探索者の何分の一がDランク以上に育つのかはわからないが分母が多いほどいきなり死んだり引退しないで成長する探索者の総数は増えるだろう。


 素人同然の動きのFランク探索者も一日探索に出て戻って来るといった単純な体験を繰り返すだけでも探索者としての生活に慣れ、死亡率、引退率が大幅に減少する。


 そのためにもせっかく探索者登録をした人間がいきなり生活を続けられずに引退する事態は避けたい。


 ついては比較的安全な仕事とされている薬草採取の買い上げ単価を補助金により底上げして高く買い上げることでFランク探索者の生活を安定させる。


 同時に安価なポーションを大量に流通させることでFランク探索者であってもポーションの一本も持ち歩いて応急処置的に使用できるようにして死亡率、引退率を下げたい。


 例えばの話として薬師が探索者ギルドに提示する依頼の薬草買い上げ金額が百本当たり小銀貨一枚のところ実際に探索者ギルドが探索者から薬草を買い上げる際に支払う金額は探索者ギルドから小銀貨一枚、国から小銀貨一枚、領主からも小銀貨一枚を上乗せして合計で小銀貨四枚支払うといった具合だ。実際の上乗せ比率や金額はもちろん違う。


 薬師が探索者ギルドに依頼時に支払う金額は小銀貨一枚のままなので探索者の収入は増えるのにポーション材料の仕入れ金額は変わらずポーションの値段は上がらずに済む。


 差額分を探索者ギルドと国と領主が補助として負担するという、そういう仕組みだ。


 もちろん、探索者ギルドも国も領主もFランク探索者の生活を安定させるためにFランク探索者であれば誰にでもただで金を配ろうというわけではない。


 実際に丸一日根気よく薬草の採取を続けて既定の量の採取を成し遂げた人間に対してだけ買い上げ単価の底上げという形で補助を行う。一律のバラマキ行政とは違う。


 ヘレンはそんな説明を俺にした。


「それだとEランク探索者に上がると収入が減って食えなくなっちまうんじゃないか?」


「Eランクに上がる頃には探索者としての生活にも慣れ弱い魔物ならば楽に倒せるようになっています。魔物素材の買い上げ金額のほうが一般的な薬草の買い上げ金額よりも高いので問題はないでしょう。薬草採取の際にも魔物に遭遇して交戦することはありますので」


「ソロの【支援魔法士】でも魔物を倒せる?」


 俺の質問は少し意地悪だったかも知れない。ヘレンは言葉に詰まった。


 俺自身としては『絶対魔法効果』の恩恵で魔物に眠りの魔法をかけて眠ったところをタコ殴りにすれば何とかなると思っている。


 とはいえ、例えヘレンに対してでも手の内は隠しておきたいところだ。


「ずっとFランクのままってわけには?」


「いきません。探索者登録から半年以内にEランクに上がれない探索者は自動的に登録を抹消されます。再登録はできない決まりです」


 そうは言っても本人確認が杜撰なので別の名前で登録をできてしまう気がするが顔までは変えられない。再登録は難しいのだろう。


「わかった。Eランクになれた時のことはその時考えるとしてヘレンの作戦としては俺がFランク探索者の間は補助金をあてにして薬草採取での生活安定を目指すわけだ」


「わたしが以前いたところでは上乗せ補助はギルドと国によるものだけだったのですが、ここでは探索者が居付きやすいよう領主様も補助をしてくれています。利用しない手はないかと」


 へぇ。領主、いい仕事してるじゃないか。


「もしギンさんがレアな探索者職業(ジョブ)でしたら滞在費の補助もあったのですが」


 前言撤回。探索者職業(ジョブ)に貴賤はない。


「わかった。ヘレン案で行こう。問題は俺が薬草の実物を知らないことだけれども見本や図鑑の貸し出しはできるかい?」


「図鑑の貸し出しはできませんが閲覧ならば無料です。見本は買取りになってしまいます」


「図鑑の閲覧で。それとヘレンに知恵を借りたいんだが俺には探索者としての装備が何もない。最低限必要そうな物を何か適当に見繕ってくれないか?」

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