8:エッセイ『ハラスメント研修を受講して』
ハラスメント相談、ハラスメント防止月間、ハラスメントに関する職場アンケート、ハラスメント研修……と、ハラスメントハラスメントハラスメントとよく聞かされる。
ハラスメントに関する職場アンケートの用紙が配られた際、その内容に笑ってしまった。セクハラ、パワハラ、モラハラ辺りは世間一般に浸透していて耳馴染みもよい。
また、最近だとマタハラ、スメハラ、スモハラくらいは耳にしたことがある。
ヌーハラ……ヌードか??と裸を想像したが、正解はカップ麺などを啜る音、ヌードルハラスメント。
スイハラ……スイカ腹か??と丸々としたお腹を想像したが、正解は女性ならスイーツ好きでしょという決めつけ、スイーツハラスメント。
マナハラ……マナカナ?と母音が似ていると思ったが、正解は他人に細かくマナーを求め過ぎるといったマナーハラスメント。
この度、ハラスメント研修を受けた。
ブラハラ、は衝撃だった。
あなたはこの血液型だからこう!という決めつけ、ブラッドハラスメント。
それ、つい最近、飲み会でやったやつ。以前の職場でも、その前の職場でもしたことがあるので、この人はA型、この人はB型……と他人の血液型は割りとよく覚えている。
先入観、決めつけ、価値観の押し付け。
自分の中でさも当然と凝り固まっているものが、ハラスメントに繋がる。
当たり前だと思っているから配慮出来ない、罪悪感がない、他人の不快感に気付けない。
つい最近自分がやらかしたのが、とあるユーザー様の周年記念の個人企画。
自分にとってBLもオメガバース設定も当たり前、めっちゃ素敵!BL尊い!
けれど、全年齢対象の「なろう」サイト的には、きっとそこまで当たり前ではない。
無くはないし、投稿されている作品の中には高い評価を獲ている人気作品も勿論あるのだけれども……。
価値観の押し付け、だったのだろうなぁと。
作品そのものの物語性とか文章力とか、書く側、自分の能力的な力不足がまずはあって、更に上乗せで、価値観の押し付けをしてしまっていたのだろうと。
とある苗字を持つ人物を主人公に据えた作品を投稿するという某個人企画……自分も作品を書こうと試みたけれど、言葉遊び好きの自分には苗字弄りの作品しか書けそうになく、参加を断念した。
たまたまその苗字の人物が主人公だった作品と、敢えてその苗字の人物を主人公とした作品。
自分は企画参加作品をほぼ全くというほど読めていないので、企画参加作品がどのような内容で書かれているのか、今のところ、まるで知らない。
検索してみると、企画参加作品はかなりの数にのぼっている。
仮に、主人公が殺される物語。
仮に、主人公が犯罪者となる物語。
仮に、主人公が狂ってしまう物語。
仮にそんな物語が企画参加作品として投稿されていたとして、その企画の主旨が、とある苗字を持つ人物を主人公に据えた作品の投稿……。
何故、その苗字を持つ主人公がわざわざ殺されなければならなかったのか?
何故、その苗字を持つ主人公がわざわざ犯罪者とされなければならなかったのか?
何故、その苗字を持つ主人公が狂わねばならなかったのか?
当然、企画参加の投稿作品数は多いのだから、その苗字を持つ主人公が幸せになる物語もきっと数多くあるだろうし、面白おかしく楽しく暮らす物語も多数あるのかもしれないけれども……。
内容がアンハッピーであった場合、わざわざ主人公をその苗字にすることについて、その苗字の人々への悪意ととられかねないと思う。
創作の作品の中では、人はごく普通に死ぬし殺されもする。日常では決してやってはならないことも、作品の中では普通に起こる。
表現の自由、その線引きがどこであるのか、明確には自分は知らない。なんとなくこれはセーフでこれはアウト、その程度。
とある苗字を持つ人物を主人公に据えた作品を投稿するという某個人企画、自分が書けそうにないから、負け惜しみ……という訳では決してなくて、ただタイミング的に、自分の中でとてもタイムリーだったから、「本当に大丈夫ですか?」という投げ掛けだけ。
某個人企画を否定したい訳ではないし、目立った作品投稿で叩かれることになっても怖いので、この短編集の中にそっと置いていきます。