三十八話 わたしが上海で出会った彼は、いい人か 悪い人かわかんない
この前、上海に行ったときのこと話させて。
ちょい年下くらいの男ね。そいつも日本から来てて、おたがい一人旅してたの。
さえないヤツでね、ちっちゃなリュック背負ってブラブラしてた。
どうみても、もてなそう。道ゆく女の子の胸ばっか見てる。
日本人のほうが、胸おっきいのにって思ったわ。スタイルは負けるけど。
こっちから声かけたわ。
こんなのイチコロでついてくるんじゃないかって。やっぱりそうだった。
川辺のテラスで食事してるときも、わたしの胸ジロジロ。
そうとう女に飢えてるのね。いいカモになるわ。お金だしてもらおっと。
ホテル代、よろしくってね。うん、それでいこう。誘っちゃおう……
わたし 「ねぇ、いっしょに今夜、泊まらない?」
もてない君「そうですね、割り勘でいきましょうか。いいですよ」
わたし 「全部出しでお願い。いろんな意味での全部だしね、うふっ」
もてない君「意味深でよくわかんないけど、そうしましょうか」
チェックインしてからもモジモジしてた。
わたしの後に、彼がバスタブへ。それがね、いつまでたっても出てこないの。
もう、とけちゃったかと思った。女になれてないから、はこびがわかんないのね。
しょうがない、リードするわ。
わたし 「おフロ長かったわね。心配したんだから。いいの、まかせて」
もてない君「あのー、提案があるのですが、最初は童貞の芝居をします」
「でもって、いったん浴室に消えてください。で今度はワルにな
る」
「AVで勉強してきてるので、筋書きのある設定にしません
か?」
わたし 「ドラマみたいにってことね。その方がやりやすいんなら、いい
わ」
もてない君「はい、じゃ、ベットにねてるんで、浴室からあられて」
もう、彼ったらAVの見過ぎなのね。童貞の振りってなに、変なの。
わたしが浴室から裸で出てくればいいのね。わかった。えいっ……
もてない君「ちょっと、なんなんですか。やめてください」
「目の毒になりますから、お願いですから服着てください」
わたし 「えっ? そう? わかったわ。じゃあね」
彼は今度、ワルの振りの芝居するのね、そんなの出来るかしら。
ますます変なヤツ。このさいコテンパンにしてやろうか。
わたし、サドになるわ。
勢いよく出てったろ、童貞まがい君、空っぽになるまでいただきよ……
もてない君「おい、お前かいな、スケベエステで働きたいっゆうんは」
「技見せてみい。ぬか三じゃダメだ、ぬか四が出来よるまで仕込
んだる」
「ええか、客にあたえんは上の口だけやで。下は可愛がったる
な」
「そこで指名トップ目指せ、トップんなったらオレの女にした
る」
「わかったんか、売り上げいかんかったら地雷店に流すぜ」
わたし 「大丈夫ですか。童貞まがい君では、なかったのですか」
「どっちが、あなたなのですか。わたしは、どっちに抱かれれ
ば」
もてない君「はい、元にもどりますね。こっちが、本当です。お願いしま
す」
わたし 「そ、それでは、リードしますんで、何かあったら言ってくださ
い」
「宿代は割り勘でいいです。あれは、全部いただきます」
「では……」
なんだったのかしら、本当に変な彼でした。いただいたものは、たっぷり。
私の名前は桜井マコ。横浜に住んでるから近いねって言ったのに、無言だった。
彼は、中国人の渦のなかにきえてった。振り返りもせずに。




