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対話体小説 小話集  作者: 藤原 てるてる
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二十五話  ホテル マリファナ

まず、始めに自己紹介させてくださいな。私、奥須喜いく子いいますね。

六十を前にしたバツ四ですわ。男運が良くなくて、長続きようしません。

あるホテルで、ずっと受付とお掃除などしとります。今は、独り身で。

ここは名前が名前なんで、いわゆる悪系の方が多くと来ます。

エッチ大好きも、まあ、私もそうだけんど、このホテル名によせられて。


ホテルのお掃除って大変ですわよ、お盛んな人が派手に汚すのでね。

たっぷりと、ご満悦してくださるのは嬉しいのですけど、お掃除がね。

「お潮」何とかならないかしら、シーツを替えただけじゃダメですわ。

ベッドそのものゴシゴシ洗い、もう大変。イカ臭さ消毒だけでもそうなのに。

それに、ムラムラして来ますのよ、どんだけ良かったの、いいわねって。

あの手取りじゃ割にあわない。欲求不満になる仕事ですのよ。

私、支配人に言いましたわ。もっと時給を上げて、何でもしますって……


支配人「うん、何でもしますって言われてもね。何がいいかね」

   「いく子さん、このラブホテルはお掃除が大事ですから」

   「次のお客さんにハッスルしてもらうには、綺麗にしないと」

   「イカ臭さはしょうがないです。お潮については考えます」

いく子「あの、壁に貼り紙を張ってはどうですやろ、お飛ばし注意なんて」

支配人「いやいや、満足した証ですから、それどころが、もっと」

   「下手に書いたら、テレビがやられますぞ、書きようがない」

いく子「いいのがありますわ、ホテル名をかえてみてはどうかしら」

   「もっと真面目な名前にするんです。たとえば、ホテル公安とか」

支配人「それじゃ客が来ません。ここは悦んでもらう所ですからね」

   「確かに、この業界の難題ですわ。安いベッドではないのです」

   「お潮、お潮ですわな。いく子さん、もしや、あなたもそうでは」

いく子「違いますわ。若い時は、ちょっとね。もう違います。確かめます?」

志配人「確かめましょうよ。では今夜、このラブホ街のホテルうっとり、で」

いく子「はーい……」


この支配人は、女百人斬りはとうに越えている。歳若から熟女までオールОK。

だてにラブホをやってはいない。女の悦ばせ方を知りつくしている。

いく子さんが危ない。実は「お飛ばし好き」が、ばれるやもしれない……


支配人「いく子さん、遠慮しないでくださいよ。このホテルのベッドに」

いく子「支配人さんこそ、私が、お潮なんて吹かないって事わかったらね」

   「時給上げてね、お願いするわ。バツ四だけど、摘まみ食いは好き」

   「だって、ラブホの仕事って、ムラムラ来るんだもん。ええなって」

支配人「そう、お潮は良かった証拠です。うちのホテルのも大目に見ましょう」

いく子「では、私が吹いても吹かなくても、いいわね。願い叶えてね、ね」

支配人「いいですとも、この業界にお潮は付きものです。どうど、思いっ切り」



いく子さんの、隠れ淫乱がばれてしまった。テレビまでも汚してしまった。

このホテル名の通りに、うっとりとして朝まで寝入った。ホテル名は大事である。

勤務先はホテル マリファナ、飛ばし好きの男と女がやって来る。そう言うもの。


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