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対話体小説 小話集  作者: 藤原 てるてる
24/32

二十四話  鵺(ヌエ)の鳴く夜は、気持ちいい

これは横溝正史の金田一耕助シリーズ「悪霊島」の、パロディーである。

瀬戸内のある小島を舞台とした、旧家の怨念渦巻く推理小説。数回映画化に。

因習があった。……「島には悪霊がいる、鵺の鳴く夜に気をつけろ」と。

妖艶な女が気味の悪い口笛を吹きならすと言う、合図である。男を誘う音の根。

また、こうでもある。島人は子らに早く寝れ早く寝れで、伏せようとした。

小さな島のこと、大人はみんな知っている。ああ、また男が喰われる……


喰われたがる男は当然いる。待ってましたと、我先にと逢引の洞窟へ急ぐ。

その夜の一番乗りを目指す、何人か後では気色悪いのである。その気持ち、わかる。

女は女で、誰が真っ先かはわからない。朝まで、何人かもわからない。

わかるのは、何もかも忘れさせてくれること。この洞窟は奥へ深くといざなう。

……来た。息せき切ってサカリ男が駆け込んだ。いきなり抱きついて来た……


サカリ男「今夜は、オラが一番だな。あー良かった。この前はさんざんだった」

蜜女  「ああ、そうらよ、誰それの後でねえから初もんや、えかったな」

サカリ男「おおっ、朝まで独り占めすっからな、ええな?」

蜜女  「でもな、ほかの男がやって来て、あんたを引き剝がすかもやで」

サカリ男「そんなん、させね。力ずくで追い返す。オラたまりにたまっとる」

蜜女  「朝までやったら、なも急がんでもええろ、アテの内輪話聞いてんか」

    「あんたが、まだ青二才の頃から、この洞窟で口笛吹いては男誘ってた」

    「いろんなのが来た。その中にはアテとの逢引の後、気狂って死んだんも」

    「それでな、アテのことを鵺なんか言ってな、気を付けろやと、何なん」

    「ええ思いしときながらな。その男は連夜来よって、尻にアザが出来た」

サカリ男「それはいかんのう。自分だけ極楽味わってて、ばちが当たったんや」

    「女と共に極楽にいかんでどうする。オラ、尻にアザなんかつけさせん」

    「松葉崩し、燕返し、抱きやぐらで決めたる。そこん所は大丈夫だ」

蜜女  「アテ、乱れ牡丹がいい。好きにして、ええな。あんた我慢我慢やで」

    「いっしょに極楽いこうな、アテな、鵺なんかでねえで。わかってな」

サカリ男「わかってまー、膝に悦びアザが出来るまで腰ふったらええ、さあ」

蜜女  「若い男がやっぱええわ。明日も来てな。口笛吹くから、すぐにな」

サカリ男「おおっ、今夜は乱れ牡丹、次は松葉崩しや、狂い腰たのんまー」



あくる朝、この蜜女さんには、膝に悦びアザが出来てしまっていた。尻にではない。

今度は松葉崩しと言うからには、男の膝に助平アザが出来ることになる。

本当に鵺の鳴く夜は気持ちいいのである。この島は悪霊島どころか、極楽島では。

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