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第4話
「あっ!」
セミロングの女の子が私の存在に気づいて、驚きの声を上げる。
こちらを見て目を丸くした後、友人の方に向き直り、最初の注意に戻った。
「ほら、早く練習止めて! 『誰もいない』が間違いだったよ! 他のお客さんに迷惑だよ!」
「でもホーム広いから、あの人に当たる心配ないし……」
「迷惑じゃなくても恥ずかしいよね?」
「……」
とうとう説得されたらしい。渋々といった表情と態度で、ゆうこは木製の薙刀を布袋に入れ始めた。
その傍らでセミロングの友人は、チラリと私の方を向き、明るく元気な笑顔を見せて……。
「すいません、お騒がせしました!」
軽く頭を下げた後、ゆうこを促して歩き始めた。
「ほら、行くよ。あっちに座ろう」
ホームの反対端の近くにもベンチはあるので、そちらで電車を待つのだろう。
遠ざかっていく少女たちの後ろ姿を見ながら、ふと私は思うのだった。
ゆうこの友人――セミロングの少女――は、会話の中で色々と説明してくれたけれど、彼女の名前はわからないままだったな、と。
(「島のホームと薙刀少女」完)