第一話
とりあえずプロローグと同日に投稿。
この感じだと、1回の投稿が何文字になるのか分からない。
読みやすい様に(ただ書きやすいだけ)短めの物をちょっとずつ投稿する感じかな。
世界が太陽に挨拶をし、生命が活動を再開する時刻。しかしエレレン王国の城内は昼夜問わず慌ただしかった。家臣に仕事を任せ寝ていた王は玉座に腰掛け、苦虫を噛み潰した様な表相をしていた。それを励ます様に声をかけるのはエレレン王国一の頭脳を持つ男だ。世間一般的に宰相と呼ばれる彼は王を励ましながらとある男の到着を待っていた。
「陛下、もう暫くお待ちください。宮廷カガク士の彼なら問題の詳細も分かるでしょう。」
「だと良いんだが……。」
なんの励ましにもなって居ない。そう言いたそうに顔を歪ませるエレレン王国が王――シルクロ・デ・エレレン七十二世。しかし彼の機嫌をより焦ったモノに変えてしまう者が来てしまう。ドアが開かれたままの王の間から伸びた長い廊下。そこに敷かれた赤い絨毯の上を、白い衣の男がポケットに手を入れたまま現れた。黒い短髪と黒い瞳の壮年は一目でこの国の出で立ちで無い事が分かる容姿だ。
「陛下。遅れてしまい申し訳ありません。」
「おぉ、シグハ。待っておったぞ!して、状況はどうなのだ?」
「……。残念でありますが、宜しい物とは言えません。私が設置した機器が全て……生命反応を示しています。封印はここまでの様です。」
遅れてしまった壮年を責めなどせず、彼の口から紡がれる言葉を心待ちにしている様子の王。しかし口から出たのは期待を裏切るモノだった。この国……いや、この世界の出身じゃない壮年は何が起こるのか理解出来ていない様子でただ冷静に状況を伝えていた。
「そうであるか。……ふっ……ふっはっはっはっは!!」
突然立ち上がり、顔を隠す様に窓へと歩いてから笑いを挙げる王。先程までの様子とは打って変わった彼に驚く宰相と壮年。しかし、王は笑いを止める事はせずに狂ったかの様に口を開け続けていた。
「へ、陛下……?」
流石の様子に耐えかねた宰相が王に問いかける。王はふと振り向き、絶望に満ちた顔を宰相と壮年に見せた。そこから流れ出てしまった涙も隠すつもりは無い様だ。一国の王がプライドを捨て涙を流す。そこに居合わせたのがこの壮年――シグハと宰相だったからだろうか。王が最も信頼を寄せる数少ない友人。王の取り乱し様に要約事態のなんたるか実感が湧いてきた宰相は顔を真っ青にしていた。
封印がここまで。その言葉が示すのはたった一つの事実だ。長年――実に三千と五百年の間人類……いや、全生命体を守ってきた守護の水晶が砕ける。そこから何が出てくるのか。それをシグハは知らない。
「俺はこの世界の者じゃないので状況が飲み込めません。しかし、出来る手は尽くします。何よりもこの国に……世界に多大な恩を感じています故。」
そう王と宰相に伝えて部屋を出るシグハ。彼の手はもうポケットに突っ込まれておらず、何か覚悟を決めたかの様にギュッと握りしめられていた。