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出会い8

「え、先輩が最初に心霊スポットに行きたいって言ってたじゃないっすか! 愛佳先輩に良いとこ見せつけたいって」

「馬鹿! お前っ!!」

「あ、さーせん」


 高橋に小突かれて、彰真はシマッタとばかりに掌で口を覆う。


 愛佳先輩とは、今この場に居る唯一の女子で高橋の同級生だ。


 高橋は短く刈った金髪に、細く釣り上がった眉。


 ちょっと不真面目な今どきの高校生という風貌に対し、愛佳は毛先にふんわりとしたウェーブがかかったセミロングの黒髪に前髪はぱっつんだ。


 控えめに言っても、真面目な優等生といった印象を抱かせる。


 夜中に拝むには何とも不思議な組み合わせだ。


 そんな愛佳と高橋2人の関係性が、恋人なのかただの仲の良い友人なのかは、今一つ輝には分からない。


 けれども、先程のあの口ぶりからするに高橋は彼女にアプローチ中らしいと推測できる。


「何もなかったのは残念だったけどさ、でも、これはこれで楽しいと思わない?」


 密かに自分の話題が繰り広げられていることに、愛佳は気付いてすらもいないようだ。


 そういう所が好みなのだろう。


 無邪気に感想を述べる愛佳に、今しがた青筋を浮かべていた高橋も鼻の下を伸ばしてデレデレとした反応を見せる。


 一応心霊スポットにやって来たというのに、どちらとも緊張感の欠片もない。


 高橋も愛佳も、ついさっきまで、夜闇が見せる不気味さに少しばかり体を震わせていたはずではなかったか?


 誰かの踏みしめた小枝がパキッと音を鳴らす度に見ていて気持ちがいいくらいの反応を見せてもた。


 そんな具合だったのに、こんな軽口を叩き合えるくらいにまで落ち着いたのは、無駄打ちの怯えと警戒を何度か繰り返して、『自分たちの他には誰も居ない』と分かったからだ。


 彰真に至っては、途中途中で手頃なものを拾っては、天国が何とかかんとか言いながら、不揃いの大きさの石を4つ5つ程地面に雑然と重ねて遊んでいた。


 一体、奴の好奇心は、何によって駆り立てられるのか甚だ分からないが、よく分からないことに面白がるのが彰真というものだったりするので、その場の誰一人として注視する者はいなかった。


 黒い影の存在についてもまた然りだ。自分たちの真横を通り過ぎても、誰も気付きやしない。


(あれはやっぱり俺だけに視えるのか? だとしたら、何で視えているんだろう……?)


 そんなことを考え始めた時だった。


「……あれ?」


 輝はふいに顔をあげると、きょろきょろと辺りを見渡した。


 何故なら、輝の周りには人っ子ひとりいなかったからだ。


 先頭を歩いていた高橋と愛佳はともかく、彰真に至っては、揺れるピアスの音が聞こえるくらいたった一歩程先なだけだったはずだ。


 それなのに、目の前にあるべきはずのその背中がどこにも見えない。


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