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出会い6

(うわ、やっぱいるよなぁ……)


 神社の敷地内に足を踏み入れた瞬間、輝は即座に《《それ》》に気づいた。


『ヴ……ア……アア……』


 ちょうど、月の周り以外を墨で塗り潰したかのように真っ黒な視界の中。


 風に吹かれてザワザワと笑いさざめく木に混じって、人影にも似た無数の黒い塊がうようよと揺れながら、輝達を遠巻きに《《歓迎》》していた。


(すげぇ数だし。ほんと、いつ見ても気味悪い形のやつばっかだなぁ)


 己に向かって伸びてくる黒い塊を(かわ)しながら、輝は冷静にそれを観察し始めた。


 いつからだったか覚えていないが、平凡を自負する輝も、他人からすれば少々変わった特技があった。


 その特技とは、今目の前にいるものような人間ではないものの姿が視えることだ。


 最初にそれを見つけた時はほんの小さな影だった。


 ふとした時、視界の端にちらりと掠るようになったのがきっかけだ。


 それは、次第に薄い(もや)が徐々に大きく膨らんでいき、人型のようなものを型取って、つい最近では声のようなものが聞こえるようになった。


 しかし、声と言っても、獣の唸り声みたいなものが微かに聞こえるだけだ。輝の耳には、言葉の内容までは聞き取れない。


 それでも、今のような丑三つ時の時間は特に異形のものが見えやすくなる。


 初めて見た時にはそれなりに驚いたものだが、幾度か見かけるようになってからは視界に入っても気にしないようにしている。


 何故なら、下手に反応してしまうと近寄られて腕や肩に乗っかられてしまうことがあるからだ。


 あれに伸し掛かられると、実体がない癖に心なしか身体が怠くなる。


 だから、見えないふり。気付かないふり。これが輝が身に着けたこの手の類への一番簡単な対処法だ。


 輝はやつらと視線を合わさないように気を付けつつ、風が木を揺らしただけの単なる葉擦れの音にさえ、ビクリと盛大に反応してみせる仲間たちを少しだけ愉快に思いながら彼らの後を追った。


 神社自体は、こぢんまりとした神社だった。


 寂れてがらんとした境内は敷地面積以上の空虚さを感じさせる他には、別段特筆すべき点は何もなかった。


 強いて挙げるならば、鳥居の前に威嚇するように立ち並んでいた首から先の欠けた狛犬が恐ろしく不気味だったくらいだ。


 本来なら、縁起の良い場所であるはずの神社で決して縁起の良いとは言えない光景に、心なしか背筋が寒くなった。


 しかし、ホラー番組などでよくイメージされているような謎のしめ縄とか得体の知れない大量の御札といったようなものはどこにも見当たらなかった。

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