その名も呪い師6
「それで、とある調査も兼ねて昔から怨霊の巣窟で有名なあの場所に行ったんです。そうしたら……」
「そうしたら……?」
ここで、ずっと無言を決め込んでいた美里が急に口を開いた。
「そこに、お前がいた」
「……わお」
「あそこはちょうど結界が張ってあって、霊力を持たない普通の人間は入り込めないようにしてあった」
目は口ほどにものを言う。疑わしきはお前だと、鋭い眼光がじっと輝を見据えてくる。
「結界?! や、破ったの、俺じゃないぞ!?」
やってもいない罪の濡れ衣を着せられるなんて、とんでもない。
輝は己の無実を懸命に訴えた。
しかし、美里は簡単には追及の手を緩めるつもりはないようで険しい表情で激しく迫った。
「なら、何故あんなところにいた? あそこは俺たち呪い師でも滅多に踏み入れない場所だ!」
「知るか! 気づいたらそこにいたんだよ」
「嘘をつくなら、もっとまともな嘘をついたらどうなんだ」
「だから、嘘じゃねぇって!」
このままでは拉致の明かない押し問答が続くだけだと分かっているが、輝には明確に答えられない理由があった。
(高校生にもなって友人とはぐれて迷ってたなんて。そんなくそ恥ずかしいこと、言えるわけねえだろ……)
迷子といえば、彰真たちに連絡をしていない事も思い出した。
こっそりメッセージを送れないかと思ったが、ポケットに入っているはずの携帯が見つからない。
(くそ、どっかで落としたか?)
しかし、見栄を張って未だすっとぼけた態度を見せ続ける輝へ美里はこれ見よがしに深くて長いため息を吐いた。
「連れに心霊スポット巡りに付き合わされたんだよ!!」
それが良いのか悪いのか輝にとっての引き金を引くことになった。
ため息を吐きたいのは自分の方だというのに、吐かれる側になってしまった輝の語気が荒ぶる。
「あの廃神社に面白いものがないか冷やかしに行っただけ。それ以上は何もしてないし、触ってもいない。……これは本当の話だ。何なら、お前らの神に誓ってもいい。だから、そう睨むな」
まるで人一人くらい余裕で殺したことがあるかのような美里の鋭い眼光は、輝が必死に釈明しても崩れなかった。
「……まぁ強いて言うなら? 悪かったよ。迷惑かけて」
だから、観念して輝は吐き出した。
「悪かった? ……お前、あの場所がどういう場所かも分からずに行ったのか? 本当に馬鹿じゃないのか?!」
「だから、ごめんって謝ってんだろ? なのに、何でそんなに責めらんなきゃなんねぇんだよ!」
「それはお前が……!」
「まあまあ、二人とも落ち着いて。輝君、大丈夫です。君が無実なのは信じていますよ」