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その名も呪い師5

「そして、この世の万物は、すべて万物の理りに従って存在しています。人には人の道があるように、魂にも進むべき道というものがあります」

「進むべき道?」

「すごくざっくり言うなら、輪廻転生の輪ですね。新たな生を得るための魂にとっての道です」


 仏教かなんかで人は死んだら、魂は生まれ変わり、神道だと守り神となってこの世に留まり続けるとかどこかでそのような話を聞いた覚えがある。


「ただし、その輪廻転生の輪に乗るには、負の想念を完全に祓い落とさなければなりません。もっと分かりやすい言葉に置き換えると、未練と呼ばれているものでしょうか」


 美弦が言うには、見えないだけで輝たち生きている人間が住む現世(うつしよ)とあの世の者が過ごす幽世(かくりよ)は、繋がって(重なって)いるらしい。


「この世への未練や執着が強すぎると、負の想念体を纏い続けた魂はやがて怨霊へと変わります」


 大抵の魂は亡くなってから四十九日までの間に人間だった時の自分の思い出や感情と折り合いを付け、次第に人間としての自我を忘れることを受け入れていくのだそうだ。


「恨みや憎しみを募らせて怨霊となると、輪廻転生の輪に乗るのは難しくなりますし、負の想念が強ければ強い程、自力で成仏するのは不可能です」

「はあ……」

「つまり、下手すれば恨みを抱えて一生彷徨ったままってことです」

「……なるほど」

 

 要するに、彼ら呪い師は、次のステップへと進むための準備期間である四十九日を過ぎても、何らかの事情を抱えて現世に留まっている幽世の世界の住人たちをあるべき場所へと導いているというわけか。


 『殺してやる』と輝を襲ってきたあれこそ、まさに死して尚恨みを忘れきれずに彷徨っていた魂ってやつなのだろう。


「そんな彷徨える魂を還るべき場所へと導くのが私達の仕事の一つなのですが……不思議なことに、ここ最近で怨霊や悪霊たちの活動が一気に活発になったんです。古戦場跡や、廃病院などといった古くから曰くのある場所を中心に」


 それが現時点での懸念材料なのだと美弦は話した。


「といっても、数百年・数千年単位の長い歴史で見れば、まだまだ誤差の範疇みたいなものですけど」


 怨霊は恨みの程度も、その数もさまざまで、把握しきれない程あちこちにいるらしい。


 でも、自分の存在を視えも感じ取れもしない生者に何か悪影響を及ぼせるほど強い力を持った怨霊の類は一部の例外を除いてそう多くないようだ。


 しかし、先程の説明にもあった通り、ここ数年で霊によってもたらされる被害ーーーつまりは、霊障を受けて、呪い師や神職たちに駆け込む人の数が増えたのだという。


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