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その名も呪い師

 置かれているのは簡素な机と椅子のみという、取り調べ室のような無機質な部屋の中。 


 輝は固くて冷たいパイプ椅子に無造作に縛り付けられていた。


 “時がくれば解放する”


 そんなたったの一言で拘束されてから、もう結構な時間が過ぎているはずだ。


 なのに、輝の身には一向にその時が訪れてくれそうな気配はなかった。


「一体、いつになったら解放してくれんだよ……」


 見張りのつもりなのだろう。入口付近の壁に背を凭れて佇んでいる男にわざと聞こえるように輝は嫌味を垂れた。


 そう。廃神社から輝を問答無用で連行したあの男だ。


「……」


 しかし、瞑想でもしているらしく、先ほどから男の身体はピクリとも動かず、反応はなかった。


(……もしかして、立ったまま寝てんの?)


 結構な時間が流れても、身じろぎ一つしない男の身体は、彫刻染みた造形も相まってまさしく寺社に祀られている石像のようだ。


「おーい!」


 とりあえず、懲りずに声を掛けてみる。


「……」


 反応はない。


「もしもーし? そこの髪の長いお兄さーん! 聞こえてますかー?」


 輝は投げ掛ける言葉の数を少しばかり増やした。


 いかにも間抜けな光景だと自分でも思うが、他に方法がないので致し方ない。


「……」


 でも、やはりこれも反応はなく、男の長い睫毛のたった一本でさえ動きを見せることはなかった。


(あくまで聞こえてないふりってか?!)


 何ともいけ好かない男だ。


 最初は穏便に話し合いで解決しようとしていた輝も、こうことごとく無視を続けられては、さすがにムカついてきた。


「おいったら、おい! 絶対声くらいは聞こえてんだろ?! 無視してんじゃねえ」

「うるさいな。少し黙れ」

「!!」


 男が組んでいた腕を無造作に解くと同時に、何かが飛んできて輝の口にぴたりと張り付いた。


 それは、よく神棚とかに飾られている一枚の札のようなものだった。


「んーー??!」


 いったいどんな仕組みなのやら。それが飛んできてから、一切声を出すことが出来なかった。


 貼り付けられた紙が輝の気道を見事に塞いでいる。


 息が喉に詰まって苦しい。このままだと窒息死してしまいそうだ。


「ん、んー!!」


 じたばたと手足を動かして振り落とそうとしても、喉から出るのはただの呻き声となるだけで自分の体力が削られていくだけだった。


(手足を縛られたうえに、猿轡代わりのお札だなんて)


 唯一自由な首を動かして胸から足までの全体を見下ろす。


(これじゃあまるで俺が捕縛された犯罪者か要注意人物みたいじゃねえか! ……いったい俺が何したっていうんだ。もし、このまま死んだら、絶対に恨んでやる)


 そう、目の前の謎の男による理不尽な扱いに恨みを募らせかけた時だ。


「いやあ、遅くなってごめんなさいです。待ちくたびれちゃいました?」


 扉が開いて誰かが現れた。

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