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出会い10

(さて、どうしたものか……)


 独りでの遭難を免れたのはいいが、見知らぬ少女と人知れぬ場所に2人きり。


 しかも、相手は怪我をしている。


(セクハラやら何やらに敏感なこのご時世、前抱きかかえるわけにもいかないしなあ……)


 助けを呼ぼうにも、輝の携帯は圏外だし、これまた嬉しくない偶然で、彼女の携帯は充電が切れているそうで無理だ。


「えーと、どうします?」


 芳しくない状況に輝は困り果てて、頭を掻いた。


「……あ」

「あ?」

「う、後ろ……」


 彼女は何かを発見したようだ。その事を知らせるように輝の背後を指差した。


「……え? っ!!」


 しかし、輝が振り返るよりも先に、首元に何かがにゅっと伸びてきて、想像も絶する力で締め上げられた。


 輝は振払おうと大きく身体を捩るも、動きに反して指先大の得体の知れない感触が柔らかい肉と(すじ)の隙間を押し潰すみたいにじりじりと奥深くに食い込んできた。


 吐息は野生の獣の纏う生臭さにも似た()えた匂いを放っており、肌を這う温度はこの世のものとは思えない程に酷く冷たい。


 どうにか薄気味悪い存在から逃れられないかと輝がそれと必死に攻防を続けていると。


『コロシ…テ…ヤル』


 お伽噺に出てくる死にかけの老婆が発した音のようなガラガラに濁った耳障りの悪い不快な声が輝の耳元で囁かれて、全身の毛が鳥肌で逆立ったのが分かった。


「……っ!」


 その瞬間、輝は渾身の力を振り絞り、ありったけの力でそれを押し退けた。


 目線を前方に固定し、警戒しながらも距離を取る。


 輝に思いっきり弾き飛ばされた人の形をした黒い塊。


 それは、少しの間地面にぴしゃりと張り付いたままぴくりとも動かなかった。


(……やったか?)


 が、どうやら大したダメージはなかったらしい。


 程なくして人形の影はゆらゆらと奇妙な動きで立ち上がると、また此方に向かって攻撃を仕掛けてこようとする動きをみせた。


(おいおいおいおい! いったい、どうなってるんだ?!)


 完璧だと思っていた対処法があっけなく通用しなくなった事に輝は当然の如く慌てふためくことになる。


 力技が通用しないなら、輝には他に影を倒す術を持ち合わせていないからだ。


「あ、あの……大丈夫……ですか?」


 思考停止と共に動きまでもが固まった輝を見上げるくっきりとした薄紫の瞳は、不安気に揺れていた。


 それを目撃した輝の口からするりと言葉が出てきた。


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