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出会い9

「おーい、彰真ー! どこにいんのー?」


(おかしいな。駐車場から参道は一本道だったはずなのに……)


 考え事に没頭し過ぎていたから、気付かない内に自分一人だけ脇道に逸れてしまっていたのだろうか?


 輝は分岐道を探して振り返った。


 しかし、木々が鬱蒼と続いている風景が見えるばかりでほとほと困った。


 視覚が頼りにならないならと、耳を澄ませてみたが、足音一つ聞こえなかった。


 おまけにポケットから取り出した携帯は奇妙なことに圏外を示している。


「……っ」


 頬を撫でる生暖かい風に背筋が凍る感覚がした。


 冗談じゃない。こんなところに一人だけ取り残されるなんて。


 圏外のままの携帯をもう一度握り締めた時。


「きゃあ!!」


 どこからか女性の悲鳴が聞こえた。


(……あっちか?!)


 きっと愛佳先輩だ。彼女の声が聞こえたということは、多分、皆そこにいるんだろう。


 輝はそう信じて疑わずに声の聞こえてきた方角へと走った。


「愛佳先輩ッ……?!」


 しかし、輝の目に飛び込んできたのは愛佳でも、和真でも高橋でもなかった。


 巫女装束のような白の襟付きの上衣に赤色の袴。


 そんな出で立ちの見知らぬ女子が、あの影たちに取り囲まれているところだった。


 ちょうど月が雲に隠れてしまって、遠目からはシルエットしか分からない。


 それでも、服の上からでも分かるほっそりとした華奢な肢体が地面の上で僅かに震えていた。


(……何でこんな所に女の子が?)


 予期せぬ光景に面食らいつつも。


「離れろ、この野郎ッ!!」


 すぐに気を取り直した輝は勢いで“それら”に飛び掛かった。


 黒い靄たちへの対処法は意外と簡単だ。できる限りの大声で近寄れば、霧散する。


 近くに転がっていた廃材を叫びながら思いっきり振り回すと、思った通り奴らは蜘蛛の子を散らすように退(しりぞ)いた。


「大丈夫ですか? 立てます?」


 近寄って女の子に手を差し伸べると、彼女はふるふると頭を動かして蚊の鳴くような声で答えた。


「……それが…足を捻っちゃって……」


 怪我した患部が痛むらしく、少女は足首を抑えている。


 一人で歩くのは愚か立つのもままならない様子だ。


 輝は蹲る彼女に手を差し伸べてとりあえず道の真ん中から木陰へと移動させることにした。

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