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19.オレンジの戦い方

注意:多少グロテスクシーンあります。

桐谷陽が、現在覚えてる技はローキック、正拳突き、突進、頭突きーーーそして、吸血鬼(ヴァンパイア)白昼夢(デイドリーム)


桐谷の血液を散布する事で、目の前に障害物や動物の気配があれば、それが桐谷であると錯覚させる。レベルが高い程効果が増す、トキワも使用していた技だ。

確か人狼が召喚した狼のレベルは15、私と同じ。この技、レベルが自分より弱くないと効きにくいんだよ。


「でも、さ。この真っ赤な煙の中で頼れるのって嗅覚だけでしょ?」


峰特製救難信号狼煙玉、真っ赤な煙が空に上がる。これで救援を呼びつつ、この狼煙玉煙幕的役割で周囲も赤い煙が広がっていく。そして、あいつらが散々両腕噛んだり引っ掻いたりしてくれたから。血は垂れ流し。出血死の可能性は、自動回復でカバー。

後は、人影さえ見えてくれれば、うん。


「飼い犬に、噛まれる気分を味わえば?」


狼9体は、見事に呼び出された主を襲いに行った。突進、切り裂き、噛み付き。桐谷が、そして私が。味わった痛みを、こいつにも味わって貰う。報復だ。



ちなみにこの技、桐谷が覚える技で唯一の搦め手なのでプレイヤーからは賛否両論となっている。真っ直ぐな桐谷がこんなの使わない!勢と友人の為に手段を選ばなくなった、勢。他にも少しずつ吸血鬼化してる萌えとか、ダンピールなのに何故技名吸血鬼?という意見もあった。

ちなみに私は、このイベントを楽にクリアできるので遠慮無く使ってた。おまけにこの技で同士討ちしたエネミーの経験値は、技の使用者に入る。つまり経験値稼ぎに超有効。ただ使用する時に、自分の肉体の一部を傷つけ出血させる必要があったので。正直前の死に方が死に方なので、現実に使うのは本気で嫌だった。痛いの無理怖い喧嘩したことないオタクの耐久性、紙だぞ。

ちなみにリアル桐谷がこの技覚えた時は、ものすごく複雑そうだった。自分が本物の化け物になるような傾向みたいで、恐怖すらあったみたいで。



だから互いにこの技は封じ手ということ、にした。




周囲の煙が晴れていく、木から見える地上の景色はーーー新たに増えた、狼の死骸9体。脚がなかったり、首が無かったり、五体満足ではあるけど、変な方向に折れ曲がってたり。骨が露見してたり。グロテスク。……桐谷が頭潰してるの見てなかったら、吐いてたな。今日絶対肉食えない。


「……ヤッテ、クレタナ。ニンゲンフゼイガアアアアア!」


うわ、しゃべったああああ!いや、よく考えたら人の血混じってるもんね!ゲームでは声無いけどリアルでは喋りあるよね、すっごいがらがら声でまじ怖い!

人狼は怒っているのか、私が登ってる木を殴った。折れた。怖すぎない?

木が倒れる瞬間、峰のアイテムショップで買った紫色のカラーボールを投げつけた。目元にヒット。


「よし、目潰せた!」

もちろん目潰しだけが目的じゃない。このカラーボールのアイテム名は「呪詛玉(じゅそだま)」といって、エネミーに猛毒、麻痺、昏睡のどれかを引き起こす。ちなみにランダム。

人狼は、呻き声をあげた。瞼が紫色に変色した、多分猛毒だ。

「後は、耐久戦!ひたすら鬼ごっこでしょ、ってうわあああっ!?」

目潰してるけど、気配で追ってくる!?全力で走るしかない、前の身体なら即捕まって殺されてる。痛い死に方はもうしたくない。



相手のパンチを紙一重で避ける動体視力、相手の蹴りを両手でガードして耐える反射神経と耐久性。

ただ、私が上手く桐谷のポテンシャルを生かせてない。でも逃げるしかない。奴が毒で死ぬまで逃げれば、経験値確保。

森の中を走り回る。木の上に跳躍で登って、その木が折れて。それを何度も繰り返す。



「……オワタ、かもね」

人狼が瀕死になった状態、辛うじて立っている状態になって。私と人狼のいる範囲100m圏内が、折れた木だらけになって。

その騒ぎを嗅ぎ付けた、狼の群れ。



「……悔しいなぁ、あともう一歩で勝てたのに」

じわじわと、やってくる死。

もう痛いのはやだな。でも、後悔はないな。

ーーーごめん、嘘だ。




「………約束、果たせてない」




桐谷との、約束。果たしてないのに、死ねない。桐谷も一緒に死ぬし、いや元々桐谷が引き起こしたのが元凶だし。でも、私も逃げなかったのが悪い。経験値を優先した、狩人の基本は命あっての物種。

ゲームみたいに、甘くないことだってある。

私は血が止まった右腕に、自分の歯を突き立てようとした。ダンピールだから、一応八重歯っぽい、小さな鋭い牙が存在する。吸血鬼白昼夢を再度発動させるために覚悟を決めた、その瞬間。





周囲に圧力がかかる、感覚がした。

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