12.シンプルに、自己紹介イベント
何時もより、少し長いです。
「では、一人一人自己紹介をしてもらおう。狩人の異形狩りは、二人一組が基本だ。大規模な異形狩りの場合は、基本を外れることもある。君がパートナーとして行動する人物だ、しっかり聞いておくれ」
理事長の言葉に、頷いた。攻略対象ぷらす未来のラスボスの自己紹介、これを生で見れるのは興奮するかも。桐谷が精神抑え付けてくれるから、落ち着いてるけど。サンキュー桐谷、後で横浜家系ラーメン食べに行こうね。
「改めまして。鳴神誠一郎、魔術師。この中では最上級生、高等部三年だよ。得意な魔法は攻撃と、支援魔法だね。君の役に立てるといいんだけど」
鳴神先輩は雷属性、範囲魔法と回復魔法が得意。ただ体力ゲージが少ないので、ゲームでペアを組む時は桐谷で攻撃受けながら先輩で魔法ぶっぱなすという戦い方してた。ちなみにレベルカンストで、最高火力の雷単体攻撃魔法を覚える。
「俺、八島祭。高一だから桐谷ちゃんとタメ!職業は御霊使い、後ろにいるのは社で俺の姉貴で相棒。異形じゃないから怖がんないでな?今度一緒に親睦兼ねて、遊びに行こうぜ」
陽キャの祭は、表向きは女好きの軟派系男子。御霊使いというのは、力の強い幽霊から力を借りて戦う。社ちゃんは、生前とても強い霊力を持った巫女さんだった。特技は社ちゃんの霊力を借りた弓での遠距離光攻撃と、祭自身の防衛結界や浄化の祝詞。祭自身もこのひだヴァンの舞台『稲荷町』にある、八島神社の神主だ。霊力は強く、レベルカンスト技の異形封印の祝詞は強力。
「ぼく、音村伊織です!中等部三年で、職業は浄化師だけどぼくは歌い手って名乗ってます!……あの、悪霊やゾンビとか気持ち悪いの以外だったら、ぼく頑張れます!」
ワンコ系可愛い男子の伊織君。浄化師は悪霊や生きた屍等を浄化して、成仏させる職業。ただ伊織君は浄化師が本来使う聖水等の道具無し、自分の歌声だけで浄化させる。彼の真骨頂は体質、異形を魅了するフェロモンを持つ。異名は本人も不本意で『死霊の花婿』、ちなみにこの体質のおかげで、悪霊やゾンビ系スケルトン等グロテスクな異形が大の苦手。小さい頃に集団に襲われかけたらしい、そりゃトラウマなるわ。
「犬居真矢、高二で犬神使いや。入学遅れとるから最年長は俺やな、今年成人やし!非礼もあるしなんでも頼りぃ」
犬神使いは、犬の神霊を使役し攻撃する。密偵や内偵も犬神にお願いしてる、魔術にも覚えがあり、防衛魔術の使い手。ただ、本人自体に攻撃魔法は使えない。幼い頃のトラウマで、血を見たり嗅いだりすると嘔吐するから。なので肉類一切食べられない。おそらくこのガタイができた栄養はプロテインだ。
で、この犬居。実は鳴神先輩の義兄で、父親が同じ。全く似てない。
「一宮飛鳥と申します、中等部一年です。魔術師の末席ですわ。桐谷さん、貴女は私の預かる寮で生活していただくことになります。戦いでもプライベートでも、支援致しますわ」
大和撫子系女子、飛鳥ちゃん。桐谷と同じ後天性で、元々は魔法使いの家に生まれた一般人だった。交通事故で、目の前で両親が他界。親の世界に近づきたい願望だけで、悪魔との取引で魔力を得て魔術師になった。取引対価は死後、自分の魂を悪魔に喰わせる。彼女の得意魔術は身体強化だけ、身体能力を向上させ妖刀で切る。だから戦闘スタイルは桐谷に似てる。武器は日本刀、セーラー服に日本刀って押さえるとこ押さえてると思う。後飛鳥ちゃんはお金持ち。自分の住んでる豪華な屋敷を、寮として格安で提供してる。
「藤村森生、一宮家執事長。……高三で、職業は宿り木。同じく寮生活で不便がないよう、サポートする」
眼帯以外はごく普通の平凡男子高校生の森生は、飛鳥とは主従関係であり幼馴染。飛鳥が悪魔と契約したのを目撃した際、錯乱した飛鳥に右目を抉られ飛鳥の契約した悪魔を身体に入れられてしまった。悪魔の力を寿命を一日喰わせる事で、自分が使う事ができる。結果、狩人として活動できるようになったという変わり種。飛鳥と森生の主従は人気が高い、私も好きだ。ーーー死ぬ前には、悪魔と一緒に封印されて飛鳥を守るんだって。愛でしょ。技は炎攻撃と護身術。
「拙者、峰文彦と申しますぞ!中等部二年でござる、職業は退治屋!アイテムショップも営んでおりますぞ、宜しくでござる!」
……本開いたまま、顔上げて自己紹介はいつ見ても反則だ。峰は肉体のない異形は見えない、触れない、声も聞こえない。おまけに霊力も魔力もない。彼の武器は肉体、卓越した戦闘能力を持つ。こいつの、遠距離系の銃と近接系の日本刀の強さはやばい。基本動かないのが戦術。笑みを浮かべて遠い敵を屠り、近付いてきた敵を切り払う。普段は妹属性好きの超絶クソオタクなのに、異形狩りの時は至って冷静。このギャップ萌えがやばい。後、自分が狩った異形の一部を使ってアイテム作って売ってる。戦闘でも道具でも本気でお世話になった。
攻略対象が一通り自己紹介が終わり、つぐみたんが立ち上がった。にっこりと、愛らしい笑顔で。
「井吹つぐみ、峰君と同じく中等部二年です。ーーー二つ名は、【同胞殺し】です」
にっこり笑う笑顔が愛らしく、強く。でも何故。
彼女の自己紹介を見る度に、胸が痛くなるんだろう。