11.調査報告と、仲間入り
早く全員の名前公開したい、割りと文章で特徴を伝えるのって難しい気がします。長くなるのよくない。
「桐谷陽、稲荷第一中学校を今年無事卒業。稲荷第一では女だてら不良の元締めしとったんやね」
犬居真矢は、学園の為に外部からの転入生や入学生の素行を調査して学園に報告する調査部隊のリーダーだ。校内にいる不穏な動きも調査し、報告する。
……それだけだったら、好きになったと思う。だがいかんせん、犬居はつぐみたんがガチで嫌い。その理由は至って正当で、それでも推しに対して行動が冷たいと複雑なんだよ。
「でも、犯罪はしとらんね。むしろ腕力でねじ伏せて、校内の治安維持しとった。一中ではいじめが一切ないのは、君の功績や。トキワが黒森常磐として、君の親友やったのは本気で気の毒やったと思う」
落ち着け桐谷、興奮するな。胸が痛い、桐谷の感情がダイレクトで伝わってくる。
「……プライバシー侵害、っつー言葉知ってるよな?」
口元から両手を離して、机の上に置く。
そして、桐谷に少し同調して犬居を睨み付けた。学園に新しい人間を入れるのに、調査するのは当然だ。犬居の仕事は悪くない、それでも桐谷を発散させなきゃ私がしんどい。
「ごめんなぁ、狩人は道を踏み外すと異形になるんよ。俺はそれを事前に防ぐ為、人となりを学園に報告せないかんのよ。始祖から生まれたダンピール、これを受け入れるには調査必須やった」
両手をぱん!と叩いて詫びのポーズをする犬居に、これ以上何も言わないことにする。桐谷も、睨んだことで少し落ち着いたみたいだし。
「まぁ、彼女は俺らの敵にはならんよ理事長。そこにおる【同胞殺し】なんかより、ずーっと仲良くできると思うで」
冷たい視線で、つぐみたんを一瞥した瞬間私の頭が沸騰した。
ーーーその悪名をつぐみたんの前で、言うなよ大馬鹿野郎。右手に思わず、握り拳作って。表情が歪んで殺気が漏れそうになったのを、逆に中にいる桐谷に抑え付けられた。桐谷表に出てないのに、すげー精神力。短気だけど。
「真矢ちゃん、もーいいでしょ?……で、理事長。なんで俺ら9人を呼んだの?」
陽キャマジナイス、切替上手い。成仏して自分のいたところにまた生まれたら、絶対あんたの声優さんのCD買うから。……例え中の人が音痴でも。
「桐谷さんは、強力な狩人としての素質がある。だから、校内でも優秀な狩人の君達に彼女が育つまでのサポートをしてもらうよ。トキワの君への執着は、強い。トキワへのボディーガードも兼ねてだ。ーーー桐谷さん、もう普通の日常には戻れない」
理事長が、私に近づいて、右手を差し出した。
「ようこそ、清浄学園へ。ーーー優秀な狩人の素質を持つ君を、私達は歓迎する」
「上等だ、アタシは後ろは向かねぇ。……トキワは、私が止める」
一瞬だけ、桐谷に代わって理事長と強く握手をした。桐谷なりに自己主張したかったみたいだし、私もそっちの方がいいと思った。
名シーンは体験するより、第三者視点の方が得だし。