10.空腹が満たされた原因で、限界突破不可避
関西弁って、作者がちゃんと勉強してないと怒られそうな気がしてならない。本当は京都弁のキャラとか作りたい。でも勇気はないです。
「そこにいる、彼女だ。昨日稲荷第一中学校にレッサーヴァンパイア4体が出現。トキワに血を与えられた事により、稲荷第一中学校の卒業生4名が眷属化した」
淡々と、落ち着いたバリトンボイスで説明する理事長。若い頃は確実に女性に、いや今でも年上好きの女の子が簡単について行きそう。顔整ってて大人の物腰ってやつ。
「トキワは数少ない始祖、おまけに千年の時を永らえた最古の吸血鬼。永い年月を生きた吸血鬼が吸血鬼を生み出すには、それ相応の素質を秘めた人間ではないと不可能だ」
理事長が、じーっと私を見る。てか、みんな私見てる。いや一人だけ漫画読んでるクソオタクがいるけど!あんま見ないで、特につぐみたんは。心臓に悪い。
「……しかし、そこにいる桐谷陽さんはトキワに血を与えられても打ち勝った!始祖から生まれたダンピール、彼女が狩人として成長すれば!これは我ら狩人にとって大きなカードになる!」
誉められてても、心臓が痛い。私が表に出てるのに、桐谷の感情が伝わる。苦しいぐらいに、怒って悲しんでる。思わず心臓の位置に、手を当てた。
ーーー落ち着いて、桐谷。聞かなきゃ駄目だよ。
「もう既に、簡単な戦闘はできると思いますよー」
つぐみたんが、喋った。今日も変わらず声が可愛い、ってか誉められた。桐谷が誉められた、けど昨日後半戦ったのは私だし。てかこの発言ゲームではなかった!あがりそうになる、だが落ち着け。ここは会議室だ、後で一人になったらゆっくり萌えよう。
「昨日、すごかったんですよ!最初は身体能力上手く扱えてなかったんですが、最後は文句無しでした!限界突破を無意識に引き出してましたし、恐らく覚醒したばかりだったから言葉がいらなかったのかなーって」
……つぐみたんにかっこわるいの、見せたくなかったんです。シナリオねじ曲げてまじさーせん。
「待って、限界突破したなら彼女食事取らなきゃ不味いよ!ずっと寝てたんだよね!?普通限界突破した後、食事取らなきゃ餓死しちゃうからね!?」
ワンコ系男子、慌てて思わず立ち上がっちゃったよ。可愛いなおい、でもお座りしとこう。心配してくれたのは嬉しいけど。
限界突破使用後は、全身疲労が起きる。これはなんとなくわかる、座り込んだし。でももう一つを体験する前に、気絶したからなー。
……でも、起きた時に最高に空腹は起きなかった。むしろ満たされてる感じ。限界突破による空腹は普通の食事じゃ、満たされない。魂の底から食べたいと思った物を食べなきゃ、満たされない。量より質。
「桐谷さん、今すぐ食堂へ行こう。僕が悪かった」
あの、鳴神先輩真っ青な顔しないで。落ち着いて。そんな表情年下にさせるとか本当に辛いです。
「坊っちゃん、問題ないですよ。……私のチョコレート、砕いて少しずつ食べさせましたから。桐谷先輩、甘いもの好きなんですね?」
は?食べさせた?待って。鳴神先輩に対する冷たい声から、私に対しての明るい声の落差もすごいんだけど。
推しに、食べさせてもらった?
「……あ、の。それってもしかして、会った時に食べてたやつじゃないよね……?」
声が小さくなった。口元を抑える、頼む。食べかけはやめてくれ、今の食べさせた発言でもやばいのに。
「え、もしかして人の食べかけとかあんま口にしたくない感じでした?」
つぐみたん、首を傾げて聞いてきたよ。
「え、あ、う、うわああああああ!?」
やばい顔熱い!恥ずかしい!埋まりたい!嬉しいより恥ずかしい!魂の奥底でつぐみたんに食べさせてもらえたから、満足したってことがばれたらもう一回死ねる!だって別にチョコレート、私も桐谷も大好物って訳じゃないからね!
……思わず口元両手で抑えたよ。ごめん桐谷、キャラが壊れてる。口調桐谷の真似ずっとするの、無理かも。
「あっはっは!なんや、一中の龍って異名の割には随分純情やん。桐谷陽ちゃん」
明るい関西訛りで笑うなガタイのいい兄ちゃん。
思わず睨んだ。お前も好きな子に食べさせてもらってみろよ、精神的に限界越えるぞ。
「ああ、何で異名知っとるって表情しとるなぁ?ーーーごめんなぁ、俺調査部隊やから。俺の名前は犬居真矢、桐谷陽ちゃん。君の事調べさせてもらたよ」
攻略対象で人気投票二位、犬居。私の、苦手なキャラだ。
……でも都合よく解釈してくれてありがとう、睨んだのは君が私を笑ったからだからね!