36/37
チョコをもらう、ということ
長く生きてくると、時には意中の人からチョコレートをもらうという栄誉を受けることもある。この日にきちんと顔を合わせて受け取ることができるほど近距離に恋人がいたことがないから、だいたいはその前後で会う日にもらうことになるのだが、それでもうれしいものはうれしい。
もちろん30回以上繰り返したこの日のうち、大方の割合は家族からチョコをもらうか、自分自身にプレゼントするか、そもそも気が付けば終わっていたか、だいたいそのようなものである。改めて思い起こせば、この日はただの2月14日であったことの方が、当然ながら多いのだ。
だからこそ、血縁もない、ただ好意があるからプレゼントしてくれる、という人がいると、ことさらに印象に残る。そんな幸運な年は片手で数え切れるほどのものだが、思い出せばむしろその数が多く感じられるのは、印象深い日になるから、であろう。
しかし、チョコをもらうこと自体がうれしいのではない。そもそもあまり甘いものは好きではないのだが、大事なのは、自分という存在をきちんと認識して、気にかけてくれている人がいる……という事実だろうと思っている。
大事なのは、プレゼントされた物そのものにあるわけではない。
プレゼントのために考えて選び、自分という存在のために渡してくれた、その思いがうれしいのである。




