肝試しで浮気
「はい皆んな! チーム分けは終わったわね! これからこの病院内に隠された赤いお札を十枚集めて戻って来てください! 沢山隠したから、ちゃんとチーム分はあるはずよ! ちなみに、怖がらせる仕掛けとかはないから、もしも見てしまったら‥‥‥本物です‼︎」
それを聞いて、全員の足が一気に震えた。
「さぁ、行った行った! 中に入ったらチームごとにバラバラになってね!」
全員恐る恐る病院に入り、チームごとにバラバラになった。
***
結菜は怯えていたが、それを隠しながら言った。
「そういえば、このメンバーでの肝試し‥‥‥いい思い出がないのですが」
二人は同時に、汚い床で全力の土下座をした。
「すみませんでしたー!! アンド、すみませんでしたー!!」
「なぜ二回行ったか分かりませんが、もう大丈夫ですよ。全く気にしてません‥‥‥な、なにか‥‥‥こっちに‥‥‥」
真っ暗な廊下の奥から、何か人影らしいものが走って来るのが見え、三人はくっつきながらしゃがみこんだ。
「柚木! あれなに!」
「分かんないよ! に、逃げようよ!」
「ご、ごめんなさい、腰が抜けて立てません」
その影は、どんどん三人に近づいてくる。
「助けてー!! 何も見えないー!!」
「美波さん?」
それは明らかに美波の声で、芽衣は安心して走って来る影に声をかけた。
「美波なの?」
「芽衣!? 芽衣〜!!」
影が全力で三人の元に走ってきて、懐中電灯で照らしてみると、それは号泣した美波だった。
「美波さん? どうしたんですか?」
「あ、結菜、いきなり懐中電灯の灯りが消えたの! 怪奇現象だよ!」
柚木が苦笑いで聞いた。
「電池切れただけだよ。それより真菜は?」
「あ‥‥‥置いてきた」
その頃真菜は、一人にされた恐怖で白目を向いて座り込んでいた。
そしてそこに、一樹と沙里チームが通りかかった。
「いい、い、一樹!!」
「は、はい!?」
「おお、お、女の子がいる!!」
「変なこと言わないでくださいよ!」
「ちゃんと見てよ!!」
「うわ!! いた!!」
「ゆゆ、ゆ、幽霊じゃないよね!?」
「分かんないですよ! 沙里さんが話しかけてください!」
「そういうのは男がやってよ!」
「む、無理です! ゲーセンでお漏らししたのバラしますよ!」
「殺すぞ?」
「ひぃー!?」
「早く行け」
「は‥‥‥はい」
二人は座り込んだ真菜に近づいた。
「あ‥‥‥あの、大丈夫ですか?」
「返事ないよ? やっぱりお化け?」
「もしかしたら置物の可能性も‥‥‥」
「てか、このジャージって学校のじゃん! あれ? よく見たら真菜じゃん!」
「本当だ!」
沙里は真菜の顔を掴んで、顔を上げた。
「真菜? どうした? ‥‥‥キャー!!!!」
「いきなりなんですか!?」
「し、し、し、死んでる!!」
「何言ってるんですか?」
一樹も真菜の顔を上げて確認し始めた。
「真菜さん? ‥‥‥ししっ、し、死んでますよ!!」
「だから言ったじゃん!! 大変だよ! 私達はあの悪魔の鬼教師にはめられたんだ!! 私達はこの病院から出ることができない!! 病院内で青くて顔がデカイ鬼に追いかけられるんだ!! そして‥‥‥そして‥‥‥全員食べられちゃうんだー!!!!」
「沙里さん!! 落ち着いてください!! いろいろ問題ありそうだからもう喋らないでください!!」
***
僕と鈴さんは二枚のお札を持ち、紗里さんの声を聞きながら三枚目を探していた。
「鈴さん、怖くないですか?」
「少し怖いかも‥‥‥でも、輝久君と一緒だから大丈夫」
「それなら良かったです。さっき沙里さんの声が聞こえた気がしましたけど、二人は大丈夫ですかね」
「大丈夫だといいね(伝えなきゃ‥‥‥自分の気持ち伝えなきゃ)輝久君!!」
「わっ!!」
鈴さんの急な大声に驚き、病室のベッドに腰を抜かしてしまった。
「ビックリしますよ」
「ご、ごめん。あのね、聞いてほしいことがあるの」
「なんですか?」
「‥‥‥す、好きです」
「えっと‥‥‥ま、前にも言ったけど、僕には結菜さっ、ちょっと!?」
鈴さんは急に僕にのしかかり、僕をベットに押し倒してきた。
「結菜ちゃんが好きなことぐらい知ってるよ。でも、私は今日までずっと我慢してきた。少しぐらいご褒美があってもいいじゃん‥‥‥ちょうどベッドだし、誰も見てないよ? 今だけは結菜ちゃんのこと忘れてさ、私と一つになって‥‥‥」
「ダメですよ! ん!」
キスをされてしまい、動けないように抱きつかれてしまった。
「今ので、もう浮気なんだらね。最後までしても変わらないよ? ほら、私の当たってるでしょ?」
「あ、あ、当たってるから離れてください!」
「ねぇ、輝久君?」
「な、なんですか?」
「今私のこと雑に扱わない方がいいよ? 雑にしたら、浮気したことバラすよ?」
「そんなの酷すぎます!」
「私ね、自分が地雷女だって分かってるの。だから教えてあげる‥‥‥地雷はね、離れなきゃ爆発しないよ」
「でも離れてください!」
鈴さんはまったく離れようとしない。
「結菜ちゃんとどこまでした?」
「‥‥‥ディープキス‥‥‥」
「そっか」
「ちょっとー!」
鈴さんは無理矢理ディープキスをしようと顔わ近づけてくる。
こんな状況何度目だ‥‥‥皆んな仲良くて、もう問題は起こらないと思ったのに!
頭に結菜さんの笑顔や涙が過り、僕は鈴さんを突き放した。
「やめてくださいよ!!」
***
輝久の声は病院内に響き渡り、嫌な予感がした沙里は、一樹と真菜を置いて走り出した。
「沙里さん! どこ行くんですか!」
嫌な予感がしたのは芽衣も同じだった。
「私行ってくる!」
「芽衣さん! ‥‥‥私も行きます。でも走ったら危ないですから、安全にゆっくりです」
***
鈴さんを突き放すと、泣きながら気持ちを伝え続けた。
「なんで? なんで突き放すの? このまま体で愛し合えば、きっと輝久君も私を好きになってくれる。私の気持ちだって‥‥‥もっと伝わるはず。それなのになんで?」
「結菜さんを裏切りたくありません」
「結菜結菜って‥‥‥そればっかり‥‥‥私の方が尽くしてあげられる。私の方が愛してあげられる‥‥‥だってこんなに好きなんだもん。どうしたら伝わるの?」
「ちゃんと伝わってますよ」
「伝わってない!! 伝わってたら私を突き放したりなんかしない!!」
「ピッピー、事故現場発見!」
「沙里さん?」
「鈴、だからやめとけって言ったのに、今すぐどっか行って」
「なんで? 今輝久君と話してるの」
「いいから」
「嫌だ!!」
そこに芽衣さんも駆けつけた。
「鈴?」
「芽衣‥‥‥」
その時、病室に結菜さんの声が聞こえてきた。
「この辺りから聞こえたはずです。あ! 病室の中から懐中電灯の光が見えます!」
すると沙里さんは、なぜか僕をベッドに押し倒した。
「全員私に合わせて、じゃないと友達やめる」
そう言って沙里さんは、僕にキスをした。
「ん!? んん!」
「‥‥‥沙里さん?」
「あ、結菜」
「輝久君と何をしているんですか?」
「キスだよキス。好きな気持ちが溢れちゃってさ」
「‥‥‥いいお友達だと思っていたのに‥‥‥どうして!!」
僕が動揺する中、芽衣さんが沙里さんに話を合わせ始めた。
「私も来た時にはこの状態でさ、ごめんね結菜。鈴もビックリして何もできなかったんだよ。ね? 鈴」
「う‥‥‥うん」
「沙里さん‥‥‥貴方とはお友達でいられないです」
「うん‥‥‥そうだね」
他の皆んなには沙里さんの髪で見えていなかったが、僕には見えていた。
沙里の今にも泣き出しそうな辛そうな表情が‥‥‥。
「さ、沙里さんは悪くないんです! たまたま躓いて!」
「だったら、さっきの輝久君の怒ったような声はなんだったんですか?」
「だから、私が無理矢理キスしたんだってば。なんか肝試しとかしてる気分じゃないし、旅館に帰るね」
その後、肝試しは中止となり、旅館に帰るまでの間、結菜さんは一切口を聞いてくれなかった。
※
翌日、沙里さんは皆んなと離れた席に座り、来る時のバスとは違い、全員暗い雰囲気の中で帰宅した。
そして‥‥‥今年も夏休みが始まった。




