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いい子にするから.....

***



修学旅行二日目の朝、沙里は部屋を出る前に、愛梨へのおみあげのブレスレットとカッターをポケットにしまった。

それを見た結菜は沙里に声をかけた。


「お土産持って行くんですか?」

「うん、大切な物だから持ち歩いた方が安心」

「そうですか」


結菜は、そんな沙里のことを微笑ましく思いながら、部屋を出る準備を進めた。



***



旅館を出ると、莉子先生が全員に預けていた財布を渡した。


「今日は自由行動です! ちゃんとルールを守って、他の修学旅行生とのトラブルは避けること! 分かりましたか?」

「はーい」


芽衣さんは鈴さんと仲良く手を繋いで旅館を出て行った。


「それじゃ! 私達は行きたい場所あるから行くね!」


美波さんと真菜さんは、家族に渡すお土産を買うために、いろんな店を回ると言って、どこかへ行ってしまった。


すると柚木さんは、眠そうにボケっと立っている沙里さんに声をかけた。


「沙里は本当にゲーセン行くの?」

「うん、近いところ探す」

「そっか、残念だけど気をつけてね!」

「行ってくる」


沙里さんは本当に一人でゲームセンターへ行ってしまった。

せっかくの修学旅行なのにな。


そう思っていると、結菜さんは僕の手を握って柚木さんに話しかけた。


「それじゃ、三人で輝久君が行きたがってたお寺とか行きましょうか」


柚木さんはノリノリで拳を挙げて言った。


「いこーう!!」

「あの、僕も行っていいですか?」


あっ、完全に一樹くんの存在を忘れていた。


「私、覗き魔とは一緒に行動したくありません」


その結菜さんの言葉に、僕は体がビクッとしてしまった。

そういえば、昨日の結菜さんの怒りはどこに行ったんだろうか。

修学旅行が終わった後に爆発とかしないといいんだけど。


「い、一樹君も一緒に行こうか」

「輝久君〜! やっぱり君だけが心の友だよ〜!」

「う、うん」


結局四人で行動することになり、四人で最初に向かったのは、東大寺という有名な場所だ。





東大寺に着くと、想像より人がいて、修学旅行生も沢山いてかなり賑わっている様子だ。


「おー! すごい! 入り口から既に御利益ありそう!」

「輝久君、楽しそうですね」

「あ‥‥‥ごめん」

「いいんですよ? 昨日のお話は後日しましょうね」


やっぱりそうなるか‥‥‥。


中に入ると、大きな大仏が姿を現して、結菜さんがカメラを取り出した。


「せっかくですし、皆さんで写真撮りましょう」

「撮ろう撮ろう! 私、撮ってくれる人捕まえてくる!」


そう言って走り出した柚木さんは、他の学校から来ていた修学旅行生の女子生徒グループを連れてきた。


「はーい! 撮りますよ!」


大仏をバックに写真を撮ってもらい、お返しに、女子グループの写真も撮ってあげた。


「一樹君! 一樹君一人の写真も撮ってあげる!」

「ありがとう!」


僕は、顔を交換して撮るアプリを使い、一樹くんと大仏の顔を交換して写真を撮った。


「撮れた! 次、柚木さんも撮りますよ!」

「やったー!」


バレないように笑いを堪えながら柚木さんの写真も撮り、続いて結菜さんの番だ。


「次は結菜さん!」

「はい!」


結菜さん‥‥‥面白すぎるだろー!!

いつも真面目な人だからこそインパクトが凄すぎる。修学旅行が終わったらプリントして渡そう。


その後、僕達は御賽銭を入れてお願い事をするために、行列に並び始めた。


トップバッターは僕だ。

皆んなとずっと仲良くいれますように!


二番目は結菜さんの番。

結菜さんは手を合わせて、なにかお願いをし始めた。


(輝久君とずっとずっと一緒にいれますように、それと、友達が悲しまない毎日が続きますように、お願いします)


次は一樹くんの番。 


(童貞卒業できますように)


最後は柚木の番だ。


「皆んなと毎日、楽しい日々を過ごせますように、あと、知らないおじさんの遺産が貰えますように」


柚木さん、めっちゃ声出してお願いしますやん。



***



その頃沙里は、無事ゲームセンターに着き、一人でメダルを買っていた。


(んー、とりあえず千円分でいいか。どうせ預けても次来れないし)


メダルを買い、ゲーム機を見て回っていると、いつも行っているゲームセンターには無いゲーム機を見つけて立ち止まる。


(これやってみよ。それにしても平日のこの時間は人が少なくていいな。ゲーム機選び放題だ)


沙里は一時間ほどメダルゲームで遊び、遂にメダルが無くなってしまった。


(あー、無くなった‥‥‥もう千円買おうかな)


追加で千円分のメダルを買い、元の席に戻ってゲームに夢中になっていると、沙里は四人の修学旅行生の男達に囲まれていた。

男達は明らかに不良グループのような見た目をしているが、紗里は全く気にしていない。


「ねぇ君、制服来てるけど何歳?」

「これ地毛?」

「めっちゃ可愛いじゃん!」

「一人で暇なら俺達と遊ぼうぜ!」


沙里はメダルゲームを続けながら言った。


「一人で遊ぶからいい」


すると、一人の男子生徒が沙里の右腕を掴んだ。


「いいからいいから! 遊び行こうぜ?」


沙里は手を振り解こうとしたが、男の力には敵わずに腕を引っ張られてしまった。


「やめて」

「大丈夫だって! 酷いことはしないからさ!」


沙里は持っていたメダルを落としてしまい、四人の男にゲームセンターから連れ出されてしまった。


「どこ行くの?」

「楽しい場所だよ」

「私戻る」

「戻れるわけねーだろ」

「そうそう! 今から楽しいことすんだからよ」


沙里はどんどん人気ひとけのない所に連れていかれ、古びた工場のような場所に連れてこられた。

中に入ると六人の不良達が待機していて、リーダーのような体格のいい男子生徒が言った。


「可愛いの連れてきたじゃん。やっぱりこの場所誰もいないみたいだぜ! とことん楽しめそうだな」


沙里は危機感を感じて暴れようとするが、どんなに力を入れても腕を掴む手を振りほどけない。


「どんなに暴れても無駄だせ? 今日から修学旅行が終わるまで、ずっと可愛がってもらえるんだ。少しは喜べよ」


すると沙里は、ポケットに手を入れて、ポケットの中で携帯を操作した。


(誰でもいい、誰かに繋がって)

「もしもし」

(繋がってるとしたら、もう電話に出てる頃かな)

「沙里さん? もしもし?」


沙里はポケットから携帯を取り出した。


「(結菜だ!)結菜! たすけっ」

「はい、没収〜!」

「助けて! ゲームセンターの近くの工場!」

「残念、もう切っちゃった」


リーダーがクスクス笑った後言った。


「助け呼んだのか? いいぜ、十分待ってやるよ。それでも助けが来なかったら、お前は俺達全員にめちゃくちゃにされる。まぁ、助けが来ても関係ねーけど」


その頃結菜は嫌な汗をかいていた。


(今の電話はなに? 沙里さんの声は明らかに慌てていた。 たすけ? 助けて‥‥‥)


結菜は沙里に電話をかけなおすが、電源が切られていて繋がらない。

だが、携帯で一番近くのゲームセンターを調べて、結菜は急に走り出した。


「結菜さん!?」


結菜は輝久の声も聞こえないぐらい焦っていた。


(私は沙里さんを守ると言いました。絶対に助けます!)


結菜は途中で転んでしまい、膝を擦りむいても構わずに走り続けた。


その頃沙里は、パイプ椅子に座らされて、ニヤニヤと見つめてくる男達にイライラしながらも怯えていた。すると一人の不良が言った。


「十分待つだけなのも暇だし、とりあえず財布出せよ」


沙里は大人しく財布を差し出した。


「おい! こいつめっちゃ金持ってるぞ!」

「この女、修学旅行終わっても使い道ありそうだな」

(愛梨がくれたお金なのに‥‥‥)

「てかよ、この女、常に無表情だし、感情あんのか?」

「男を教え込めば、いい女の顔になるだろ」


男達は爆笑しながら沙里を見つめた。


「おい、この赤いのなんだ? ブレスレット?」

「あっ‥‥‥」

「お? なんだ? 表情変わったな。これ大事な物なのか?」

「うん、返して」

「ほらよ! 取ってこーい!」


男はブレスレットを放り投げ、沙里は慌てて椅子から立ち上がって走った。

だが、ブレスレットは目の前で地面に落ち、バラバラに割れてしまった。


「ごっめん! 割れちゃった!」


また男達の笑い声に包まれる中、沙里は歯を食いしばった後、ポケットからカッターを取り出して男達の方を振り向いた。


「なんだ? そのカッターでどうする気だ? まさかそんなカッターで俺達を殺すつもりか? ほら、動かないでやるから、やれるもんならやってみろよ!」


沙里は何も言わずにブレスレットを投げた男に近いて、目の前で立ち止まった。


「おい、切らないのか? 最初っからそんな勇気なかったんだろ? だったら大人しくしとけよ」


沙里はいきなり怒りの表情で男の手を素早く傷つけた。


「くっ、てめぇ!! ふざけんじゃねー!!」

「やれるもんならやってみろって言ったじゃん。全員殺してやる!!」


沙里は二人目に素早く近づき、二人目の手も傷つけた。

その瞬間、沙里は後ろから蹴り飛ばされ、地面に倒れ込み、カッターから手を離してしまった。

一人の男がカッターを拾うと、沙里は急に体が震えだし、リーダーが沙里の髪の毛を掴んで引っ張った。


「ほら、立てよ」


沙里は無防備でお腹を殴られ、地面にうずくまってしまい、震えながら泣き出してしまった。


「ごめん‥‥‥なさい」

「あ? 聞こえねーよ」


リーダーは容赦なく、うずくまる沙里のお腹を蹴り、髪の毛を掴んで沙里を起こした。


「ごめんなさい! ごめんなさい! もうしないから、パパ、ママやめて! いい子にするから!」

「パパとママだってよ。こいつどうしちまったんだ?」


沙里は武器を持たずに一方的に暴力を振るわれ、過去のトラウマが蘇って子供のようになってしまったのだ。


「こいつ壊れんの早すぎだろ。前の女はニ日は持ったのによ」


沙里は大泣きしながら髪を引っ張る手を掴んだ。


「離して! ごめんなさい! もう許して!」

「泣いてるとこ悪いけどよ、そろそろ時間切れだ。おい、こいつ脱がせろ」

「やだ!! もう酷いことしないで!! いい子にするから!!」


工場の扉が開いた。


「沙里さんから離れなさい!!」


そう言って息を切らせながらやってきたのは結菜だった。


「なんだ? 助けに来たのか? お前もいい女じゃねーか。一緒に可愛がってやるよ! てゆうかお前、沙里っていうのか。ありがとうよ、可愛い友達を呼んでくれて」

「ごめんなさい‥‥‥ごめんなさい‥‥‥」


結菜はその場に落ちていた細い鉄パイプを持った。


「早く沙里さんから手を離しなさい!!」

「こんな奴守ってなんになるんだよ。こいつもう壊れちまったぜ?」


リーダーは沙里の髪から手を離すと、沙里は地面に崩れ落ち、泣きながら震え続けた。

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