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女湯覗き

「次は、奈良街に行きます! 明治時代に建築された町屋が軒を連ねる素敵な場所よ。お土産とか買うお店もあると思うから、買いたい人は自由に買ってね!」





奈良街に着き、僕達は全員で行動することにした。

それぞれが気に入った物を買ったり食べたりして、僕達は修学旅行を満喫している。



***



ガラス製品の売っている店で、沙里が水色で綺麗なガラス玉の付いたブレスレットを眺めていた。

それを見た結菜が、沙里に声をかけた。


「沙里さんに似合うと思いますよ」

「んー」


沙里は何か悩んでいるようだった。


「どうかしました?」

「愛梨へのお土産、どうしよう」

「そのブレスレット、きっと喜ぶと思いますよ?」

「でも、私に似合うって言ったじゃん。愛梨は? 何色が似合うかな」

「愛梨さんなら、赤とか似合うんじゃないですか?」

「んじゃ赤にする」


結菜は、愛梨へのお土産を見つめている沙里を微笑ましく思い、静かにカメラで撮った。


その頃鈴は、合宿の時に輝久に告白する計画を立てて、その時渡すプレゼントを選んでいたが、悩んで決められないでいた。

そんな時、美波はピンクのガラスがぶら下がったピアスを触れようとしていた。


「お姉ちゃんは触っちゃダメ!」

「なんで!?」

「絶対落として割るもん。それに、お姉ちゃんピアス空いてないじゃん」

「まったく真菜は心配性だな!」


そしてピアスに触れた美波は、真菜が言った通り、ピアスを落として割ってしまった。

美波は店員と目が合い、必死に謝った。


「ごめんなさい! ごめんなさい!」

「大丈夫ですよ! 怪我しませんでしたか?」

「はい! 弁償します!」

「大丈夫ですよ、次は気をつけて見てくださいね」

「あ、ありがとうございます!」


店員の優しさにホッコリしている美波の肩に、柚木が勢いよく手を回した。


「よかったね!」


その瞬間、とんでもない音がして、そこにいた全員、M組の生徒はもちろん、他のお客さんも全員が青ざめた。

柚木の手が棚に当たり、沢山の商品が崩れ落ちたのだ。

それには流石の店員さんも苦笑いするしかなかった。


「何してるんですか二人とも。すみませんでした店員さん、全てお支払いいたします」


結菜が財布を取り出すと、店員さんは割れてしまった商品の値段を計算し始めた。


「十二万二千円になります‥‥‥」


高校生にはとんでもない額だったが、結菜はさらっと支払いを済ませた。


外に出ると、柚木と美波は結菜に土下座して言った。


「結菜様!! ありがとうございまーす!!」

「いいですよ、次から自分で支払ってくださいね」

「はい!!」


その後も奈良街を観光して、集合時間に合わせてバスに戻った。


「皆んな結構買い物したみたいだね! 奈良街は楽しめた?」


全員なんとも言えずに、苦笑いで誤魔化した。


「ん? な、なんかあったのかな? とりあえず今日は旅館に戻ります!」



***



旅館に戻ってくると、莉子先生は結菜さんと僕に部屋の鍵を渡した。


「去年の合宿とは違って、今回は男女別に部屋を取りました」


はぁ、安心して寝れる‥‥‥。

みんなの目が死んでるのは何故だろう‥‥‥。


「十九時に夜ご飯が部屋に運ばれてくるから、食べたらそれぞれ温泉に入って、十時までには寝るのよ? ちゃんと見回り行くからね!」

「はーい」


一度みんなと解散して、僕は一樹君と一緒に自分達の部屋にやってきた。


「いい部屋だね!」

「そうだね! 輝久君は結菜さんと離れて寂しくないの?」

「うん、たまには男二人で話すのもいいじゃん!」

「だね!」


その後、夜食を済ませて温泉に向かった。


「一樹君! 露天風呂だよ!」

「俺、露天風呂初めて!」


すると、一枚の壁を挟んだ向こう側から、柚木さんと沙里さんの声が聞こえてきた。


「沙里はなんでタオル巻いてるの?」

「馬鹿にされるから」

「温泉はタオル巻いて入っちゃダメなんだよ! それ!」

「あっ」

「ツルツルだ」


僕と一樹くんは壁に耳を当てて、皆んなの会話を盗み聞きし始めた。



***



美波が湯船の中で立ちながら、結菜と真菜に言った。


「ちょっと二人とも並んで!」


二人は横に並びながら湯船に浸かった。


「んー、やっぱり真菜の勝ちだ」


それを聞いた一樹は興奮しながら輝久に言った。


「勝ちってなに!? おっぱ」

「一樹君静かに」


その時、芽衣が美波に後ろから抱きついて胸を揉み始めた。


「ほれほれ!」

「な、なに!?」

「揉まれると大きくなるらしいよ!」


それを聞いた沙里は、顔を真っ赤にして恥ずかしがる美波をよそに、自分で自分の胸を揉もうとしていた。

すると、結菜が鈴を見て言った。


「鈴さんは胸よりお尻が大きいですね」

「見ないでよ! 私より芽衣の方が大きい!」

「失礼な! 私はまだ小さい方だよ!」


柚木も湯船に浸かって言った。


「美波と沙里って、どっちが胸小さいの? ちょっと並んでみてよ!」


二人は横に並んで立ち上がった。


「M組一の巨乳、真菜先生! 審査をお願いします!」


柚木がそう言うと、真菜は張り切って立ち上がった。


「任せて! んー、これは難しい。二人とも絶壁ではないし‥‥‥んー、お姉ちゃんの勝ち!」


それを聞いた美波は嬉しそうに言った。


「本当!? んじゃ、一番小さいのは沙里だ!よっしゃ!」


沙里が少し不満そうに顎まで湯船に浸かる。


「なんで? 大きさ同じぐらいじゃん」

「お姉ちゃんが勝った理由はズバリ! 沙里ちゃんより乳首が大きい!」


美波は顔を赤くして怒り出してしまった。


「嬉しくねーよ!!」


沙里は美波を煽るような表情で見つめる。


「へっ」

「なんだその表情! 沙里のも大きくしてやるー!」

「やだ、引っ張ろうとしないで」


その頃一樹は、タライの上に乗った輝久に肩車されて、なんとか女湯を覗こうとしていた。


「輝久君、もうちょっと背伸びして!」

「バランス崩れちゃうよ!」

「よし! いい感じ!」


一樹が壁の上から顔を出した時、目の前には沙里の顔があった。


「えっ」


すると沙里は、無言でシャンプーを一樹の目に発射した。


「うあー!! 目がー!!」


二人はバランスを崩して床に叩きつけられてしまった。


その後、恐る恐る温泉を出ると、そこには浴衣姿の女子生徒勢揃いで待機していて、結菜が不気味な笑みを浮かべて言った。


「さぁ、私達のお部屋に行きましょうか」



***



僕達は結菜さん達の部屋に連れていかれ、二人並んで正座させられてしまった。

僕の目の前に結菜さんが立ち、僕を見下ろして言った。


「輝久君は、皆んなの裸が見たかったんですか?」

「僕は見てない! 見たのは一樹君だけ」

「私が聞きたいのは見たかったかどうかです」

「僕は‥‥‥」


ここで答えを間違えるな!


「結菜さんの裸が見たかっただけです!! 本当は一樹君に結菜さんの裸を見られるのが嫌だったんだ! なのに、一樹君は僕を脅してきたんだよ!!」


結菜さんが頬を赤くし、あからさまに動揺してる横で、芽衣さんが一樹くんを睨んだ。


「最低だね」

「違うよ! 輝久君と交代で見る予定だったんです! それに沙里さんの顔しか見えなかったし!」


必死な一樹くんをよそに、結菜さんが僕の手を引いて言った。


「少しの間、私は輝久君と二人で輝久君のお部屋に行きます。一樹さんのことは任せますね」


柚木さんは頭にタオルを乗せ、コーヒー牛乳を飲み干して言った。


「一樹となにしてればいいの?」


結菜さんはニコッと微笑みながら、皆んなの方を振り向く。


「処刑で」


そして、僕は結菜さんに手を引かれるまま自分の部屋に戻ってきた。

部屋に入った途端、結菜さんは僕の目の前で浴衣の帯を解いてしまい、僕は焦って顔を逸らした。


「ゆ、結菜さん!?」

「輝久君だから見せるんですよ? ちゃんと見てください」

「そんな! ダメだよ!」

「お願いします‥‥‥私だって恥ずかしんです。この行動を無駄にしないでください」


勇気を振り絞って結菜さんを見ると、結菜さんは浴衣の下にジャージを着ていた。


「え?」


結菜さんは恥ずかしそうな表情どころか、少し怒ったような表情で僕に顔を近づけた。


「動かないでくださいね。痛くしませんから」


結菜さんは僕の両手を後ろに回して、浴衣の帯で両手を縛り始めた。


「な、なにやってるの?」

「輝久君は嘘をつく時、おどおどするか、なぜかハキハキと勢いよく喋る癖があります」


心臓の鼓動が早くなったのが分かった。

殺される‥‥‥。


「どうしました? そんなに顔から汗をかいて、お風呂上がりなのに、また汚れてしまいますよ?」

「ご‥‥‥ごめんなさい」


結菜さんは完全に僕の腕を縛り、僕の前に戻ってきて、大きく目を見開いた。


「なぜ謝るんですか?」

「う‥‥‥嘘を‥‥‥」

「嘘を?」

「つきました‥‥‥」

「どうしましょうね」

「なにが?」

「もちろんお仕置きのことですよ。実際、輝久君は皆んなの裸を見ていません。ですが輝久君」


結菜さんは僕の胸に手を置いて爪を立ててきた。


「な、なに?」

「私以外の裸を見ようとした輝久君の心を私は許せません。輝久君は私以外の女性に興味があるんですか?」

「な‥‥‥ないよ」

「それじゃ、なぜ裸を覗こうと?」

「好奇心みないな‥‥‥」

「それは興味があるのと同じことです」


確かに同じだー!!


結菜さんは僕の右目の瞼を広げて言った。


「最後に見たのが私であるように、もう二度と、私以外を見れないように、この目をくり抜いてしまいましょう」


恐怖で言葉を発せない‥‥‥。

結菜さんならやりかねない!


「大丈夫です。そんなに震えないでくださいよ。目が見えなくなっても、私が一生面倒を見ますから。ずっと離れずに、輝久君の側にいますから」


その時、部屋のドアが開いた。


「結菜さん!? なんで男子の部屋に来てるの!? って、なんで輝久君は縛られてるの?」


莉子先生がナイスタイミングで財布などの貴重品を預かりに来たのだ。


「とにかく結菜さんは部屋に戻りなさい!」


結菜さんは無言で僕に微笑みかけて、部屋から出ていった。


「一樹君は?」

「女子の部屋にいます。とりあえず解いてもらっていいですか?」

「まったく、君達はまだ高校生なんだから、こういうプレイはまだ早いです!」

「これがプレイならいいですけどね‥‥‥僕は失明しかけたんですよ!?」

「こら! 大きな声出さない!」


その時、一樹君が泣きながら部屋に戻ってきた。


「輝久君〜、酷いよ〜」

「あれ? なんか声変じゃない?」

「沙里さんに、鼻の穴にマシュマロ詰められたんだ。全然取れないんだよ‥‥‥」


僕はグッドポーズで言った。


「いい非常食だね!」

「食えるか!!」


僕達は莉子先生に財布を渡して、しばらくテレビを見た後、大人しく布団に入った。


「一樹君」

「なに?」

「パラレルワールドにいた時、幸せだった?」

「もうその嘘はいいって」

「え?」

「最初から気づいてたよ」

「それじゃ、なんであんなあっさり別れたの?」

「やっぱりさ、芽衣さんの幸せが一番だったから」


一樹君、カッコいいとこあるな‥‥‥。


「それに、あんな優しくて可愛い子、僕なんかに相応しくないよ。芽衣さんには素敵な人と結ばれてほしい」

「うん、とりあえずマシュマロ取りなよ」



***



その頃女子部屋では、結菜と沙里以外の全員が、ぐっすり眠ってしまっていた。

結菜と沙里は眠れずに、こっそり部屋を出て、近くのコンビニでアイスを買い、アイスを食べながらコンビニの前で話しをしていた。


「結菜の何味?」

「抹茶です」

「美味しい?」

「一口どうぞ」


沙里は結菜の抹茶アイスをペロッと小さな舌で舐めると、少し嫌な顔をした。


「んー、私にはまだ早い味」

「気になっていたんですが」

「ん?」

「沙里さんは笑ったり泣いたりしないんですか?」

「んー、前したじゃん」

「いつですか?」

「私が輝久を奪おうとした時の、一連の流れで」

「あの狂気染みた笑いと、嘘泣きのことですか?」

「うん」

「そういうことではなく、嬉しくて思いっきり笑ったり、悲しくて泣いたりすることですよ」

「ない」

「いつも眠そうで無気力ですし」

「その方が楽だから」

「嘘ですよね」


沙里は何も言わなかった。


「沙里さんが生き生きしてるところ、怒った時しか見たことないです」

「怒ってる時は、自分が一番強いって勘違いしちゃうのかもね」

「沙里さんは、嬉しいとか感じる時はありますか?」

「あるよ? 嬉しいとか、今すごい楽しいとか、でも思うだけ」

「なぜですか?」

「小さい時、その感情を表に出すと、よく殴られたり髪を引っ張られたりされてた。うるさいって言われて、私は泣くことしかできなかった。いつからか嬉しいとか悲しいとかの涙は出なくなっちゃったけど‥‥‥でも、前に一度だけ、愛梨の前で笑顔になっちゃったことがある。ほっぺにもチューしちゃったし、あの時は自分でもビックリした。でも愛梨はツッコんだりしないで受け入れてくれた」

「もう今は、沙里さんを傷つける人なんていませんよ」

「そんなの分からないよ。世の中理不尽で溢れかえってる。喜べば殴られて、悲しんだら蹴られて、なんでお前がそんなこと言うの? みたいなこと平気で言ってくる奴も沢山いる。だから、無のふりをしていた方がいい。その方がトラブルが起きにくい」

「私が守ります」

「意味わかんない」

「私が理不尽から沙里さんを守ります。愛梨さんだっています。M組の皆んなもいます。私達は全員友達です‥‥‥挙げ句の果て家族になっても構いません」


それを聞いた沙里は、少しだけ口元が緩んでしまった。


「今笑いました?」

「笑ってない、それよりアイス」

「アイス?」

「溶けちゃったから新しいの買って。結菜ももう一本付き合って」


結菜は優しい表情で言った。


「いいですよ」

「次は結菜と同じ味にする」

「それじゃ沙里さんも食べれるように、ストロベリー味にしましょう」

「‥‥‥ありがとう」



***

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