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祝い

翌日、芽衣さんと鈴さんが仲よさそうに話しながら登校してきた。


「仲直りしたんですね」


結菜さんが話しかけると、鈴さんは笑顔で答えた。


「うん! 結菜ちゃんのおかげ!」

「二人の気持ちが通じたからですよ」


芽衣さんと鈴さんは笑顔で顔を見合わせ、教室が明るい雰囲気に包まれる中、莉子先生が教室に入ってきた。


「みんな注目!」


莉子先生のその言葉に、教室が静かになった。

その時、教室の扉が音を立てて勢いよく開いた。


「おっはよー!!!!」


その声を聞いて、鈴さん以外の全員が立ち上がった。

教室に入ってきたのは柚木さんだったからだ。

そして結菜さんは驚いた様子で柚木さんに近づいた。


「柚木さん!? もう体は大丈夫なんですか!? リハビリは!?」

「リハビリも終わり! ビックリするぐらいの回復力って褒められた!」

「だ、だって、昨日行った時は退院のこととか何も教えてくれなかったじゃないですか!」


柚木さんは満面の笑みで両手を広げた。


「サプラーイズ!!」


美波さんと真菜さんも嬉しそうに柚木さんに駆け寄った。


「おかえり!」

「ただいま!」


みんなが喜ぶ中、柚木さんは鈴さんを見て、鈴さんのことを指差した。


「だ、誰!?」

「え、えっと‥‥‥」


鈴さんが困っていると、芽衣さんが鈴さんの頭に手を置いて言った。


「名前は鈴! 私の友達! 仲良くしてあげてね!」


すると、柚木さんは鈴さんに抱きついて、鈴さんの頬に頬ずりしながら言った。


「仲良くしようね〜!」

「う、うん!」


その時、また教室の扉が開いた。


「結菜〜、ご褒美まだ?」


なんだかいつもよりテンションが低い沙里さんが入ってきた。

それを見た柚木さんは、沙里さんを指差した。


「だ、誰!?」

「前に話した沙里さんです」

「あー! あの小さくてツルツルの子!」


それを聞いた沙里さんは、顔を真っ赤にして怒りだしてしまった。


「結菜!! 何話したの!?」

「真実を話しました」


柚木さんは沙里さんに抱きついて、また頬ずりしはじめた。


「そんな怒らないでよ〜。本当に小さくて可愛い〜」

「やめて」

「沙里さん、ご褒美は放課後でいいですか?」

「あ、うん。それとね、私またM組に戻された」

「なにやらかしたんですか」

「結菜がご褒美くれないから、自分で愛梨の口にパンツ咥えさせたら怒られた。それより柚木だっけ? そろそろ頬ずりやめて。ほっぺた熱い。あと小さいって二度と言うな、殺す。」

「ごめんごめん! それじゃ沙里も私達の友達だ!」

「私と初めて会ったじゃん」

「そんな小さいことはいいじゃーん!」

「小さいって言うな!!」

「可愛いのが悪いんだ〜!」

「頬擦りやめて」


その様子を見た莉子先生が嬉しそうに言った。


「なんだかM組も賑やかになったわね! 今年の合宿、修学旅行、そして体育祭と学園祭も! 全員で楽しみましょうね! さて、授業をはじめます」


いや、なにその切り替え。テンション下がるわ。





放課後になると、沙里さんが結菜さんに話しかけた。


「ご褒美」

「ごめんなさい。柚木さんが退院したので、やっぱりご褒美は明日でいいですか?」

「嫌だ」

「それじゃご褒美はなしです」

「明日楽しみにしてる」


結菜さんは立ち上がって、柚木さんを見つめた。


「今日、私の家で柚木さんの退院祝いをしませんか?」


鈴さんと沙里さん、そして莉子先生以外が嬉しそうに言った。


「しよう!」

「沙里さんと鈴さんも是非来てください」


沙里さんは自分のカバンを持って教室を出ようとした。


「愛梨も呼んでいい?」

「いいですよ」

「わーい」


沙里さんは本当に嬉しいのかよく分からない反応をして教室を出て行った。


「ねぇ鈴、私の家覚えてる? 結菜の家の近くだから、私の家集合でいい?」

「わかった!」


芽衣さんが鈴さんに優しくしている光景を見ると、心がほっこりするな。


結菜さんは、あからさまにお呼ばれされたそうにモジモジしている莉子先生が視界に入ったのか、無表情で口を開いた。


「莉子先生も是非」

「ありがとう!(よし! 宮川さんに会える!)」


とりあえず全員家に帰り、十九時までに結菜さんの家集合ということになった。


僕は十八時五十分頃に着く予定で、一樹君と待ち合わせをして一緒に結菜さんの家に向かった。





結菜さんの家に着くと、既に豪華な食事が並び、全員茶の間で楽しそうに話していた。

すると、僕達に気づいた美波さんが手を振った。


「輝久! 遅いぞー!」

「まだ食べてないんですか?」

「結菜が、輝久が来るまでダメだって、もうペコペコだよ!」

「そうだったんですか! ごめんなさい!」


僕達が席に着くと、宮川さんがマイクを持って喋りだした。


「今日は結菜お嬢様の親友、柚木さんの退院祝いということで! 皆んなで楽しみましょう! カンパーイ!」

「カンパーイ!」



***



結菜は取り皿を二枚持ち、長く繋がれたテーブルを囲む、一緒に住んでる人と軽く会話をしながらおかずを盛り始めた。

二枚の皿いっぱいにおかずを乗せて戻ってきた結菜は、一枚を柚木に渡した。


「美味しそうなものだけ乗せてきました,遠慮しないで食べてください」

「ありがとう!」


そして、もう一枚を輝久に渡した。


「輝久君も沢山食べてくださいね」

「うん! ありがとう!」


そして結菜は、遠慮して食事に手をつけない鈴を見て、鈴の隣に座り優しく声をかけた。


「鈴さんも遠慮しないで食べてくださいね」

「こんな豪華なの初めてで、どれ食べたらいいか分からないよ」

「どれでも食べていいんですよ?」

「それじゃ‥‥‥あの海老フライ食べようかな」


結菜は取り皿に海老フライを乗せて鈴に渡してあげた。


「どうぞ」

「ありがとう‥‥‥いただきます」

「どうですか?」

「美味しい!」

「最高級の海老を使っていますからね。鈴さんはこういう雰囲気は苦手ですか?」

「うん。気つかうし、本当に食べていいのか躊躇しちゃう」

「そうですか。いいこと考えました! 取り皿を持って着いてきてください!」

「わ、わかった」


結菜と鈴は、バイキング形式で、食べたいものを一緒に探して取り皿に盛り付け始めた。

そんな中結菜は、鈴が選んだおかずを見ながら、全く別のおかずを乗せていた。

そして元の席に戻ると、結菜は自分が盛りつけたおかずを鈴に渡した。


「この二皿は鈴さんが食べていい分です」

「え、いいの?」

「当然です。私達はもう友達ですから」


鈴はとても嬉しそうにご飯を食べはじめ、結菜も安心したように食事を始めた。


その頃、海老フライを持ちながらよそ見していた美波の海老フライを、沙里がこっそり食べて、それを見た愛梨と真菜と芽衣と柚木はクスクス笑っていた。

そして自分の海老フライが尻尾だけになっているのを見た美波が言った。


「あー! 食べたの誰!?」


沙里が無表情のまま口元をモグモグさせ、無言で愛梨を指差した。


「愛梨! いっぱいあるんだから自分で取りなよ! この食いしん坊!」

「わ、私じゃありません! 食べたのは沙里です!」

「さーりー! 出せ! 私の海老フライ!」


美波は沙里の両頬を引っ張ってエビフライを取り返そうとする。


「痛い」


すると、結菜が優しい表情で言った。


「美波さん、海老フライどうぞ」

「やったー!」



***



一樹くんの隣で、みんなを見ながら食事をしていると、一樹くんがメロンを食べながら話しかけてきた。


「結菜さんって気配りができて凄いね」

「うん! 自慢の彼女だよ」

「それ、結菜さんに言ってあげたら喜ぶよ?」

「いつか言うよ。それより、莉子先生さっきから宮川さんにベッタリだね」

「そうだね。お似合いだと思うけど、生徒の前で恥ずかしくないのかな」

「莉子先生も必死なんだよ」



教室



食事もひと段落して、宮川さんがカメラを持って言った。


「せっかくですから皆さんで写真撮りましょう!」


M組の皆んなが並ぶと、愛梨さんは写真に映ろうとしなかったが、それを見た結菜さんが、ニコッとした表情で愛梨さんを見つめて話しかけた。


「愛梨さんも映りましょ?」

「M組の皆さんだけで映った方がいいかと思いまして」

「一人だけ友達が映らない写真なんてダメです」

(友達‥‥‥)


愛梨さんが嬉しそうに顔を赤らめると、沙里さんが表情を変えずに愛梨さんを手招きした。


「愛梨、おいで」


愛梨さんが沙里さんの隣に並ぶと、宮川さんが莉子先生に声をかけた。


「莉子! あ、莉子先生も一緒に映りましょ!」


全員が思ったであろう。

日頃は呼び捨てなんだ。ふーん‥‥‥と。


莉子先生も映り、全員集合で写真を撮り始めた。


「沙里さんでしたっけ? もっと笑いましょ!」

「笑ったよ」

「無表情にしか見えなかったのですが‥‥‥」


すると美波さんが、沙里さんの口に人差し指を入れ、内側から口を引っ張っり、無理矢理笑顔を作った。


「ほら、ピース!」


沙里さんは素直にピースし、その光景を見た皆んなが心からの笑顔を見せた瞬間、宮川さんはシャッターをきった。


全員カメラ目線の写真、沙里さんを見ながら笑う写真。素敵な写真が撮れた。


「今日泊まっていきませんか?」


結菜さんがみんなに問うと、莉子先生がムスッとした表情で言った。


「え、みんな明日学校よ? 宿題もあるでしょ?」

「学校にはちゃんと行かせます!宿題はこういう日ぐらい大目に見ましょ!」

「み、宮川さんがそう言うなら‥‥‥」

「そうですよ莉子」

「ちょっと結菜さん!? そうやって大人を茶化さないの!」


芽衣さんもニヤニヤしながら莉子先生を茶化しだした。


「今日の勉強は無しか! 莉子は優しいなー!」

「こら! 芽衣さんまで!」

「さすが莉子!」

「もう! 明日の宿題はいつもの倍にします!」


すると沙里さんが余ったメロンを食べながら言った。


「ダメだわ、この莉子大人気ない」

「沙里さんまで!」

「莉子先生も泊まっていってください!」

「え!?」


莉子先生はムッとした表情をしていたが、宮川さんの一言で、一瞬で笑顔に戻った。

単純な先生だな。



***



結局全員泊まることになり、最初に輝久と一樹が一緒にお風呂に入り、次に美波と真菜が一緒にお風呂に入り始めた。


「ふはー、最高の湯加減!」

「そうだね。それにお姉ちゃん、温泉以外で大きいお風呂入るの夢だったもんね!」

「そうなの! でも、今そんなことは問題じゃない! この湯は輝久が浸かった湯! エッチ湯だ!」


美波がお風呂に潜ると、真菜は平然と美波の夢を壊す一言を突きつけた。


「でも、一樹君も入ったよ?」


美波は勢いよく立ち上がった。


「そうだった! もう一回体洗わなきゃ!」

「そんな、一樹君を汚い物みたいに」

「輝久以外の男は汚い!」





美波と真菜がお風呂を出ると、次に芽衣と鈴が一緒お風呂に入った。


「大丈夫? 腕の傷、しみない?」

「うん、今はもう大丈夫だよ。傷見てもなにも思わないの?」

「うん! 全然! していいことかどうかって聞かれたら、なんとも言えないけど、それは鈴が生きた証だから」


それを聞いた鈴は、思わず芽衣に抱きついてしまった。


「ありがとう!」

「こら! 裸で抱きつくな!」





次に沙里が、愛梨とお風呂に入ろうと誘うが、愛梨は断って一人で入ってしまった。


(まったく、沙里はなんであんな変態なのかしら)


その後沙里は、一人でいじけながらお風呂に入り、最後に結菜と柚木が一緒にお風呂に入った。


「結菜、今日はありがとうね!」

「はい! 楽しんでくれましたか?」

「うん! こんな楽しいならまた入院して退院する!」

「変なこと言わないでください。それより、ご両親のこと‥‥‥なんで言ってくれなかったんですか?」

「あー‥‥‥聞いたんだ」

「はい」

「あまり思い出したくない過去だからね」

「ごめんなさい‥‥‥」

「いいの! 今は結菜達がいるから寂しくない!」

「大人になっても、ずっと友達でいましょうね。たまにこうやって、皆んなで集まりましょう」

「当たり前!」


その頃鈴は、廊下で輝久と話をしていた。


「ありがとうね」

「なにがですが?」

「ゲーセンで話しかけてくれなかったら、今みたいに芽衣と仲良くなれなかった」

「そのことですか! もう喧嘩しないようにしてくださいね」

「もちろん!」

「あ、あとね‥‥‥」

「なんですか?」

「‥‥‥やっぱりなんでもない!」

「そ、そうですか」



***



みんながお風呂を済ませ、寝る時間まで、全員で人生ゲームをして遊ぶことになった。


愛梨さんは貧乏生活で機嫌が悪くなり、僕は真菜さんと結婚して子供が四人もいる。

結菜さんが不敵な笑みを浮かべて僕を見つめたのは言うまでもない。



***



そして寝る時間になり、結菜は沙里と愛梨をタランチュラを飼っている部屋に移動させ、沙里に小さな声で言った。


「せっかくですから、明日ではなくこれをご褒美にします。この部屋も防音ですので、何をしても大丈夫です」

「お主も悪よの」

「いえいえ、お代官様ほどでは」


結菜は部屋の電気を消して部屋を出て、外から部屋の鍵を閉めてしまった。


「愛梨」

「なんですか?」


二人きりになると、沙里はすぐに愛梨にのしかかった。


「ちょっと沙里!! や、やめ! あっ♡ こら!!」


その頃結菜の部屋では、結菜が輝久を誘っていた。


「輝久君♡ 久しぶりに一緒に寝れますね♡」


それを聞いた鈴は驚いて声を出してしまった。


「え!? 二人とも一緒に寝るの!? それに久しぶり!?」

「私達は、お泊りした時は必ず一緒に寝ますよ?」

「そ、そうなんだ‥‥‥」


その頃莉子先生は宮川と二人っきりの部屋で泊まることになり、二人は同じ布団でいい雰囲気になっていた。

大人同士なのでいろいろあります。いろいろ......ね。



***

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