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人生が証明

土曜日の昼過ぎ、僕は一樹君と二人でゲームセンターにやってきた。


「なんのゲームする?」

「このVRゴーグルつけてやる、ゾンビゲームとかどうかな」

「いいね! 一緒にできるみたいだし、やってみよう!」


VRのゲームは初体験だから楽しみだな。


「すごいよ一樹君! 本当にゲームの世界に入ったみたいだ!」


一樹君から返事がない。

確かにゲームの音しか聞こえないから、僕の声も聞こえてないのか。


ゾンビゲームが始まり、予想以上の怖さにビビりながらも頑張ってプレイしたが、あっさり死んでしまった。


「あー! ゲームオーバーだ。楽しかったね! 次は何する?」

「うぅ‥‥‥」

「沙里さん!?」


VRゴーグルを外すと、隣で一緒にプレイしていたのは沙里さんだった。


「さ、沙里さん? なんで沙里さんがプレイしてるかも疑問ですけど、ゲーム終わりましたよ? いつまでゴーグルしてるんですか」


すると、一樹君がゲーム機のカーテンを開けた。


「ごめんね輝久君。なんかいきなり沙里さんが来て、やりたがったから譲っちゃった」

「それはいいんだけど、沙里さん、ゴーグル外さないでプルプル震えてるんだけど」

「よっぽど怖かったのかな?」


愛梨さんが沙里さん側のカーテンを開けた。


「ごめんなさい、ちょっと目を離した隙に沙里が迷惑をかけました。ほら沙里? 行きますよ」

「愛梨さんも来てたんですか」

「はい」


愛梨さんが沙里さんのゴーグルを外すと、沙里さんは涙目になっていた。

そして沙里さんは、勢いよく愛梨さんに抱きついた。


「愛梨〜! 怖かった〜!」

「先輩達を邪魔したからバチが当たったんです。メダルゲームに戻りますよ」

「その前にトイレ‥‥‥」

「沙里!? もしかして‥‥‥」

「ちょっとだけだもん!」

「まったく何歳だと思ってるんですか。早く行きますよ」


愛梨さんは沙里さんの手を引いてトイレへ向かっていった‥‥‥。


「二人も来てたんだね。次は輝久君がやるゲーム選んでいいよ!」

「ちょっとUFOキャッチャー見たいな!」

「よし! 行こう!」


僕がゲーム機から出てすぐ、若いカップルがVRゲームに食いついた。


「ヨシ君! 私あれやってみたい!」

「おう! やってみようぜ!」


二人が機械の中に入ると、彼女の声が聞こえてきた。


「なんか私の席湿ってるんだけど!」

「どれどれ? うわ! 本当だ!」

「ここにジュースこぼすとかありえないわ」


僕と一樹君は、カップルが入ったゲーム機を見つめて、口を開く。


「一樹君、やっぱりこの世には、知らない方が幸せってこともあるんだね」

「そうだね、行こうか」


UFOキャッチャーコーナーへやってくると、鈴さんが一人で黒いウサギのぬいぐるみを取ろうとしていた。


「輝久君、あれ鈴さんじゃない?」

「指差しちゃダメ!」

「でも、もうこっちに気づいたみたいだよ」


本当だ‥‥‥完全にこっち見てる‥‥‥。

このまま無視したら学校で気まずいし、話しかけてみようかな‥‥‥。


「き、奇遇だね! こんなとこで会うなんて」

「なんでそんな気まずそうなの」


いや、昨日あんなことがあって気まずくないわけないよね。


「それに君もM組だったよね。名前なんだっけ」

「俺は一樹!」

「あー、そうだそうだ。影薄いから忘れてた」

「輝久君‥‥‥ちょっとトイレで泣いてくる」

「一樹君!?」


この状態で鈴さんと二人っきりにするなんて、一樹君は分かってない。本当に分かってない。


「で? なに?」

「え! いや、同じクラスだし、話しかけてみようかなーって‥‥‥」

「私、この子を取るのに集中したいから話しかけないで」


鈴さんが財布を広げて中を見ると、もうお金がなくなっていた。


「私帰る」

「ちょっと待って!」

「なに?」

「これ、あと一回で取れそうだよ! ちょっと見ててください」


今にもゲットできそうな景品を目の前に、僕はウズウズしてしまい、自腹でウサギのぬいぐるみを取ることにした。


「輝久君って、UFOキャッチャー得意なの?」

「まぁまぁ! 見ててください!」


ウサギのぬいぐるみは、見事に百円でゲットできた。


「はい! プレゼントです!」

「え‥‥‥私に?」

「はい! 欲しがってたじゃないですか!」

「ありがとう‥‥‥でも、昨日あんなことしたのに、なんで?」

「ここで諦めるのは勿体無いからですよ! 報われない頑張りもありますけど、やっぱり頑張りは報われないとダメだと思うんです! 一人でできないことも、友達が一緒なら目標達成できたりするものです!」

「私と輝久君、別に友達じゃないじゃん」

「昨日、友達になった記念に乾杯したじゃないですか! だからもう友達です!」


鈴さんは少し頬を赤らめて俯いた。


「あ、ありがとう‥‥‥」

「だから、芽衣さんとも仲良くしてくださいよ」

「それは無理。人は変われないんだよ」

「なんでですか?」

「私の人生がそれを証明してる」

「それなら、僕は人が変わっていくのを何回も見てきました。鈴さんは変わりたいですか? それともこのままでいいと思ってますか? 誰にも言ったりしないので、鈴さんの素直な気持ちで答えてください」


鈴さんは、ウサギのぬいぐるみをグッと抱きしめて、か弱い声で答えた。


「‥‥‥変わりたいよ‥‥‥」

「なら大丈夫です! 変わりたいと思い始めた時から、心は変わる準備ができてます! あとは鈴さんの勇気だけです!」

「でも無理だよ。今更誰も仲良くしてくれない」

「僕がいるじゃないですか。ちなみに、なんで変わりたいって思ってるんですか?」

「私だって罪悪感とかあるの。でも、自分の立場が危うくなったりすると、歯止めが効かなくなって‥‥‥」

「なるほど。それじゃ自分が変わるための一歩を、月曜日に踏み出しましょう!」

「なにするの?」

「芽衣さんに謝りましょう。何を言い返されても我慢するんです。鈴さんは信用を無くした状態なので、芽衣さんはきっと、鈴さんがイライラすることも言ってくると思います。でも我慢です! 我慢して、素直に真剣に向き合うんです!」

「できるかな‥‥‥」

「できます! もし不安なら、結菜さんにも相談してみましょうか?」

「結菜ちゃんは嫌だ」

「大丈夫ですよ。結菜さんはあんなんですけど、本当はすごく優しくて、真剣に向き合えば理解してくれます」

「んー‥‥‥それじゃ‥‥‥結菜ちゃんの番号教えてほしい。休み中に電話で話してみる」

「いいですよ!」

「あと、できれば輝久君の連絡先も」

「え、僕のは‥‥‥」


いや、ここで断ったら鈴さんが変わるチャンスを取り逃がすことになるかもしれない。


「分かりました! 教えます!」


結菜さんの連絡先と僕の連絡先を教えると、鈴さんはちょっと嬉しそうに笑みを浮かべた。


「ぬいぐるみ、本当にありがとうね! 私頑張ってみる!」

「はい!」

「それと、芽衣の前に輝久君」

「なんですか?」

「あんな酷いことしてごめんなさい!」


鈴さんは深々と頭を下げてくれ、僕は心から、鈴さんをもう一度信じることにした。


「許します! だって友達ですから!」

「ありがとう‥‥‥それじゃ私は帰るね」

「はい、さよなら!」

「バイバイ!」


なんかいい方向に進みそうだな。

にしても一樹君、まだ泣いてるのかな。


僕が一樹君を呼びに行こうとすると、一樹君は愛梨さんと沙里さんと一緒にメダルゲームをしていた。


「一樹君! なにしてるの!?」

「あ! もう終わった? なんか二人で真剣に話してたから戻りづらくてさ」

「お気遣いどうも。沙里さんはトイレ大丈夫でした?」


なんか今、無神経なこと聞いてしまった気がする。


「大丈夫大丈夫。パンツ脱いだから清潔、ほら」

「こんなとこでパンツ出さないでください! てか、スカートなのにノーパンはヤバくないですか!?」

「それじゃ履きたくなるようにする」

「はい? んー!?!?!?!?」


沙里さんは、パンツを僕の口に咥えさせて興奮し始めた。


「輝久が私のパンツを♡ 久しぶりだから‥‥‥すごい♡」

「いきなりなにするんですか!」

「あー、取っちゃった」


沙里さんは僕の手からパンツを取り、平然とそれを履いた。


「満足♡」

「それは良かったですね‥‥‥」


すると、愛梨さんはメダルゲームの画面を見ながら言った。


「輝久先輩、忘れてませんよね? 先輩が咥えたパンツは、沙里のお漏らしパンツです」


僕が一気に青ざめると、一樹くんが急に立ち上がった。


「輝久君ずるい!!」

「一樹君、やっぱり友達やめよ」


そんなこんなでその日は愛梨さんのメダルで遊び尽くして帰宅した。



***



日曜日の朝、鈴は結菜に電話をかけた。


「はい、結菜です」

「鈴だけど」

「なぜ私の番号を? それに、携帯使えたんですね」

「昨日輝久君に聞いた、携帯は流石に新品の買ったよ」

「昨日‥‥‥それで、要件はなんですか?」

「私、変わりたい。芽衣にもちゃんと謝りたい‥‥‥でも不安で、結菜ちゃんに話聞いてもらいたくて」

「また何か企んでるんですか?」

「違う‥‥‥今回は真剣に謝りたいの」

「信用できませんね」

「今はそれでもいいから、相談聞いてほしいの」

「分かりました」

「ありがとう、えっと‥‥‥どう謝ったらいいかな」

「普通に謝ればいいじゃないですか」

「それだけでいいのかな」

「そうですね。昔一緒に行けなかった遊園地のペアチケットを買って、一枚プレゼントしたらどうですか?」

「そんなお金ないよ」

「私が買います」

「え?」

「携帯を壊してしまったお詫びです」

「壊したのは、あの小さい子だよ?」

「私も共犯みたいなものですから。チケットは月曜日の朝に渡すので、いつもより早く登校して来てください」

「分かった、ありがとう。レインボーミュトンっていう遊園地なんだけど大丈夫?」

「分かりました、任せてください。最後にお聞きしていいですか?」

「なに?」

「輝久君とは、どこで会ったんですか?」

「ゲームセンターだよ」

「一緒に行ったんですか?」

「たまたま会っただけ。輝久君は一樹君と来てたみたい」

「鈴さんは私の連絡先を聞いただけですか?」

「ぬいぐるみを取ってもらって、少し話しただけ」

「 教えてくれてありがとうございます」

「う、うん(なんだろ、結菜ちゃん、なんか怒ってる?)」

「それでは、また月曜日にお会いしましょう」

「うん、バイバイ」


***

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