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唾液チョコレートと指責め

あっという間に年が明け、午前六時に近くの神社にM組の皆んなで集まる約束をしていて、眠いのと寒いのを我慢して神社へ向かった。





「結菜さん、凄い綺麗です!」

「ありがとうございます」


結菜さんは綺麗な着物を着てやって来て、すぐに僕が褒めると、美波さんが拗ねたように言った。


「私も着物着てくればよかったー」

「胸が小さいと着物が似合うって言いますもんね」

「うるさーい!」

「まぁまぁ! とりあえずお賽銭しちゃいましょう!」

「しようしよう!」


僕達は、初詣に来た人の長い列に並び、やっとお賽銭を入れることができた時には、柚木さんが目を覚ますように、何度も何度もお願いした。

きっと、他の全員もお願いしたことは同じだろう。そうであって欲しい。





初詣を済ませて、皆んなで柚木さんのお見舞いに行くことにやってくると、柚木さんのお婆さんが泣いていた。


「あら、皆んな来てくれたのね」


美波さんは心配そうに聞いた。


「なんで泣いてるんですか?」

「もしかしたら、もう目を覚まさないかもしれないって言われたの。十八歳になっても目を覚まさなかったら、臓器提供とかも視野に入れて、今のうちから考えておくようにと話をしたのよ」


それを聞いた結菜さんは、お婆さんの手を優しく握った。


「大丈夫です。柚木さんは必ず助かります! 未来に楽しみを見出し、希望を持ち、なにより負けず嫌いな柚木さんが、このまま眠り続けるなんてありえません」

「ありがとうね。柚木ちゃんは、本当にいい友達を持ったのね」


僕は動揺を隠しながら、いつものように柚木さんに声をかけて病院を出た。

内心は皆んな不安だろう。

臓器提供は柚木さんの死を意味するからだ。

そんなことは絶対にあっちゃいけない。





短い冬休みも終わり、学校が始まった。


「今日から新しい生徒が増えます! 入ってきてー」


先生の言葉を聞いて、また問題が起きる匂いしかしない。


教室に入ってきたのは、白髪で肌も白く、目は青くて、身長が低い可愛らしい女の子だった。

そして、凄く眠そうだ。


「私は沙里さり。よろしく〜」


喋り方もすごい眠そうだな。


「それじゃ沙里さんの席は、一樹君の隣ね!」

「一樹って誰」

「俺です」

「あー、よろしくー」


沙里さんが気怠げに僕の横を通るとき、小さな声で言った。


「久しぶり」


え?今、僕に言ったのかな。

久しぶりって言われてもな、沙里‥‥‥白髪‥‥‥。思い出した!小学生の頃、暴行事件を起こして強制的に転校させられた子だ!

あの時も白髪だったかな。でもこの顔はそうだ。

沙里さんとは一度だけ話したことがある。小学生の頃のバレンタインにチョコをくれたんだ。





その日の放課後、結菜さんが僕と手を繋いで立ち上がった。


「今から柚木さんのお見舞いに行きましょう」

「うん! 行こうか!」

「待って」


沙里さんが小さい手で僕の左手を掴んだ。


「沙里さん? 輝久君から手を離しなさい」


結菜さんが沙里さんの手を掴もうとした瞬間、沙里さんはカッターで、結菜さんの手を傷つけ、僕達に衝撃が走った。


「私に触らないで」


それを見た芽衣さんが、怒りながらカッターを持つ沙里の腕を力強く掴んだ。


「なにやってんの! それ以上結菜になにかしたら、お前を殺す!」

「殺す? こんな感じ?」


沙里さんは芽衣さんの手を振り解き、左手にもカッターを持つと、芽衣さんの首めがけてカッターを振った。

芽衣さんはギリギリで避けることができ、怪我はしなかったが、今のは本当に殺す気だった。


「私は輝久に話があるの。邪魔しないで、ねぇ輝久、チョコ美味しかった?」

「え、もう覚えてないよ‥‥‥」


結菜さんは切れた手をハンカチで押さえながら言った。


「輝久君、お知り合いですか?」

「小学生の時に一度だけ話したことがあります。それより、手大丈夫ですか?」

「これくらい大丈夫です」

「ねぇ、あの時のチョコね、手作りだったんだけど、私の唾液、いーっぱい入れたの」


な、何言ってるんだ‥‥‥この子‥‥‥。

小学生のやることじゃないでしょ!


僕が動揺していると、沙里さんは僕の首にカッターを当てた。


「私達を邪魔した瞬間、輝久の首を切るから。輝久、しゃがんで」


僕は怖がりながらも、ゆっくりその場でしゃがんだ。


「そのまま上を向いて口を開けて」


口を開けると、沙里さんは僕の口に唾液を垂らしてきた。


「飲み込んで」


言われた通り飲み込むと、沙里さんは優しく僕の頭を撫でてきた。

なにがなんだか分からない‥‥‥。


「輝久可愛い。じゃ、私は帰る〜」


首からカッターが離された瞬間、安心で体の力が抜けた。

そんなことより結菜さんに謝らなきゃ!


「結菜さん、ごめ‥‥‥」


結菜さんは大きく目を見開いて、僕の口一点を見つめていた、


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」


ど、どっちを⁉︎


「ゆ、結菜さん?」

「輝久君、唾液は美味しかったかしら」

「いや! そんなの分からなかったよ!」

「吐いてください」

「え?」


結菜さんは僕の頬を片手で力強く掴み、僕の顔はタコみたいになってしまった。


「沙里さんの唾液、今すぐ吐きなさい。 早く!! ほら! 早く吐いてください! 早くしないと、輝久君がどんどん汚れていきます! 早く!!」

「む、無茶だよ」


すると、結菜さんが顔を動かせない僕の口に無理矢理指を突っ込んできた。


「早く!!」

「んー!! んっ、んー‥‥‥」


やばい‥‥‥吐く‥‥‥。


奥まで指を突っ込まれ、結菜さんの目の前で吐いてしまった。

最悪だ‥‥‥。


「よくできました♡」

「ありがとうございます‥‥‥」


こうして、新たな事件の幕が上がってしまった。


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